リニューアル後、初の新企画ページのテーマとして、「3インチ・サイズのポルシェのポリスカー」を選びました。 (「3インチサイズ」は、日本でいう「トミカサイズ」「1/64サイズ」のミニカーのことです。ただし「トミカ・リミテッド・ヴィンテージ」のような統一スケールのシリーズを別にして、1/64に統一されているわけではないので、海外、特に欧州ではこう呼ばれることが増えているように思います。) リニューアル前に、マジョレット、Sikuのバリエーション紹介をして来たわけですが、その中に「ポルシェのポリスカー」が相当数含まれていることに気づき、コレクションの中でこれだけを抽出して、ケースに並べ直していたのです。 リニューアル後、メインテーマが救急車や消防車に移ってしまう危険があることを感じつつ、「ポリスカー」として自分で熱心になれるテーマをキープしておきたい、という意図もあります。 リニューアル後のこのページでは、バリエーション番号とか、そういうことは忘れて、各メーカーの表現の仕方の違いとか、各国のポリス・マーキングとかを並べて、気軽に楽しむものにしたいと思います。 モデル画像も、敢えて古いデジカメを使っていたのを止め、単純にiPhoneで撮ることにしました。解像度は、何とこの方が高い、そして何と言っても画面が明るくなりました。やっぱり、方法論はアップデートしていかないと、いけないようです。 「バリエーション図鑑」的な方法論を採ると、「重箱のスミ」の世界に際限なく入り込むことになり、たぶん他の方にとっては「どーでもいい」ことだろうな、と思いつつ、その世界から抜けられなくなっていました。(「バリエーション図鑑」は、「レスキューレンジャー」と「コーギージュニア」をリニューアル後も継続していますので、「際限のない重箱のスミ」世界についてはそちらでご堪能ください。) どうやら、「Siku」や「マッチボックス」の緊急車両全体に拡げてこうした「バリエーシュョン図鑑」をやろうとするのは、対象となるモデルがあまりにも多すぎるようです。「Siku」専門のコレクターにでもなれればいいのですが、私にはムリのようです。 このページでは、その型式のポルシェが、「実際にその国の交通警察で使われているか」いうことも、深く問わないことにします。それを言うのは「野暮」というものであり、ポルシェというクルマは、その点を超越できる良さを持っているように思います。「911は使っていたことがあるが、996は使われていない」といったことを言い始めるのは、こうした3インチ(1/64サイズ)のミニカーとその企画者に対しては「酷」というもので、「かっこいいオモチャ」として見てあげる「まなざし」を持ちたいと思います。 ただし、ドイツはもとより、オーストリア、ベルギー、オランダ、ポーランド、ルーマニア、ハンガリーなどでも、ポルシェのポリスカーの実車写真を確認しています。
私の持っている本は古いものばかりですが、1点だけ写真を引用しておきましょう。 ポルシェのポリスカーのミニカーには、356のカブリオレや、911のタルガなどがあり、実在のものかどうか疑う方もいらっしゃるかもしれませんが、これらはちゃんと実在するのです。 ただしカブリオレやタルガでは屋根をはずした時のために、回転灯が支持架の上に付けられているのですが、これが3インチサイズの小さなミニカーでは再現できない、という難点がありました。 最初に掲載するマジョレットでは新しいモデルばかりですが、Sikuなどでは、古い年代のモデルも登場させたいと思っています。(2016/6/26) マジョレット マジョレットの経営がドイツの「ズィンバ・ディッキー・グループ」に移り、新しい赤い箱に入ったポリスカーの5台セットを入手してご紹介したのが、2012年の1月でした。 この中に、カラーはドイツ仕様、プリントは英語(POLICE)というポルシェ996が1台入っていたのですね。ボンネットに妙な「星」のエンブレムを付けるなど、「余計な飾り」をしたモデルでしたが、従来の「マジョレット」とは違う印象があり、マーケットで「Siku」などの競合ブランドと戦おうとする意志を感じたものです。 その後、ポリス・救急・消防の「緊急車3点セット」(これを海外のコレクターは「S.O.S.セット」と言っています)が作られ、ドイツ向けや、海外向け汎用の英語のプリント以外に、各国言語のものが作られるようになりました。 当初「救急車」はBMWのドクターカー、消防はルノー・メガーヌで、つまり乗用車金型のただの色替えだったのですが、ポルシェだけは、実際に各国の交通警察で使われていることもあって、何となくサマになっていました。以降、救急と消防は色々な車種のものが作られていますが、ポルシェは一貫してその地位を守っています。 この緊急車3点セットを、各国版が出るたびに、それもホイルが変わった、屋根上灯が赤くなった、というたびに追いかけるのは、はっきり言って疲れました。 それで、救急と消防は放棄!