ヨーロッパの3インチモデル──(1)ノレブほか

HO to 3-inch toy cars from Europe──(1)Norev and others






もうずいぶん長い間「ミニカー」に接して来ていますが、やはり「ミニカー」は、かなり「様変わり」したと思います。その特徴を3つあげるとすると、

 @小スケールモデルの隆盛
 Aスケールの多様化
 B1/43サイズの「模型」化

ということになるのではないかと思います。そしてこの3つは決してバラバラの現象ではなくて、相互に関連していると思っています。


かつて、ダイキャスト「ミニカー」は、1/43サイズ(1/40〜1/50ぐらい)が普通で、したがって1/43のことを「標準スケール」と呼んだりする慣例が生まれました。Oゲージ鉄道模型のアクセサリーに由来しているとか、そういうことはさて置くとしても、要はこの程度の大きさがないと、かつてはそのクルマらしさを表現するたげの加工技術が無かったからだ、と私は考えています。1960年代には既に小スケールの大御所である「マッチボックス」がありましたが、当時は「正当なモデルカーと言うよりは、玩具に近いもの」だと言われていました。

しかし、70年代になると、ホットホィールがアメリカで、トミカが日本でヒットし、「1/43」クラスと小スケール(1/64サイズと呼ばれるもの)との関係は完全に逆転しました。世のお母さんたちにとって、「ミニカー」と言えば小スケールを意味するようになったのです。小スケール・モデルは安価に、大量に、量販店をはじめとしてどこにでも流通するようになりましたから、「1/43」サイズの玩具としての競争力が全く急速に失われていったのです。
ホットホィールが導入した「スピードホイル」という考え方を、「それが装備されていなければ売れない」とばかりに、マッチボックス・スーパーファストのみならず、ディンキーやコーギーをはじめとする各社が1/43サイズのモデルにまで導入したからたまりません。今度は1/43サイズのモデルが中途半端に「玩具」化し、コレクターからも嫌われるようになったのです。

現在の1/43モデルの「模型化」の発端はここにあります。スピードホイルのマーケットだけに媚びた量産メーカーの姿勢に業を煮やしたコレクターは、「ホワイトメタル」「レジン」などの精密モデルに興味を示すようになり、この方向を持ちつつ、中国生産による画期的なコストダウンを実現したのが「ミニチャンプス」だった、というわけなのです。1/43ミニカーは、プラスチック製のバックミラーやワイパーを付けてプラケースにネジどめされるようになり、「精密モデル化」と「ダイキャストの重量感」をいっそう強調させるために、「1/18」といった大スケール・モデルが登場して現在に至っています。





現在、仏・ノレブのサイトを見ると、「ノレブ・コレクション」の中に「1/12」「1/18」「1/24」「1/43」「HO」の各スケール、その他に「ミニ・ジェット」と呼ばれる小スケールのシリーズ、「ジェット・カー」と言う、1/43廉価版のシリーズ、「CIJ」復刻シリーズ、「スポットオン」復刻シリーズがあります。(「HO」スケールが、廉価版レンジではなく、「スケールモデル」のカテゴリーに入っていることに注目。)

子供向け玩具の市場から、コレクター向けまでを全方位でカバーしようとする体制であり、これは全く大変なことです。かつて「子供向けのオモチャを、たまたま集めている大人がいる」ということで成立していた業界が、2つ、3つのマーケットに分化してしまったと言っていいでしょう。したがっって資金力・企画力、国外の協力工場に対するコーディネート力を要し、大きな資本力の下でのグループ化の体制がほぼ固まりました。





私が気がかりに思っているのは、色々なスケールや、色々なジャンルの間の「互換性」がなくなって来ているのではないか、という点です。
かつて、1/43主体のメーカーが小スケールのシリーズを持っていたのは、「子供の時には安価な小スケールのミニカーで遊んでもらい、それを卒業したらより本格的な1/43モデルを集めてもらう」といった思惑がはたらいていたためなのです。小スケールの対象層を、より低い年齢に設定していた形跡もあります。

しかし今日のマーケットでは、「小スケールを卒業したら1/43に」「いつかは究極の1/18に」といった、メーカーにとっての「成長モデル」は描きにくい環境になっていると、私は思います。
それぞれのスケールを好む人たちが求めているものが、相互に違ってしまっていると考えられるためです。
小スケールのコレクターは、コレクションを「集合」と考える傾向が強く、ひとつひとつの個体の価値よりも、例えば「15種類のバリエーションやシリーズ全部を集める」ことにモチベーションを持つのに対して、1/43・1/18・1/12とスケールが大きくなっていくにつれて、モデル単体の完成度に対する要求が大きく、厳しくなっていくと思われるからです。

もうひとつの懸念、それは「模型化」の方向を選択した1/43サイズのモデルが極度に壊れやすく、もはや「手にとって愛でる」ことすらできなくなっているという点です。プラケースに固定されていることが前提になっており、素材/塗装/パーツの接着強度など、10年後にどこまで現状を保っているか、についての不安もあります。





「小スケール」と言えば、マッチボックス/ホットホィール/マジョレット/トミカ が代名詞ですが、最近海外から送られて来る交換荷物の中には、「ノレブ」など、著名ブランドによるものも目立つようになりました。
これらの小スケールモデルには、「3インチ・サイズ・ミニカー」(約75mm)という名前もつきました。「1/64サイズ」と言われて来たシリーズの中で、正確に1/64統一スケールを採用しているのはごく限られたブランドだけですから、このネーミングは非常に適切だと言えるでしょう。

そこに感じられるのは、「手にとって、遊んでも壊れないミニカー」「たとえ小粒で安価でも、大人やクルマ好きがコレクションしても楽しめるエスプリを持ったミニカー」ということです。
これらは、「ミニカーの原点」として、とても大切なことだと考えています。どんなに「精密」でも、「エンスージアストがニヤリと笑う」エスプリを失ってしまっては、それはもはや「ミニカー」ではありません。
それに、世界経済の不安が語られる時期に、1台5000円も7000円もするモデルカーが、そうそう売れるものでもないのではないでしょうか。

ヨーロッパのメーカーがこだわりを見せる、ちょっとした「エスプリ」のある「3インチ・モデル」に、ミニカーの今後の可能性を感じる、と言ったら少々大袈裟でしょうか。(2011/10/16)





 ノレブ・3インチ・サイズ・緊急車セット(ベルギー向け) ほか


ベルギーの小売大手の「コルルイ」社(Colruyt Group)が展開する、「ドリームランド」というトイ・ショップ・チェーンで売られた緊急車3点セットの新バージョン。

前回のセットは、オーストリアのベルント・アーノルトが入手して送ってくれたものでしたが、当サイトにアップしていたところが、オランダの消防士がこれを発見し、「こんなのがあるんだ…」ということでベルギーまで買いに行ったそうです。それで「違う組み合わせのセットも出ている」ということで、私の分も入手を依頼し、交換で送られて来たものです。


前回は、ポルシェ997・カレラS(ベルギー警察)/プジョー308(ベルギー警察)/ルノー・メガーヌ 2009(ベルギー消防)の3台セットでしたが、今回は、警察ヘリ/プジョー308/ルノー・マスター2003救急車の3点となっています。
このセットも、金型は3点ともノレブ製品です。

プジョー308(ベルギー警察)をルノー・メガーヌ 2009(ベルギー消防)に差し替えたものもあったようですが、「今回は売っていなかった」ということでした。セットの内容は重複していますから、今回入手したものがあれば十分です。
(2015/4/19)






ユーロコプターEC145(ベルギー警察)

3インチ・サイズの小さなヘリコプターで、本体には何もモールドがありませんが、これもノレブ製です。
ノレブ純正で、ジャンダルムリー(フランス国家憲兵)、フランス救急(SAMU)、消防(POMPIER SECURITE CIVILE )、自転車競技中継ヘリ(HELICOPTERE TELEVISION TOUR CYCLISTE)などが出ています。「SAMU」仕様は5点パックに入っていたものを以前に掲載しています。
ベルギー警察仕様であるところが、「ドリームランド」オリジナルということになります。

ポリスカーと同じく、機体右側に「Police」(フランス語)、左側に「Politie」(オランダ語)を書いています。

ノレブ/マジョレット/Siku/マッチボックス/ホットホィール/トミカなど、このサイズのヘリだけを集めても相当の数になることでしょう。どなたか挑戦してみませんか?



プジョー308(ベルギー警察)

前回入手したセットに入っていたものと同じ車種、カラーとプリント、ホイルも同じもののようです。




ルノー・マスター2003(ベルギー救急)

白のフランス救急仕様のものを以前に掲載していますが、これは黄色のベルギー仕様になっています。

ベルギーは、緊急車のコール番号として、警察・消防・救急共通のEU統一番号「112」が使えますが、警察「101」、消防・救急「100」の番号も持っています。
ボディ側面の「100」は、間違いなくベルギー仕様を示しているわけです。


リアゲートは開閉しますが、残念ながらストレッチャーなどの救急車装備は何も入っていません。




 イタリア 「グロボ」(Globo)社の3インチ緊急車


イタリアの「グロボ」社(Globo/GLOBO S.p.A.)による、「HEAVY METAL」ブランドの3インチ・サイズ・モデル3点が新着しました。

前回は、これもオーストリアのベルント・アーノルトがイタリアに越境ドライブした際に入手して来てくれたものですが、今回はドイツの交換相手が送って来てくれたものです。マジョレットのニューモデルの「警視庁」仕様のポリス5点に対する交換品の一部でした。

彼は「警視庁マジョレット」とのトレード品を揃えるべく、色々な写真を送ってきてくれるのですが、マッチボックスやホットホィールだと、「ごめん。それは既に持っている…」ということになりがちです。その点、こういうドイツやイタリアで売られている、「ちょっと怪しげ」なモデルの方が、かえって珍しいのです。

価格は高いものではないはずで、そもそもマジョレットの「警視庁」仕様も、店頭ではチューインガムつきのキャンディ・トイですから、交換相手としてはむしろふさわしいとも言えます。


BMW・カラビニエリ(イタリア国家憲兵)

このメーカーの製品は、裏板は「MADE IN CHINA」のモールドのみで、車名の表記は全くありません。
このモデルに限っては「No.89410」の品番らしきもの表記があります。
グリルを見ると、どうやら「BMWらしい」ということが推測できます。

金型の「抜け勾配」の関係でボディの裾が妙に広がっており、小さな窓などプロポーションもおかしいので、少なくとも他社製品のコピーではなく、オリジナル金型であろうことが知れます。
コピー商品ではないと思えるのは、現在ではマイスト/ウィリーなどでも、こうした怪しいプロポーションのモデルは、もはや作っていないからです。

技術レベルは、グロボ社ではなく、中国の協力工場のものですから、生産コストをかなり押さえて発注している、ということでしょうか。欧州では、3インチ・サイズの分野で、SIKU/マジョレット/ノレブ/マッチボックス/ホットホィール/ウィリー/マイストなどの多くの競争相手がいるので、コストを押さえることが、これらの他のブランドとの競争では重要な武器になるはずだからです。



SUV(イタリア国家警察)

前回オーストリアから入手したものは、カラビニエリ(イタリア国家憲兵)とメディック(イタリア赤十字)のみだったので、ブルーのポリツィア(イタリア国家警察)仕様ははじめての入手です。

裏板は「MADE IN CHINA」のみで、車名も品番も何もありません。アメリカ車のSUVのような感じです。
実車名を特定すると、実車メーカーの製品化許諾が必要だったり、商標使用料が発生したりするので、実車のスケールモデルを名乗らない、という戦略なのでしょう。

その割には、箱にある「scale 1:64」の誇らしげな表示がミスマッチです。



2ドア・パシュート(イタリア国家警察)

裏板には「MADE IN CHINA」と「NO:89615」の表示があります。
Globo製品で入手した中でも最もデキの悪いと思われるモデルで、何か内部に仕掛けがあるのではないかと思うぐらい、腰高になっています。

こうなると、何の実車からインスパイアされているか、ということを問うこと自体が無駄と思えます。
イタリア国家警察はランボルギーニ・ガヤルドの実車を就役させていますけれど、カタチを似せるとライセンス問題が発生するので、こんな処理になったものでしょうか。
パッケージは立派ですが、日本で言えば100円前後のノーブランド・ミニカーのレベルになっています。


マーキュリー/メーベ/ポリトイズなどを擁したイタリア代表の3インチ・シリーズとしては寂しいですが、
ポリスティルなどが小スケール・モデルを作った時期があるとは言え、イタリアでは小スケールの専門ブランドがなかったことも現在の状況に関係しているかもしれません。
ただしイタリアン・カラーの緊急車のシリーズとしては、子供たち向けの需要はあるものと推測できます。
Sikuがイタリア緊急車カラーの製品を出しましたが、おそらく価格的にはかなり高いものになると思われるためです。

イタリアの緊急車要請電話番号は、国家警察「113」(救急車要請も可)、軍警察(カラビニエリ)「112」(救急車要請も可)、消防「115」、救急「118」で、このモデルの「113」、カラビニエリBMWの「112」は正確な表記です。
とりあえずはイタリアのブランドとしての面目躍如というところでしょうか。






 ノレブ・3インチ・サイズ・緊急車セット(ベルギー向け) ほか


3インチ・サイズモデルでは、ずっとマジョレットの緊急車シリーズの各国版をご紹介して来ましたが、今回はノレブのモデルがオーストリアから送られて来たので、これをご紹介したいと思います。