、とりあえず「ポルシェ・ポリス」だけ継続することにしたわけです。 このページのための写真を撮ったことで、自分としてもバリエーションの整理がかなり進みました。 「ホイルが変わったが、必要か?」といったオファーに応じる形で入手しているのですが、しばらく放置していると、自分でも何がなんだかわからなくなるのです。 マジョレット(オーストリア警察) オーストリアは、ドイツ語圏ですが、ポリスカーの塗装はドイツとは異なり、赤いラインがアクセントになったお洒落なデザインです。 オーストリア向けが作られたのはかなり最近になってからです。当初は他の国向けのものと同じ「996」がセットに入っていましたが、新しい3点セットでは「911GTS」になりました。 最近の他の国向けのものは、「パナメーラ」に替えられているので、今のところ「911GTS」で確認しているのは、このオーストリア塗装のものと、日本でカバヤから売られた、白黒に星のエンブレムを付けた国籍不明マーキングのものだけです。 テールウイングや、フロントの「アゴ」の張り出しなどが、優しい印象の「996」よりずっと精悍な感じがします。 この「911GTS」は、窓アキ箱に入った単品も確認しています。 もう1点、実は屋根上灯の断面形が、「996」では丸みがあるのに対して、「911GTS」では丸みのない六角形ものを付けています。そして最新の「パナメーラ」では、基本的にこの六角形断面のものが付けられるようになったようです。 ちなみに新しいオーストリア向け3台セットでは、消防は「MAN TGS」の梯子車に、救急は「ルノー・マスター」のバンに置き換えられていて、乗用車の色替えで誤魔化していた時期に比べて、「本気感」を感じるようになって来ています。 マジョレット(ドイツ警察) ドイツは「ズィンバ・ディッキー・グループ」のお膝元ということになるので、ドイツ語「POLIZEI」(ポリツァイ)は、生産数も多いのでしょう。 5本スポーク、10本スポーク、カギ型変形の5本スポーク、屋根上灯が赤の5本スポークを確認しています。 どうも、屋根上灯が赤のものが生産時期が早いように思います。残念ながら私の持っているものは、赤灯だけ裏板の生産年次シールが無いので確認できませんが、その後実車と同じ青灯になり、ホイル違いが作られていった、という流れではないでしょうか。 オーストリア警察のところで書いた、屋根上灯のバリエーションです。 ドイツ向けでは、同じ「996」、カギ型変形の5本スポークの同じホイルで、屋根上灯バリエーションが発生しました。 左が断面の丸いもの、右が六角形です。六角形の方が少し細くなりました。 これは「たまたま」入手したもので、こんなバリエーションを追求するのはヤメましょうね。 最新のドイツ向け3台セットは、オーストリア向けが「911GTS」なのに対して、「パナメーラ」に置き換えられています。個人的には「パナメーラ」より、「911GTS」の方が好みですが、確かに新しさ感はあります。 屋根上灯は、パナメーラ以降は最新の「六角形」に置き換えられていくようです。 新セットでは消防が「MAN TGS」の梯子車に、救急は「ルノー・マスター」のバンに置き換えられていているのはオーストリア向けと同じですが、プリントやカラーはオーストリアとは違うものになっています。 マジョレット(ベルギー警察) ベルギー向けも、「緊急車3点セット」には「996」が入っていましたが、これも5本スポークと、10本スポークがあります。 オランダの消防市がベルギーで買って来てくれたもので、こちらからはトミカの消防ギフトセットを送りました。(トミカ消防関係の現行品などは、既に全部持っているようでした。) 最近になって「パナメーラ」が出ました。これは単品ブリスターで入手しています。つまり「3台セット」の入手を放棄!したためです。 マジョレット(ルーマニア警察) 当初は「996」の5本スポーク、次に10本スポーク、最近になって「パナメーラ」が出ました。 ルーマニアは、いずれも単品プリスターで入手しています。 各国向けの、全て「3台セット」を探さなければならないとしたら、ハードルは高くなってしまいますが、単品でポルシェだけ入手できるなら、捜索を継続してもいいか、と思わせのです。 マジョレット(ポーランド警察) 「996」の5本スポークで、屋根上灯が青のものと赤のもの。2台とも、単品ブリスターで入手しています。 ポーランドは、ポリスカー実車のマーキングが基本的にドイツと同じなのが意外です。 オーストリアのように、何かワン・アグセントを加えてもいいように思うのですが。 ポーランド語もどうやら名詞が語尾変化するようですが、アルファベットの読みはドイツ語に似ていて、「c」は「ツェ」、「policja」は「ポリシア」ではなくて、「ポリツィア」になるようです。 「Prosze policje!」 (プロシェ ポリツィエン/警察を呼んでください!) マジョレット(ブルガリア警察) 「996」の10本スポークと、最新のパナメーラ。