ノレブ・3インチ・サイズ・モデルの緊急車セットで、ポリス2点、消防指令車1点が3台アソートの箱に入れられています。
ドクターカーこそ含まれずにポリスカー2点になっていますが、パッケージの雰囲気をご覧になって気付かれるように、明らかにマジョレットの緊急車3点セットを意識した商品と言っていいと思います。

一見、警察・消防ともにオランダのものに良く似ていますが、ベルギー警察・消防の新塗装です。




実は、製品の供給元はノレブですが、ベルギーの小売大手の「コルルイ」社(Colruyt Group)が展開する、「ドリームランド」というトイ・ショップ・チェーンで売られたものです。

「ドリームランド」は、ベルギーに40店舗、フランスに2店舗を展開します。コルルイはフランツ・コルルイ( Franz Colruyt)が創業したグループで、スーパーマーケットなどの各業態による流通グループを形成しています。




ショップの展開するエリアから言っても、ベルギー仕様であることには間違いがありません。入手先はオーストリアからです。


こうしてみると、マジョレットのセットが現況ではポルシェ996/BMW/ハイラックスに車種が固定されているのに対して、ノレブは車種にバラエティがあって変化に富んでいるところが特長と言えるでしょう。
ここからは、各モデル別にご紹介したいと思います。




ポルシェ997・カレラS(ベルギー警察)

全長77mmぐらい。裏板にスケールの表示はありませんが、マジョレットのポルシェ996より若干大きい程度です。「3インチ」は76.2ミリですから、「3インチ」というコンセプトを厳格にキープしていると言えるでしょう。

ボディ右側とボンネット上に「Police」(フランス語)、左側とリアに「Politie」(オランダ語・厳密にはフラマン語)を書いています。

かつてベルギーというとフランス語を話す印象が強かったですが、オランダ語の一種であるフラマン語が公用語の北部フランデレン地域と、フランス語が公用語の南部ワロン地域とにほぼ二分されます。

オランダ語系住民とフランス語系住民の対立が続いたため、1993年にフランデレン地域とワロン地域とブリュッセル首都圏の区分を主とする連邦制に移行しました。
緊急車輛が、フィンランドと同じように2つの言語を書くのは、このことを背景としています。



プジョー308(ベルギー警察)

ノレブ純正製品では、白のフランス国家警察仕様が作られている車種です。
これもボディ右側とボンネット上に「Police」(フランス語)、左側とリアに「Politie」(オランダ語)を書いています。



ルノー・メガーヌ 2009(ベルギー消防)

裏板に「ルノー・トイズ」のモールドがあります。
ノレブ純正で、白のフランス国家警察仕様が作られている車種です。

ポリスカーと同様に、ボンネット上にフランス語「POLICE」、ドアサイドにオランダ語「BRANDWEER」を書いています。

デザインはオランダ消防と非常に良く似ていますが、オランダでは「BRANDWEER」に王室シンボルのクラウンが付いているのに対して、ベルギー消防ではこれがありません。



ルノー・メガーヌ 2009(フランス国家警察)

ここからは「コルルイ」のトイ・ストア・チェーン向けセットではなく、ノレブ純正で売られた単品パッケージの製品3点です。

まず、ルノー・メガーヌ 2009 のフランス国家警察仕様。
以前にご紹介している5点セット中のものと同一のようですが、単品パッケージです。



ポルシェ・ケイナン・ターボ (インターナショナル消防)

ポルシェ・ケイナンの赤塗装の消防で、マーキングは何もありません。
インターナショナル汎用としたものでしょうか。

民間型転用のサンルーフを残していますが、ブルーの屋根上灯も付けています。

裏板側の操作で、車高を高/低に切り替えられるようになっています。ミニカーとしては意外に珍しいギミックです。





ルノー・トゥイジー(TWIZY) (フランス国家警察)

全長わずか45mmの小さなEV(電気自動車)のモデル。
「je roule electrique」(私は電気で走ります)というプリントがあります。

ユニークな車種選択、警察が小型EVを使っていること、警察車両の仕様でのミニチュアが作られていることに三重の驚きがありますが、もともとはルノー・ディーラーでの販売を目的としたモデルかもしれません。

実車の全長は2,337mm(全幅が1,190mm/全高が1,460mm)ということなので、モデル全長で割ると1/52というスケールになりました。小さすぎて、1/64にできなかった、ということでしょうか。

ただ、ノレブやマジョレットの3インチ・サイズ・モデルは、いずれも1/64よりは大き目なので、適正スケールかもしれません。1/50であれば、プライザーがフィギュアを出していますが、フランスの警察官は改造しないと、そのまま製品化はされていないでしょう。


マジョレットの最近のモデルが、同じ金型で各国向けのプリント違いをたくさん作り、「インターナショナル化」「無国籍化」しているのに対して、「ヨーロッパ」とか「フランス」のエスプリを残しているのは、やはりノレブの方なのかもしれません。マジョレットの最近の製品でも、緊急車ではない民間型の乗用車やバンには、「ヨーロッパ」「フランス」を強く感じさせる良いモデルが作られているので、要は緊急車化するにあたって、もう少し車種の幅を広げてもらえるといい、ということでしょうか。 (2014/11/2)










 イタリア 「グロボ」(Globo)社の3インチ緊急車




今回は、オーストリアのベルントがイタリア側に越境して買って来てくれたモデルをご紹介したいと思います。

と言っても、Sikuやマジョレットによるイタリアン・マーキングの緊急車、といったものではなく、イタリアのブランドによる、3インチ・サイズ・モデルです。

パッケージにプリントしてある社名は「Globo」(GLOBO S.p.A.)というもので、ヴェネト州・ヴゥローナ県(Provincia di Verona, Regione Veneto)の「ILLASI」というところに所在します。
1982年に、「Carla Ortolani」「Gianni Ortolani」の2人によって創業されました。2005年には香港法人(Globo H.K. LTD)を設立しています。(イタリア語はカタカナに置き換えるための知識が無いのでご容赦ください。)

同社のWebサイトを見ると、幼児向け/男児向け/女児向けの玩具を幅広く扱っており、「ILLASI」の本社にあるショールームは、イタリア最大級であると書いています。

この会社は、ほかにも
「Scuderia」というブランドで、全長3インチ・サイズのトラック(Scuderia truck)、
1/64スケールを表示したトレーラー・トラック類、1/48スケールを表示したボート運搬トレーラー、
1/12スケールを表示したモトクロッサーなどを出しています。




今回ご紹介する3インチ・サイズの緊急車に付されている「HEAVY METAL」というブランドからは、他にも1/48スケールを表示したキャンピング・カー、カートランスポーター(乗用車1台付き)、トレーラー・トラック類などが出ています。
また、「Graffity Bus」と題した、連接バス、「spidko」ブランドによるラジコン・トイなどを出しています。

スケール性の高いものでは、1/32スケールのジャガーSタイプ、VWニュービートル、クライスラーPTクルーザー、を「eBayイタリア」上で発見しました。
http://www.ebay.it/sch/Auto-/112617/i.html

イタリア車が含まれていないということは、他社製品をOEM供給してもらっている匂いがします。

さらに1/18で、スケール性の高いフェラーリ・ディーノ246GT、ブガッティ110のモデルも出しています。
ブランドは「Anson Metal series」と読めますが、時期的に少し前の商品かもしれません。





同社のWebサイトでは、「Tonka」ブランドの商品(プラスチック製玩具)を紹介しています。
http://www.globo.it/

「Tonka」ブランドは、現在でも米国ハズブローが持っているはずですが、ハズブローのライセンスのもとで、「マイスト」(Maisto)も「Tonka」ブランドの多くの商品を販売したいるようです。

「マイスト」社の本社の所在地は、カリフォルニア州・フォンタナですが、系列は香港の「May Cheong Group 」(MC Toy )の傘下にあり、このグループはイタリアの「Bburago」のブランドを持っている、という関係にあります。
イタリア「Globo」社が、「May Cheong Group 」に直接に帰属している様子はありませんが、「Tonka」製品を商品ラインに加えていることで、「May Cheong Group 」-「Maisto」との何らかの関係があることが予想できます。




ということで、「Globo」社についての体系的な記述は見つけることができないのですが、ダイキャスト製の車両の玩具に、かなりの熱意を示して来た会社であることは認められます。

ただ、スケールモデル性やコレクション・トイの要素よりも、玩具性をより強く持った商品ラインだと言えそうです。クルマ系の商品に対する考え方は、ズィンバ・ディッキー・グループとなる前のマジョレットに似ているような気がします。

「マーキュリー」にはじまり、往年の名ブランドをたくさん擁していたイタリアの現在のダイキャスト事情は、ちょっと寂しいと言えるでしょうか。



4WD (イタリア赤十字) 

イタリア赤十字(Coce Rossa Italiana)のマーキングを付けた4WD。

屋根上のプリントにある「CENTRO MOBILE DI SOCCORSO」は、「MOBILE RESCUE CENTRE」の意味。
赤十字の周りに「CONVENZIONE DI GINEVA 22 AGOSTO 1864」(Convention Gineva August 22, 1864)の
文字がありますが、イタリア赤十字の正規のエンブレムの中に配されているもので、イタリア赤十字社としての設立起源を示しているものでしょう(1864年)。
1863年から1864年にかけて、フィレンツェ、ミラノなどで委員会が設立され、その後に連合したようです。

「CONVENZIONE DI GINEVA 22 AGOSTO」(8月22日・ジェノバ)の文字を見て、最初はコンベンション用の特注・配布ミニカーかと思いましたが、しかし「1864年」はあり得ません。




このモデル、マッチボックスのシェビイ・ブレイザー(MB50-E)と非常に良く似たたたずまいを持っており、特に車体後部のアンテナの処理などは「ウリふたつ」です。

これは別に意地悪で言っているのではなくて、このブランド、またはその生産を担当している協力工場などが、どのぐらいの商品の企画力や設計能力を持っているか、ということの良い目安になるので、他社製品との比較は重要な情報になり得るのです。

ただしマッチボックスと雰囲気は良く似ていますが、金型は全く形状が違い、決してコピー・モデルではありません。
でも、もしイタリアのブランドの独自企画・独自設計であれば、どうして車種選択にあたってイタリア車をもっと積極的に選ばないのか、という気持ちは持ちます…。



メディック (イタリア赤十字) 

同じくイタリア赤十字のメディック。
こちらはマッチボックスのジープ・グランド・チェロキーにたたずまいが似ています。




実は、これら4点の全てについて、裏板はプラスチック、「CHINA」の刻印がわずかにあるだけで、車名や品番、ブランド名などの表示は一切ありません。

これでは、購入状態でパッケージに入っていれば良いですが、いったん子供が遊んでパッケージが捨てられた瞬間に、イタリアン・ブランドであることは全くわからなくなってしまい、誰もが中国ブランドの製品だと思うでしょう。

「GLOBO」オリジナル金型であれば、裏板にせめて「GLOBO」のブランドのモールドを期待したいところで、それが無いということは、他社金型のOEM供給を受けているのではないか、という疑念が沸くとともに、出所として「マイスト」あたりがあやしい、と考えているわけです。



キャンパー (カラビニエリ・イタリア国家憲兵) 

民間型のキャンパーに、「カラビニエリ」の塗装をしたもの。
別にカラビニエリがこういう車両で野営をするというわけではなくて、バン・タイプの適当な金型がなかったための処置でしょう。人員輸送車、資器材搬送車、護送車のように見えなくもありません。
他社金型を流用して、カラー・バリエーションを作っているのではないか、という疑念がますますふくらんでしまいます。

「HEAVY METAL」というブランド名に対して、裏板はプラスチックですから、どうもあまり重量感はありません。そもそも「HEAVY METAL」というネーミングを、イタリアの人はどう思うのでしょうね。
この名で検索をしても、出て来るのはロック音楽の「ヘビメタ」の記事ばかりでした。

わざわざ「HEAVY METAL」という英語を使うということは、輸出を意識した商品なのでしょうか?



バス (カラビニエリ・イタリア国家憲兵) 

観光バスの金型に「カラビニエリ」の塗装をしたもの。
インテリアにはシートも何も入っていない「がらんどう」ですが、ボデイ側面にはイタリア国旗を描いていて、海外コレクター向けのサービスではないかと勘繰りたくなります。

日本でも、サミット警備などで管区機動隊の動員がかかると、各都道府県警の部隊はチャーターした観光バスで移動したりしますので、居住性の高いバスを装備するのは、理にかなってはいます…。


ということで、クォリティについては色々と愚痴を言いたくなるモデルたちですが、「イタリアのお土産」という空気感に溢れていて、その点が何と言っても秀逸!


イタリアに行っても、仕事であれ、観光であれ、どうせオモチャ屋さんに行く時間などないし、仮に専門店に行ってもノレブやヘルパがあるのが関の山で、こういうモデルは、空港の売店ででも偶然見つけない限りは、なかなか手に入らないものなのです。もうこれ以外には入手できないシリーズかもしれません。

ベルントからは、イタリア・ヴェローナで撮影された緊急車の実車の画像も送られて来ていますので、こちらもどうぞ。
イタリア・ヴェローナの緊急車両
(2012/11/3)







 ノレブ・エマージェンシー

緊急車/レースカー/はたらくクルマ/など、テーマごとに5台の小スケール・ミニカーを専用のギフトボックスに詰めて売る「ファイブ・パック」という手法は、マテル・ホットホィールにはじまり、マテル・マッチボックスに応用展開されて来たのですが、このところマジョレット、さらにSikuにまで同様の企画が広がっていることをお伝えして来ました。

そして今度は、「ノレブ」の「ファイブ・パック」がオーストリアから送られて来ました。
ただしこのギフトセット、オーストリアのベルントは、ニースに休暇旅行をした際にフランス国内で買い求めたようで、ということは、オーストリア国内では流通していないと考えられます。