2台とも、単品ブリスターで入手しています。 2011年10月17日、タイ北部・中部を襲った大洪水は、首都バンコクのすぐ北側にあり、タイ最大規模の工業団地である「ナワナコン工業団地」(パトゥムタニー県クロンルアン)の防水堤防の一部を決壊させ、工業団地内に浸入しました。これにより、タイ政府は団地内の工場に対して、操業停止と従業員の避難を命じる事態となったのです。 この工業団地の中にあったマジョレット・タイランドの工場も洪水の被害にあいました。操業停止期間があり、中国での違う金型(ボルボXC60など)による代替生産も行われましたが、この「996」の金型はどうやら被害を免れたようで、2012年9月の工場再開後も生産され続けました。。 おおまかに言って、「5本スポーク」は洪水被災以前の生産、「10本スポーク」は被災後の生産のようです。初期に消防指令車だった「ルノー・メガーヌU」は、金型そのものが使えなくなってしまったと考えられ、その後トヨタハイラックス、VWアマロークなどに置き換えられてきました。 この「996」のブルガリア警察仕様で、初期の5本スポークのものが作られているかどうかは不明です。 マジョレット(ハンガリー警察) ルーマニア向けと同じパターンで、「996」の5本スポーク、次に10本スポーク、最近になって「パナメーラ」が出ました。 「996」は2台とも、「3台セット」中のもの、「パナメーラ」は単品ブリスターで入手しています。 こうして見るとと、マジョレットは旧東欧圏の市場開拓に熱心のように思われます。Sikuやマッチボックスが比較的「手薄」なところをねらっているのかもしれません。 マジョレット(チェコ警察) 最新のパナメーラでは、チェコ仕様が出ました。銀メタリックにブルーと黄色の映える、洗練されたマーキングです。 これも単品ブリスターで入手しました。 このモデルを購入したチェコの出品者に聞いたところ、マジョレットがチェコ仕様のモデルとして作ったのは、今のところこのパナレーラだけ、これが初めてだということで、これ以外に「996」や「911GTS」などは作られていないようです。 彼は、3インチサイズのメルセデスのコレクターだということでした。 (2016/6/26) マジョレット(オランダ警察) オランダ版の「996」と「パナメーラ」。 オランダ警察はポルシェを早くから運用していますが、それは白とオレンジに塗られた「911」や「914」でした。 白にオレンジとブルーの斜線の新塗装でも、「911」を運用しています。 「996」や「パナメーラ」をオランダ警察が使っているかと言うと、確認はできません。 マジョレットは、かっこいい「996」と「パナメーラ」で、各国のハイウェイ・ポリスカーを綺麗なプリントで作っているだけであって、その車種を実際に運用しているかどうか、ということとは別なのです。 だから、「フォードのポリスカー」のような気持ちでこれらのポルシェのミニカーと向き合うことは、そもそもできないのです。ポルシェを使っていない国もあるでしょう。なので、実車があるか、どうか、という視点での真面目な検討は、このページではやめることにしたのです。と言いつつ、ついこの点にもふれてしまいますが。 マジョレット(ノルウェー警察) 「996」、ノルウェー版の旧塗装。 消防・ドクターカーとの3台セット箱で「ノルウェー版」という説明があって入手したもので、これだけだったらどこの国のものか、わからないですね。 ノルウェー警察の旧塗装で、VWビートルを使っていた頃から、白ボディに赤と青のストライプをシンボルにしていました。 少し見た範囲では、ノルウェー警察のポルシェの画像というのはヒットしません。 「996」、ノルウェー版の新塗装。 マジョレットのこのシリーズでは、ホイルや屋根上灯のバリエーションは多く発生しますが、同じ地域向けでカラーリングが全く変わってしまったのは、このノルウェーぐらいのものです。 新塗装の車両の画像に「2012 style」ととう説明をしている資料があるので、新塗装への転換は2012年頃からでしょうか。 マジョレット(スウェーデン警察) 「996」、スウェーデン版。 こちらは、マーキングが変わることはなく、ホイルと屋根上灯のバリエーション替えです。 スウェーデンは、白黒塗装の旧塗装の時代から、911を運用していました。ミニチャンプスが1/43でこのモデルを作っています。 青/黄・警戒塗装の新しい911も使われています。 実車に塗られている黄色は蛍光色のようです。 当然ですが、スウェーデンも実車の屋根上灯は青で統一されています。ですので、赤灯のバリエーションは、コレクター向けの「大サービス」です。 マジョレット(スイス警察) 「996」、スイス版。 単品で入手したもので、ドイツ語「POLIZEI」(ポリツァイ)ながら、ドイツでも、オーストリアでもないので、スイスだろう、という程度の判定です。