家の近所の店で売っている商品を、わざわざ旅行先で(荷物になるのに)買う人はいないからです。
なので、「ノレブ」「マジョレット」「Siku」「マッチボックス」「ホットホィール」のファイブ・パックが市場を席巻しているとはいうものの、ドイツ/オーストリア/フランス/東ヨーロッパ各国などで、全てのブランドの商品が一律に入手できているかどうかは、実はわからないのです。 (2012/8/18)





ノレブのファイブ・パックには、いくつかの特徴があります。

まずブランドですが、ノレブのホームページ上ではまだ「ミニジェット」というカテゴリー・ブランドが残っていますが、パッケージ上ではすでに「ミニジェット」という表現は一切使われていません。

この点は、実は3インチ・モデルの単品個装箱でもそうなのですが、単品では「NOREV」「EMERGENCY」を組み合わせた三角ロゴが使われていたのに対して(つまり「ミニジェット」シリーズの中の緊急車カテゴリー)、ファイブ・パックのパッケージではこの三角ロゴは使われていません。「NOREV」ロゴだけを大きく表記し、パッケージ下に「EMERGENCY」の文字を機能的に表記しています。

パッケージを「EMERGENCY」以外のカテゴリーのものと共用するための処理とも思われますが、「ミニジェット」というブランド名は、より大きなサイズのメインの商品に対して「ミニ」であるという、かつてのコーギーとコーギージュニアの関係に似た、古風な印象があるため、「Siku」や「Mahorette」との関係の上では「NOREV」だけを打ち出す方が得策、という競争関係上の配慮とも受けとれます。
(ただし今回入手したファイブ・パックのパッケージでは、消防車モデルの写真を小さく印刷しており、「エマージェンシー」レンジ専用のものとも思えます。)


次にミニカーの内容についてです。
ホットホィールやマッチボックスのファイブ・パックでは、ほぼ例外なく、単品販売されている通常品とはカラーやプリントを変える、つまりファイブ・バック専用のバリエーション・モデルとする、ということがいわば「お約束」なのですが、ノレブの場合、単品販売されているものと同一のモデルが、そのままセットに入っていることがあるようです。

どこまでが通常品と違うか、という点を確かめるには、通常品のバリエーションを全て把握しなければならないので、なかなか特定はむずかしいのですが、少なくとも「ホイルだけでも通常品とは変える」というほど、厳密なバリエーションづくりはされていないように思います。


それでは、セットの内容を具体的に見ていくことにします。セットは、2つあります。



ノレブ・エマージェンシー/ ルノー・クリオV・3ドアHB・2007 (フランス地方警察)

単品箱入りで、東京・足立区の「イワヤ」を代理店とした「日本輸入版」として既にご紹介したモデルと、同じペイントのようです。
裏板に「ルノー・トイズ」のロゴを持ちます。

   


ノレブ・エマージェンシー/ルノー・トラフィックU (フランス国家憲兵)

2000年にフルモデルチェンジした2代目トラフィックで、、ゼネラル・モーターズと合弁で開発され、ボクスホールおよびオペルではヴィヴァーロとして、ルノーの提携先の日産自動車では、プリマスターとして販売されているクルマです。

2006年にはフェイスリフトが行われ、フロントグリルの形状が変更され、ウインカーの位置が変更されましたが、モデルはそれ以前の前期型(2000-2005)のようです。

裏板に「ルノー・トイズ」のロゴを持ちます。
ジャンダルムリーのダークブルーと、撮影すると暗くなってしまって困ります。
   


ノレブ・エマージェンシー/プジョー・ボクサー(フランス消防隊救急車)

プジョー・ボクサーの救急車。
ボクサーの第2世代車で、基本はイタリアのセヴェル南工場で生産されるフィアット「デュカート」で、これをプジョーでは「ボクサー」、シトロエンでは「ジャンパー」と呼称したようです。

現在では、プジョーとシトロエンは経営統合されていて、「PSAプジョー・シトロエン」グループであり、貨客用商用車生産ではフィアットとも合弁しています。新型(現行)車は2006年に発表された第3世代車です。

「vehicule secours et d'assistance aux victimes」は「被害者の救助と支援のための車両」の意味で、事故救助車でしょう。

プジョー/シトロエン車ですから、もちろん裏板に「ルノー・トイズ」のロゴはありません。
大きさとか質感が、Sikuのメルセデス・シュプリンターのモデルに大変良く似ています。

   


ノレブ・エマージェンシー/ルノー・カングーU・2007 (救急車)

単品モデルとしては、ダークブルーのフランス国家憲兵仕様としてご紹介していた、ルノー・カングーU・2007の、白い救急車仕様。
「スター・オブ・ライフ」シンボルを赤で表示しています。

裏板には「ルノー・トイズ」のロゴがありません。

   


ノレブ・エマージェンシー/ルノー・メガーヌ・トロフィー 2005(フランス国家憲兵) 

第2世代メガーヌの3ドア・スポール」の足まわりを 強化した「メガーヌ トロフィー」。
エアロパーツを付けた状態でジャンダルムリー仕様にしています。ノレブは、1/43でもこのモデルを作っています。

テールにウイングを備えたこの状態のクルマをジャンダルムリーが使っているかどうか、画像・動画を探したのですが、とりあえずそのそものズバリのものはありませんでした。ただ、少なくともスポールRSは使っているようです。

   


このセットには、道路標識/信号機/ガソリン給油機などのミニチュアが付きます。
他社の「ファイブ・パック」には見られなかった配慮で、セットを楽しいものにしていると言えるでしょう。こうしたものを単品ミニカーに同梱するのは、包装材を変えるなどする必要があって大変なので、「ファィブ・パック」ならではの「ボーナス特典」ということにもなります。





続いて2つ目のセットです。




ノレブ・エマージェンシー/ シトロエン C4 (フランス国家憲兵)

2004〜2008年生産の、初代サルーン・初期型をジャンダルムリー塗装としたもので、単品販売されているものと同一のカラー/プリントのようです。

ただし、単品のものはホイルがメッキだったのに対し、セット中のものは銀塗装されています。
敢えて変えているというよりは、生産時期の違いによる変更に過ぎないのではないでしょうか。

シトロエン車ですから、裏板は「NOREV」ロゴのみで、「ルノートイズ」ロゴはありません。

   


ノレブ・エマージェンシー/ユーロコプターEC-145 (フランス救急)

ドクター/患者搬送用ヘリ。

機種名などのモールドは何もありませんが、ユーロコプターのEC-145系列でしょうか。
Sikuが1/87スケールで作っているのと同じ機種です。

Sikuは、ブリスータ・パック用のミニ・ヘリコプターとしては「EC-135」「BO-105」といった前世代の機体しか作っていないので、それに比べると大変にスマートです。