白にオレンジのデザインの特徴も一致します。 Sikuであれば、フランス語圏用の「POLICE」のブリントのものも作られるのですが、マジョレットでは確認していません。 マジョレット(イタリア警察) 「996」とパナメーラ、イタリア版。 イタリアも、ハイウェイ・ポリスとしては例のランボルギーニ・ガヤルドを運用していて、ポルシェの実車というのは確認できません。 ランボルギーニやアルファロメオといった自国車があり、ある面ドイツ車は競合なわけですから、わざわざポルシェを導入する必要もないかもしれません。 マジョレットは、金型があれば、何でも色々な色に塗ってみる、そういうノリのモデルと割り切ったがいいのです。 全身を黄色に塗った「ポルシェ・パナメーラのタクシー」などというものも最近出ました。 イタリアでも、屋根上灯が赤のものはないはずです。 マジョレット(フランス警察) 「996」のフランス版。 「ポリス・ナシヨナル」、フランス国家警察の新塗装。 ホイルと屋根上灯のバリエーション。 フランスの実車画像では、ジャンダルムリー(国家憲兵)の、鮮やかなブルー1色の「991」のものがありました。ブルー1色のの方が、新鮮で魅力的に感じます。 マジョレットはもともとフランスのブランドだったわけですが、そのあたりのセンスは、もはやあまり発揮されていないのかもしれません。 「ポリス・ナシヨナル」の実車では、屋根上灯で赤と青を2灯ずつ配置したものがあるようです。 新しい「パナメーラ」を入手。やはり「ポリス・ナシヨナル」の仕様です。 フランスから入手しましたが、単品ブリスターに入っており、「プレミアム」シリーズをうたっています。 ミニカタログが入っており、この「パナメーラ」と「シトロエンC4・カクタス」のポリス・ナシヨナル、「ルノー・メガーヌ」と「ダチア・ダスター」のジャンダルムリー、「VW・アマローク」と「MAN TGS梯子車」の消防の6点を載せています。 「S.O.S.3台セット」とは、販売形態が変わっているようにも見え、少し入手がしやすくなるかもしれません。 これまで裏板に紙シールが貼られていた生産年月日表記が、白文字で裏板に直接プリントされるようになりました。 この「パナメーラ」、両ドア開閉アクションが付いていますが、引っかかって開かなかったりするものが多いです。 マジョレット(インターナショナル版) 「996」、インターナショナル版。 塗装は銀/青のドイツ塗色ながら、表記は英語の「POLICE」、ボンネット上に大きなエンブレムを描いている、架空系の仕様です。 輸出汎用として、どこの国のマーケットにでも出せる仕様にしたものと想像しています。 「インターナショナル版」というのは、私の勝手なネーミングです。 「996」、インターナショナル版。 黒白のアメリンカン・ハイウェイ・パトロールふうに塗り、星と盾のエンブレムを付けたもの。 銀/青では、ポリスカーとして認知してくれない地域への輸出向けでしょうか。 以前にはこのモデルを「アメリカ版」としてご紹介したのですが、もしこれが「アメリカ版」なら、他の地域向け仕様のマーキングへの信頼性が揺らいでしまうので、やっぱりこれは「インターナショナル版・架空仕様」と考えておきましょう。 ドア横のナナメのストライプとか、余計な要素をたくさんプリントし、だいぶんムカシの香港製のチープモデルのような雰囲気になっています。ヘリコプターなどと一緒になったポリスもののセットに、この種のマーキングのものを入れたがるのですが、何もこのようなプリントのものでなくてもいいと思います。 「コレクター向け」と、玩具マーケット向けとで、発想を分けているのでしょう。 マジョレット(日本警察) 「996」と「911 GT3」、日本版。 マジレットのポルシェ・ポリスが作られるのは、遠いヨーロッパの話、と思っていたところが、突然カバヤから白黒の「警視庁」ポリスが出て、少なからず動揺しました。 ドイツのコレクターが先に発売予告を見つけ、「手に入らないか」と言って来て、それから探す羽目になりました。スーパーの店頭で見かけることはついぞなく、BMWなどを含む5種が、それぞれバラで売られたようなので、5種セットを揃えるのがそこそこ大変でした。ドイツやオーストリアに何セットも送り、ようやく自分の分としてキープするに至ったものです。 「911 GT3」の方は、マジョレットのこのシリーズの中では車種的に珍しく、今のところオーストリアとこのモデルだけですが、白黒に塗られているために「日本ポリス」だと考えているものの、これも「アメリカ版=インターナショナル汎用」と同じ、金色の星を付けています。 日本版をセットで入手した海外の人は、これも「日本ポリス」だと真面目に考えているおそれがあります。 この他にも、オーストラリア版のパナメーラなどが出ているようですが、現在あまり真剣に追いかけておらず、高い買い物をする気持ちもないので、一応マジョレットは今回でひと区切りさせ、次回はSikuのポルシェ・モデルに移ろうと思います。 (2016/9/17) |
マジョレット(ソニック・フラッシャー) マジョレットは前回で一応終了、のつもりだったのですが、新着が2点届いたので追加します。 2台とも、オーストリアの交換相手が送ってくれたものです。 ひとつは「ソニック・フラッシャーズ」というシリーズの、「928」。マジョレットがドイツのズィンバ・ディッキー・グループの傘下に入る前の製品です。ダブルの屋根上灯が点滅し、サイレン音が鳴ります。どちらが先が未確認ですが、「サウンドトミカ」と同じような機能です。電池交換はできないようですが、まだ元気に音が出ます。 ボンネットとドアがブルーのものもありますが、この種のトイの宿命として子供に遊ばれたものがほとんどで、状態の良いものはあまり出てきません。そもそも「911」系列以外のポリスカーのモデルは貴重です。 マジョレット(ドバイ警察) もう1台は、「パナメーラ」のドバイ警察です。 ドバイのポリスカー5台セットの中の1台として入っています。 どうも最近、特定のネットショップとか、流通チャネル、ドラッグストアなどの限定で、こういった「限定セット」を作るのが流行っているようで、マジョレットや、Sikuもこういう手法に手を染めています。 世界のコレクターたちにとって、果たしてこれは貴重な限定モデルが入手できるハッピーな機会なのか、余分な苦労を背負い込む厄介事なのか、いずれにしてもあまり頻繁にやって欲しくないことではあります。 この「パナメーラ」ドバイ警察については、単品ブリスターでも出ているようです。 ちなみに5台セットの内容は、「パナメーラ」「メルセデスSLS」「アウディR8」「マスタング」「カマロ」です。これとは別に3台セットのパッケージも見ました。 ドバイ警察は、ランボルギーニ・アヴェンタドール/フェラーリFF/ブガッティ・ヴェイロン/メルセデスSLS-ANG/メルセデスG63-ANG/ベントレー・コンチネンタル/アストンマーティンOne-77/マクラーレンMP4-12C/マスタング/カマロ/などの「スーパーカー」のポリスカーを実際に運用していて、ミニカーメーカーの大なる関心を集めています。 トミカがドバイ警察カラーの「アヴェンタドール」を通常品として出し、「メルセデスSLS-ANG」、「ニッサンGTR」を「非売品」として作っているのはご存知の通りです。つい先日、海外のネットオークション上で「ポルシェ」(911カレラ)も見ました。アジア圏からの出品で、即決約75ドルでしたが、無視しています。なんか、かえって、マーケットを混乱させますよね。こういうものに、あまり飛びつきたくない、と思っています。コレクターなら高価でも、何でも欲しがるだろうと思われたくない、というのが私としての「意地」でもあります。縁があるなら、いずれ、箱なしの多少剥げたものでも手に入るでしょう。 75ドル使うなら、デンマーク・テクノ製の古いモデルを手に入れることができます。 Siku(ドイツ警察・オーストリア警察) さて、今回のメインは、Siku製の歴代のポルシェのポリス・モデルです。 話題の「ドバイ警察」から、年代はぐっと遡ります。 まず、1961年から1964年に生産された、「356A」。品番は「V160」。 Sikuのモデルがプラスチック製だった時代のものです。 小スケールでのポルシェのポリス・モデルとしては、最も古いもののひとつではないでしょうか。 実車の「356A」が生産されたのは1956〜1959年ですから、実車が生産されていた同時期にモデル化された、貴重な製品ということができます。 2台は、バリエーションではなく、1台の右フェンダー上のサイレンが脱落していたため、あとでフォローしたものです。 商品名は、「Autobahn-Streifenwagen」(アウトバーン・シュトライフェン・ヴァーゲン)を名乗っています。「シュトライフェン」は「巡回する」という動詞、直訳すると「ハイウェイ・パトロール・カー」で、以降、Sikuのポルシェ・ポリスカーの商品名として定番になりました。 1964年から1970年生産の「901」。品番は「V235」。 実車は「356」の後継車種であり、生産に入ったのは1964年からですが、Sikuも同じ年にモデルを発売しています。 後の「911」ですが、初代生産型は開発コードそのままに「901」と呼ばれたため、Siku製モデルの裏板にも「901」と明記されています。 既にプラスチックではなく、ダイキャストの時代に入っており、1/60の精密感あるモデルになっています。小スケール・ミニカーの中の佳品と言えるのではないでしょうか。 ボンネット開閉アクションを持っていますが、当然ながら911シリーズはRRで、エンジンはリアにありますから、前には何も入っていません。 1978年から1988年生産の「911タルガ」。品番は「1316-2」。 1970年から1974年に生産されたノーマル乗用車の「911タルガ」を、「フリッツァー」と呼ばれたスピードホイル化するとともに、ポリスカーにしたものです。 