機体側面に書かれている「SAMU」は、'Service d'Aide Medicale Urgente' (セルヴィス・デード・メディカル・ユルジャン)は、「Emergency Medical Service」(EMS)の意味です。
   


ノレブ・エマージェンシー/ルノー・トラフィックU (フランス国家憲兵)

ルノー・トラフィックUのジャンダルムリー仕様で、先ほどの「セット1」に入っていたものと同じモデルです。ホイルも同じです。

実はこういうところが問題で、セットを欲しいと言っている子供に、「じゃあ、日曜日ごとにひとつずつだよ」と言って買ってあげるとしますよね。そうすると、全く同じミニカーが2つダブッてしまうわけです。きっと子供はすぐに気付いて、何となくがっかりすることでしょう。

   


ノレブ・エマージェンシー/ルノー・メガーヌ2009(フランス国家警察)

ルノー・メガーヌ2009、フランス国家警察の新塗装。
2009年3月のジュネーヴモーターショーで発表された「スポーツツアラー」(ステーションワゴン)です。

裏板には「ルノー・トイズ」のモールドがあります。
   


ノレブ・エマージェンシー/ダチア・ダスター・2010

ダチア(Dacia) は、ルノーが1998年に傘下に収めたルーマニアの自動車製造会社。
同じダチアの「ロガン」を、「ルノー・トイズ」の単品モデルとして既にご紹介していますが、これは「ダスター」の消防仕様。

「ダスター」は、ダチア・ブランドの6番目の車種として2009年に投入されたクロスオーバーSUVで、プラットフォームは「日産・B」をベースとしています。

ルノーのルーマニア工場で生産され、2010年春にルーマニアなど欧州主要国で販売開始。ウクライナ/中東/アフリカ等では「ルノー」ブランド車として売られています。

「ロガン」のモデルはルーマニア警察仕様でしたが、このダスターはエマージェンシー・コール「#18」を付けているので、フランス消防でしょうか。

裏板には「ルノー・トイズ」のモールドがあります。
   


その後、単品で入手したものを何点か追加しておきます。

ノレブ・エマージェンシー(日本輸入版)/ プジョー308・5ドアHB (フランス国家警察・新塗装)

東京・足立区の「イワヤ」が発売元になっている、日本語版パッケージのプジョー308・5ドアHB。
以前に「ノレブ・エマージェンシー」のパッケージ(フランス版)で掲載したものと、カラーは同じですが、フランス版はホイルがメッキ、日本版は銀塗装になっています。

ストライプのブルーの色調も若干違いますが、これは単に生産ロットの違いによるものでしょう。

便宜的に「ノレブ・エマージェンシー」としましたが、日本版パッケージは緊急車以外のクルマと共用されているため、「EMERGENCY」の表記はありません。
   


ノレブ・エマージェンシー/スバル・インプレッサWRC(フランス国家憲兵)

ジャンダルムリーは高速道路警備隊の取締用にプジョー306を使っていましたが、これは「追われても逃げ切れるパトカー」との評判があって、その交換時期が来た2005年に、インプレッサWRX・150台を導入したと伝えられました。それがようやく3インチ・サイズのモデルになったわけです。

ブルーが、メタリック塗装になっていますが、実際に運用されているインプレッサは、他のジャンダルムリー車両とは違って、かなり明るいブルー・メタリックになっています。
これは想像ですが、ジャンダルムリーへの納車にあたって、わざわざ国家憲兵仕様の濃いブルーに塗り替えず、インプレッサの市販車のメタリックブルー車に、そのままマーキングをして使っているためではないでしょうか。

ただし実写ではこんなに大きなテールウイングは付けていませんし、金色のホイルも履いていないようです。室内にはロールケージが入っていますから、ラリーカー・モデルの色違い仕様、ということになります。



ノレブ・エマージェンシー/スバル・インプレッサWRC(フランス国家憲兵)

メタリックでないダークブルー、屋根上に「1」のナンバー、ホイルはイエローオーカー色に塗られた、インプレッサのバリエーション。これも何かのセットの同梱品かもしれません。



ノレブ・エマージェンシー/ルノー・メガーヌ・トロフィー 2005(フランス国家警察・旧塗装) 

「ファイブ・パック」でジャンダルムリー仕様だった「メガーヌ・トロフィー」で、国家警察・旧塗装のものもあります。
ルース状態で入手しているので、セットの同梱品の可能性もあります。

ジャンダルムリー・カラーでは、ブルーが濃すぎて良くわからなかった面がありますが、この白塗装は妙にカッコいいです。
なかなか気に入った1台で、やはりミニカーは、画像で確認しないと持っていたかどうかわからなくなってしまうようなものよりは、これぐらいの個性があった方がいいのかもしれません。


ルノートイズ/ルノー・メガーヌU・エステート(フランス消防)

ブランドは「ルノー・トイズ」、車種は「メガーヌU・エステート」ですが、インテリアはツブされており、屋根上灯点灯+サイレン吹鳴メカを載せています。
裏板は電池交換式のものに替えられているため、車名や「ルノー・トイズ」ロゴなど、一切の文字モールドがありません。

パッケージ上に付けられた「ルノー・トイズ」のロゴには「Since 1934」の表記がありますが、これこそ、アンドレ・シトロエンの死後に、CIJ社によって「シトロエン・ミニチュア」(ジュエ・シトロエン)からルノーに継承された、「ルノー・ミニチュア」(ジュエ・ルノー/Jouets Renault=ルノートイズ)の歴史を受け継ぐものです。
(当サイトの「CIJとJ.R.D.」の項をご参照ください。)



※今回は、オーストリアのベルントガーニースで撮影して来てくれたフランス緊急車両の実写写真を「海外緊急車フォト・アルバム」にアップしました。ノレブがモデル化しているのと同じクルマの実写を見ることができますので、ぜひ合わせてご覧ください。






 ノレブ・ミニ・ジェット


ノレブにとっての小スケール・モデルの歴史は以外に古く、1975年にシュコーの800番台シリーズの金型を入手し
た時であるとされます。(Tales of Toy Cars, mini jet by Norev, http://www.breithaupts.com/totc376.htm)

ただし以前に調べたところではシュコーの倒産は1976年で、上記サイトでは、「1976年に追加の金型を選んだ」と
いう記述があるので、シュコーが最終的な破綻以前に、財務状況を少しでも好転させるために、一部の金型をノレ
ブに譲渡した可能性も考えられます。いずれにしても、シュコーの1/66シリーズの金型の全てをノレブが引き取っ
たわけではなく、「セレクト」が加えられたようです。
ドクター・エドワード・フォースによる「Classic Miniature Vehicles MADE IN FRANCE With Price Guide and 
Variations List」(Shiffer Publishing, Ltd. 1991)の201-207ページにリストがありますが、やはりシトロエン/ルノ
ー/プジョー/シムカ/マトラ/マセラティというよりに、ドイツ車だけでなく仏・伊車などに重点を置いたラインアッ
プだったことがわかります。これらのモデルには400番台の品番が付けられました。

そして、80年代には、シュコー金型から離れた、ノレブ・オリジナルの小スケール・モデルが800番台の品番で作ら
れるようになりました。当初はシュコーと同じ1/66サイズでしたが、最近のモデルはもっと大きめの1/55〜1/60ぐ
らいのサイズを採用しています。これはドイツ製「Siku」などのサイズを意識したものではないでしょうか。
子供たちやお母さんたちにアピールする上では、「大きくて立派に見え、おトク感がある」のは大切なことだからで
す。
概ね「マジョレット」と同じぐらいの価格帯で売られているようで、こうなると、マジョレットの新しいモデルと比較をし
てみたくなって来ます。

現在ミニジェットには、「レギュラー」「ショールーム」「レトロ」「レーシング」「GT-iチューナーズ」「ドリフト・ショップ」
「エマージェンシー」「コンストラクション」「ファーマー」「シルバージェット(クロームメッキやメタリック塗装のモデ
ル)」の多彩なカテゴリーがあります。



ノレブ・ミニ・ジェット(ノレブ・エマージェンシー)/ ルノー・マスターU (救急車)

実車は1997〜2010年生産の、2代目ルノー・マスター。
ミニカーの裏板には「2003」の年式表示があります。裏板には「Renault Toys」のモールドもあります。

ミニカーはプラ製のリアゲートが開閉可能という凝ったツクリですが、中を覗くと、側面窓の塞がれたバン・ボディにもかかわらず、ミニバスと共用の3列シートが入っているのはご愛嬌です。

ルノー・マスターをベースとする救急車の実車としては、ハイルーフ化されていたり、側面に窓が残されていたり、専用のメディカル・キャビンを載せていたりと様々ですが、こういったバン型ボディをそのまま使っているような例もあるようです。

車体後部に牽引フック付き。



ノレブ・ミニ・ジェット(ノレブ・エマージェンシー)/シトロエンC5 ツアラー(救急隊人員輸送車)

ヘッドランプ下端に特徴的な段差のある、2007年以降の2代目モデルの「ツアラー」(ステーション・ワゴン)のようです。

青の「スター・オブ・ライフ」を付けているので、メディカル用途の設定ですが、ミニカーの室内は担架を収容する設備にはなっていませんから、「AMBULANCE」の文字をプリントしていないのは、良識ある配慮でしょうか。



ノレブ・ミニ・ジェット(ノレブ・エマージェンシー)/ シトロエン C4 (フランス国家憲兵)

シトロエン C4のジャンダルムリー(フランス国家憲兵)仕様。

実車は2004〜2008年生産の、初代サルーン・初期型のようです。
実車は2009年2月にマイナーチェンジ、2010年6月にフルチェンジを受けています。発売時期等は未確認ですが、フルチェンジ後に、ポリスカー用として「お下がり」になった金型かもしれません。

このモデルには、裏板に「Renault Toys」のモールドがありません。



ノレブ・ミニ・ジェット(ノレブ・エマージェンシー)/ プジョー308・5ドアHB 
(フランス国家警察・新塗装)

「ミニ・ジェット」中で緊急車を集めた「ノレブ・エマージェンシー」というシリーズのもの。

プジョー308は、2007年導入の現行車(2011年10月現在)で、ミニカーは5ドア・ハッチバック。
実車の全長は4290mm、ミニカー全長は約75mmなので、約1/57スケールということになります。

クリアパーツの嵌め込みによるヘッドランプ、5本スポークのホイル、綺麗にプリントされたプジョー・エンブレムなど、かつての1/43クラスのモデルが実現していなかったクォリティを持っています。
現在の小スケールモデルの仕様としては、こけらは「当然」になっているのでせすが、これでは中途半端な1/43モデルの存在意義が希薄になるのは、ムリからぬところでしょう。

塗装はフランス国家警察(ポリス・ナシヨナル・ドゥ・フランス)のもので、新しく変えられた新塗装のようです。
内務省の管轄下で、主に人口1万人以上の大都市圏における警察業務を所管します。



ノレブ・ミニ・ジェット(ノレブ・エマージェンシー)/ ルノー・カングーU・2007 (フランス国家憲兵)

実車は2007年から生産されている「カングーU」で、これも2011年10月現在の現行車。
「コンパクト」カテゴリーに属する、小型フルゴネットです。

実はルノー(実車メーカー)は、スマートフォン用のアプリを車種ごとにたくさん配信していて、ギョーカイで結構話題になっているのです。「カングー」のアプリもあり、ボディカラーのバリエーション表示/コンセプト動画/ゲーム/ディーラー検索などたくさんの機能を持っています。(もちろん日本語。)

このカングーのモデルは裏板に「ルノー・トイズ」のモールドを持っており、ルノー・ディーラー向けのものと共用になっているようです。後部に牽引用フック付き。裏板もダイキャスト。

マーキングはジャンダルムリー(フランス国家憲兵)のもので、国家警察や地方警察のポリスカー塗装が一新されて来ている中で、ジャンダルムリーのダークブルー塗装は変わっていないようです。




ノレブ・ミニ・ジェット(日本輸入版)/ ルノー・クリオV・3ドアHB・2007 (フランス地方警察)
3代目「クリオ」の5ドア車(2007年式)で、このモデルも裏板に「ルノー・トイズ」のロゴを持っています。

日本輸入版で、完全な日本語パッケージに入っており、東京・足立区の「イワヤ」という会社が発売元になっています。この会社は、「スーパーサウンド」という、エンジン音の出るモデルカーのラインアップを持っています。

クリオの実車は日本名が「ルーテシア」になっているはずで、欧州車の場合、こういう問題も発生します。

マーキングは「ポリス・ミュニシパル」で、地方自治体の設置する地方警察のもの。






 ルノー・トイズ

「ルノー・トイズ」(フランス語では「ジュエ・ルノー」)の歴史は古く、戦前の1934にまで遡ります。ルノーやシトロエンがクルマの玩具を販売して、当時「自動車」の主たるユーザーであった富裕層の子供たちに、自社ブランドの「刷り込み」をしようとしたのがはじまりです。

実車ディーラーでの販売のためのものですが、ディーラー販売モデルとなると、つい1/43サイズか、それ以上の大きさの「模型」性の強いモデルカーが主体になりがちであるのに対して、こういった小スケール・モデルを供給するところに、「新しさ」を感じます。それだけ、「3インチモデル」のクォリティが上がった、ということの証明でもあるのでしょう。

「子供を連れてディーラーに来てもらう」ということは、ディーラー側にとっても結構重要な点で、「自分が乗っているのと同じクルマのミニカーを買う」「ディーラーに行くごとにコレクションを増やす」「特に点検・車検などの用事もないのに、子供のミニカー目当てにディーラーに行く」といったことにでもなれば、なかなかの誘客素材になるというわけなのです。