したがって、スピードホイル化以前の「911タルガ」には、ポリス・モデルはありません。 ボンネット上のコールサインには、「MK」と「LS」があります。 「MK」は「Ma"rkischer Kreis」(メルキシャー・クライス)、ノルトラインヴェストファーレン州に31ある「クライス」のうちのひとつです。「クライス」というのは、(州(ラント)の下のエリアの名称で「郡」に相当します。56の国立公園と多くの観光地/湖/川などのある風光明媚なリゾートエリアで、約50%が国立公園エリアとして保護されています。 「LS」は、ズィーパー・ヴェルケ(Siku)社のある「リューデンシャイト」(Lu"denscheid)市の略で、メルキシャー・クライスの首都になります。デュッセルドルフ/ハーゲンなどのそばにあります。Sikuは自分の会社のある市や地域(クライス)の名前をポリスカーに印刷し続けていたわけです。 ちなみにドイツのナンバープレートのアタマ2つのアルファベットは、この地域(クライス)名を表示しており、文字が1文字しかない場合は州の首都または州と同格の都市州を表します。例えば「M」ならミュンヘン、「B」ならベルリン都市州です。したがってメルキシャー・クライスのナンバーブレートは「MK」で始まります。 一番右のモデルは、ウインドが妙な蛍光イエローになり、ホットホィールやマッチボックスからの、誤解に基づく悪影響を受けた時期のものです。今の目から見ると、なんでわざわざ、こんなことをしたのでしょうね。 この金型は、両ドア開閉アクションを持っていますが、ホールドしているバネが弱いため、カタカタとドアが開いてしまうという欠点がありました。 1989年から1999年に生産された「911ターボ」。品番は「1316-3」。 スケール1/55が採用されて大振りになり、がっしりしたツクリですが、開閉アクションなどは全て廃止され、Sikuらしさが後退して来ました。 細かいプリントを施す技術がまだ伴わず、初期のものはスピードホイルの白いプリントだけが目立っています(上の左)。 一方裏板はまだダイキャストで、良き伝統を残しています。 後期になって、プラスチック・ホイルのものに替えられて、落ち着いた姿になりました(上の右)。やはりこのサイズのミニカーにとって、ホイルの影響は大きいのです。 Sikuは、ポルシェのポリスカーを常に、必ず商品ラインの一角に加えて来たわけですが、モデルとしてのツクリの変遷は、まさに時代の変化を表しています。 2000年から生産された、「911カレラ」(996)。 「996」は「911」の5代目モデルですが、30年以上に及ぶ改良を繰り返してきた911が、1997年に車体、エンジンともに全面的な新設計となる初めてのフルモデルチェンジを受けたクルマです。 「911の996型」ということになるのですね。マジョレットは製品名で「996」を名乗っていますが、Sikuは「911カレラ」を名乗っています。 「カレラ」というのは、かつてはレーシングモデルにのみ与えられていた名称でしたが、1984年に復活して以降は、「ノンターボ」モデルの名称として使われるようになりました。。 商品名は「Autobahn-Streifenwagen」を踏襲していますが、品番は「1316」から離れて「1416」になりました。 モデルのツクリはほぼ「1316」の「911ターボ」を踏襲していますが、裏板がプラスチックになってしまいました。テールウイングがなく、ポルシェとしてはおとなしいボディ形状をしています。 「白/緑」のカラーで出て、その後「銀/緑」となったのは、実車の塗装が変更されたためです。 2000年〜2004年が「白/緑」、2004・2005年版カタログでは銀にドア+ボンネットが緑、そしてサイドがノコギリの歯のようなドット・パターンのストライプになりました。 「白/赤」のモデルは、英語で「POLICE」と書かれていて、ドイツ以外の市場への輸出向け(EU汎用〜国際仕様版)です。2004年版カタログで登場しています。マジョレットで「インターナショナル汎用」という言い方をしましたが、輸出向け汎用ということでは、Sikuの方が先行してこういう対応をしていました。「白/緑」に「POLIZEI」という仕様は、ドイツ以外の子供たちにとっては馴染みがないからでしょう。 同じ品番「1416」の「911カレラ」ですが、「銀/緑」で銀塗装が綺麗なクロームシルバー塗装になったもの。 その後さらに2005年から「銀/青」になりました。「銀/青」タイプでもクロームシルバー塗装を踏襲しています。 EU内諸国のポリスカーは「銀/青」に統一か、という情報もあったほどで、ポーランドはドイツとほぼ同じカラーリングになりましたが、それ以上の統一化の動きはないようです。 品番「1416」のままで車種転換された「911カレラS」。 テールウイングを持った姿に戻りました。 2009年版カタログでは「1416」番のドイツ警察は先代911の金型の写真のままになっており、新製品予告なしの車種変更でした。 クロームシルバーの塗装は定着。他社製品との競合を意識して、クォリティ感をアピールするためのものかもしれません。 真ん中のモデルはホイル替えで、この頃から意識的にホイル替えモデルが出されるようになりました。 右は、オーストリア市場向けモデル(オーストリア警察)です。 左は品番「1416」のままで車種転換された「ケイマン」。 これも2011年版カタログでは、「1416」番の写真は「911カレラS」のままになっており、特に新製品予告ページにも掲載されていない突然の変更でした。 右はオーストラリア警察仕様の「パナメーラ4S」。 Sikuの作った、ドイツ/オーストリア以外のポルシェ・ポリスとしては、いまのところ貴重なものです。 品番「6032」として、ランボルギーニ・ガヤルドのイタリア警察、アウディR8のドイツ警察仕様との3台セットで売られたものです。 マジョレットは「パナメーラ」のポリスの各国仕様を量産しつつありますが、いまのところSikuは「パナメーラ」のポリスはこの1台しか作っていないようです。 ポルシェは自国車ということもあって、Sikuは1960年代から、丹念にポルシェのモデルをアップデートしてきています。それを見ると、実車の変化、警察車両のマーキングの変化、ミニカーのツクリの変化を見ることができます。こういうタテの時間軸の変化を見るには、「ポルシェのポリス」というぐらいのテーマの絞り方が適切のように思います。きっとメルセデスだと数が多くなり過ぎるでしょう。 「Siku」と「マジョレット」の比較 マジョレットとSIKUのモデルの掲載が完了したところで、いつもの意地悪な試みとして、Sikuとマジョレットを比べてみましょう。 まず、Siku最新の「ケイマン」(左)と、マジョレットの「996」(右)、ともにドイツ警察です。 Sikuは1/55統一スケールを標榜しているので、マジョレットより若干大き目。 シルバー塗装が粒子の細かいクロームシルバー調であり、ホイルも彫りの深いものを履いています。屋根上灯も最近の実車の装備している薄型のもので、車体との大きさバランスがとれています。 これに対してマジョレットは、ホイルはホットスタンプ形式、屋根上灯も大き目です。 続いてオーストリア警察仕様の、Sikuの「911カレラS」(左)と、マジョレットの「911GTS」(右)。 細部の仕上げがどうこうと言うより、プロポーション、姿勢の低さにおいて、Sikuに見るべきものがありそうです。 細部の再現技術以前に、Sikuはスケールモデル志向を依然として持っており、ある程度のコストアップを覚悟で、再現性を高める、という姿勢をキープしているように思います。 これに対してマジョレットは、急速にクォリティを上げて来ましたが、コスト政策の上から、一定の水準以上は「めざさない」と言う姿勢がはっきり感じられます。細部の仕上げはある程度のところで止める、その分を塗装やプリントの技術でカバーする、ということでしょうか。 ヨーロッパでの競合状況 Sikuとマジョレットの、ヨーロッパでの人気、価格、販売チャネルなどはどうなっているでしょうか。 この点について、交換相手であるオーストリアのアーノルト・ベルントに少し聞いてみました。 まずSikuは、オーストリアではホビーショップ、ドラッグストア、トイザラスなどで、回転式のスタンドなどを使った、非常に専門的なディスプレイを行っていて、スーパーマーケットには置かれていないそうです。 これに対して、マジョレットは、ドラッグストア、トイザラスのほか、スーパーマーケットにも置かれていて、その売り場コーナーは、Sikuほど「プロフェッショナルなものではない」ということです。 ドイツでは、Siku(ズィーパー・ヴェルケ)および現在マジョレット・ブランドを保有するズィンバ・ディッキー・グループ双方のお膝元ですが、状況はオーストリアとそれほど違わないということです。大きな百貨店では両方のブランドを置いており、もちろんトイ・ショップでも購入できるそうです。この「両方のブランドを置いている」という点が、なかなか重要かと思います。 Sikuは今年値上げをしたそうで、商品の主力が農業トラクターやラジオコントロールのレーシングカーなどに移り、緊急車系の新製品がめっきり減ってしまいましたが、農業トラクター系の商品は、依然として高い人気があるようです。 マジョレットはクォリティを上げて来ているものの、Siku製品の本来の強みは、3インチ・サイズの単品乗用車ではなくて、可動部をふんだんに盛り込んだトラック、トレーラー、クレーン、建機などの「長尺モノ」に伝統的な強みを発揮してきました。これに対してマジョレットは、フランス時代から3インチ・サイズの乗用車がむしろ主体でしたから、このあたりの製品ラインの考え方がそもそも違うとも言えます。3インチ・サイズの単品を基準にしては、両ブランドの違いは語れない、ということかもしれません。これも、私としては忘れていた視点です。 マジョレットは、特にポリス・モデルはコレクターの間では人気があるようですが、しかし例えば「オーストリアでは、スウェーデン警察のモデルは買えない」という状況にあるようです。