ブランドは「ノレブ」ではなく「ルノートイズ」ですが、パッケージ裏面やミニカーの裏板にも明確に「ノレブ」の表示が入ります。
ミニカタログが入れられており、交通標識付きのセット、ルノー旧車のシリーズなど多彩な展開です。こういうものが入っていると、また次の週にディーラーに行くことになりかねません…。
(ノレブ「ミニ・ジェット」シリーズにはミニ・カタログは入っていないようです。)


ヨーロッパでは、ノレブ・3インチは、マジョレットより若干高価とのこと

実は、このページでご紹介しているモデルの多くは、オーストリアの交換相手から送られて来ているのですが、オーストリアでは、(彼の知る限り)ノレブ・3インチのシリーズはトイ・ショップ(模型店も含む意味です)では売られていないということです。

ただしオーストリアでも、ルノー・ディーラーでは「ルノー・トイズ」が売られており、ルノー・ブランドとしての付加価値料が発生して1台5〜7ユーロぐらい。「ルノー・トイズ」以外の「ミニジェット」のモデルは彼がフランスに行った際に現地で買ったもので、だいたい1台5ユーロぐらいだった、ということです。つまり、「ルノー・トイズ」の方が若干高め、ということになるでしょうか。ルーマニア車である「ダチア・ロガン」も、オーストリア国内のルノー・ディーラーで購入したということです。

マジョレットやSikuのオーストリアでの価格は、大体1.99〜4.5ユーロぐらい。彼自身の意見では、ノレブ・3インチは、「マジョレット」よりも高いディテールを持っていると思う、ということでした。

マジョレットはオーストリアでも売られているため、フランス緊急車仕様のモデルを今度送ってもらうことになりました。(日本国内ではカバヤのキャンディ・トイ仕様になってしまうためです。)
こちらからは、日本語パッケージ入りの「ノレブ・ミニジェット」を送ることになっています。


ルノー・トイズ/ ルノー・エスパスW (救急隊人員輸送車)

2003年以降の4代目エスパス。

ミニカーは、民間型そのままの7席シートの室内に、屋根上灯ごとサンルーフ開閉というアクションを持っており、「アンビュランス」とは言えないない内容ですが、このサイズでサンルーフ・開閉(エスパス)、ハッチバック開閉(クリオ・エステート)、リアゲート開閉(マスター)と、アクション機構を盛り込んでいることに関心します。

「Espace」は「エスパセ」と読みたくなりますが、フランス語の「e」は「エ」でなくて「ウ」なので、アクセント記号が無い限り、語尾の「ce」が「ス」になります。

牽引フック付き。



ルノー・トイズ/ ルノー・クリオV・エステート (消防司令車)

クリオV・エステートのファイア・チーフ・カー。
2007年9月のフランクフルト・モーターショーで発表された、3代目クリオのワゴン・バージョン。

2007年春のジュネープ・ショーでは3ドア・ワゴンのコンセプトとして発表されたものの、量産仕様ではより現実的な5ドア・ワゴンになった、という経緯を持っています。

ただし日本市場では、2006年7月に「Honda Cars」に統合以降も「クリオ」の商標を Honda が持っているため、日本名は「ルーテシア」とされました。

ハッチバック開閉・牽引フック付き。



ルノー・トイズ/ ルノー・トゥインゴT (ポリス)

ルノーのコンパクト、実車は1992年〜2007年生産の初代トゥインゴ。

通常とはクルマの向きが逆になってパッケージに入れられている、と思いきや、ボディ右サイドの「POLICIA」の文字を見せているのですね。反対側は「POLICE」になっています。

「POLICIA」というつづりを使うのは、スペイン語/ポルトガル語/アルバニア語など。
それで、結論から言うと、面目ないことにどこの国のポリスカーか、特定できていないのですね。
どなたか、ご存知の方がありましたら、ご教示ください。

しかし、ダチア・ロガンはルーマニアでの生産車ですから、ルーマニア警察でもよろしいのですが、「ルノー・トイズ」が突然、ポルトガルやアルバニア警察仕様のモデルを出すとも考えにくいのですね。
ミニ・カタログにも載っているのですが、何の説明もありません。

カラーリングの感じが、フランス・ジャンダルムリーに非常に似ているということもあり、案外フランス国内のポリスカーで、バイヨンヌなど、スペイン国境に近く、スペイン語併記の必要のある地域のものかもしれない、と考えています。

裏板には車名がなく、ON・OFFスイッチがあって、何と屋根上灯点灯・ピープー音吹鳴のアクションが付いています。おそらくこれも、フルチェンジ後に「お下がり」になった旧モデルの金型を活用した商品なのでしょう。



ルノー・トイズ/ ルノー・ラグナV・5ドアHB・2007 (フランス国家警察・旧塗装)

2007年式のルノー・ラグナVの5ドアHB車。ミドル・サイズ車です。
言うまでもないことですが、「ルノー・トイズ」ですから、ルノー車以外のモデルは無いわけです。

マーキングはフランス国家警察のもので、パリ警視庁(首都警察)も「自治体警察」ではなく、フランス国家警察(ポリス・ナシヨナル)の内部に置かれており、フランス内務大臣直轄のパリ警視総監が指揮を執ります。

フランス国家警察とパリ警視庁の車輌は、付けているエンブレムの違いだけで、基本的な塗装は同じもののように見えます。ミニカーではエンブレムをプリントしていません。

パリ警視庁のポリスカーはかつては白/黒塗装でしたが、その面影は全くなくなってしまいました。



ルノー・トイズ/ ルノー・メガーヌV・5ドアHB・2008 (フランス国家憲兵)

2008年式のルノー・メガーヌVの5ドアHB車。 2008年に発表・発売された3代目メガーヌ。
マーキングはジャンダルムリー(フランス国家警察)。

実車の全長は4295mm、ミニカーはこれも牽引フックを除いて75mmなので、1/57スケールという数字になりました。



ルノー・トイズ/ ダチア・ロガンMCV・2006 (ルーマニア警察)

ダチア(Dacia) は、ルノーが1998年に傘下に収めたルーマニアの自動車製造会社。
「ロガン」はルノーの世界戦略車で、低価格の前輪駆動 (FF) 小型車として1999年に開発を開始し、2004年からヨーロッパで発売されました。

「ロガンMCV」は2006年に追加されたモデルで、ミニカーも2006年式をうたっています。

パッケージに「ルノー・トイズ」の記載はありませんが、中にはミニ・カタログが同梱されており、「ルノー・トイズ」として売られているものでしょう。ルノー工場で作られた分の実車は「ルノー」ブランドで売られているとのことですが、ミニカーの裏板は明確に「DACIA」になっています。

マーキングはルーマニア警察のもの。ルノー・ディラーとしては、自社の世界戦略をアピールすることにもなるわけですが、ディーラー・モデルとしては妙にマニアックです…。







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