価格については、Sikuはやはりマジョレットより高い設定、しかしちょっと意外なことにマジョレットはマッチボックスやホットホィールよりも高いそうです。 ヨーロッパのコレクターにとっては、「3インチ・サイズ」(1/64サイズ)というのは実は「主流」となる領域ではなく、特にドイツでは、スケール性の高いものが好まれる傾向が強いと言えます。小スケールでは、1/87が好まれて来ました。 これは私も実感している点で、例えば、交換アイテムとしても評価されるのは「トミカ・リミテッド・ヴィンテージ」のようなモデルです。 彼の感想では、ホットホィールはごく一部のスケール性の高いものを除いてはクレイジーなものが多く、またマッチボックスはボディがプラスチックになってしまったことに加えて、新製品を見つけるのは困難になって来ているとのことです。 マジョレット製モデルは、今後彼のコレクションにとっても増えていくだろう、ということでした。 Sikuとマジョレットは、商品ライン、価格、販路などで、絶妙な違いをつくりながら棲み分けを続け、案外マッチボックスやホットホィールが苦戦をすることになるのかもしれません。 そもそも日本では、ある程度体系的な輸入があるのはSikuだけと言える現状ですから、ダイキャストミニカーの市場は、今後ますます、国と地域によってかなり違った嗜好と状況を呈するようになるのかもしれません。(2016/10/30) |
「ポルシェ」の4回目の更新です。今回はフランス〜ドイツのブランドでその後に入手したものや、未紹介のブランドを拾いつつ、ヨーロッパの他のブランドのモデルをアップしたいと思います。 マジョレット(ソニック・フラッシャー)928 マジョレットのソニック・フラッシャーの色違い2点を入手しました。 以前にアップしたのは、グリーン・ボンネットに「POLIZEI」のドイツ仕様でしたが、今回は、青ボンネットに「POLICE」の英語(仏語)仕様と、白黒の「警視庁」マーキングです。 ポルシェ928に「警視庁」というのは、何とも架空系塗装の極致で、誰かがカスタムしたものかと思うほどですが、「警視庁」の文字、ボンネットの警察マークともに直接印刷されており、市販品のようです。 やはりポリスカーは、その国の仕様にしないと、子供たちに受け入れられにくいのでしょうか。 マジョレット(インターナショナル版) なんと! マナメーラのポリスが、カバヤ版で日本国内でも発売になりました。 カラーは銀/青のドイツ仕様、プリントは英語「POLICE」のインターナショナル汎用版になっています。 日本では白黒の日本警察仕様だけが売られるのかと思っていただけに驚きです。 Siku パナメーラ4S 「Sikuはオーストラリア仕様の1台だけしか、パナメーラのポリスを作っていない」と書いたのですが、これは誤りで、小売チェーン特注品のポリスセットの中に、ドイツ警察仕様のパナメーラが入っていたのを忘れていました。 VEDES(フェデス/ヴェデス)という、ドイツ本社のトイ・ストア・チェーンが3000個限定で制作・販売した、「ポリス」セットで、2011年末〜2012年年初の発売と思われます。 メルセデス・ベンツ・ニューシュプリンター・BAG(物流を所管する連邦政府の機関)人員輸送車、VW・シロッコのポリツァイとの3台セットでした。 VEDESは、ニュルンベルクに本社を置き、ドイツ/オーストリア/スイス/イタリア/ルクセンブルク/オランダ/ハンガリーに1000店舗を展開します。(http://www.vedes.de/) VEDESはドクターカーの3点セットも作っています。 シュコー「911S」 Siku以外のドイツのブランドにいきましょう。これはシュコー(Schuco)、「911S」。 1/66統一スケールの「800シリーズ」中のもので、全長61mmしかありません。1971年発売のヴィンテージです。 ドクター・エドワード・フォースのバリエーション・リストでは、他のバリエーションはありませんが、ホイル違いがあるかもしれません。 屋根上の「POLIZEI」マーキングは水貼りデカールなので、一部が剥げたり、完全に脱落してしまったものも多いです。屋根上灯があるので、デカールがなくなっても「ポリス」であることはわかりますが。 小さいながら、両ドア開閉アクションを持ち、シャープなモールド、精巧なホイルを履いた佳品です。 カラーは白1色ですが、高速隊を中心に、70年代に入っても白1色の車両は使われていたようです。 逆に白/グリーンに塗り分けた車両は50年代から登場していて、「白1色の車両は白/グリーン塗り分け以前のもの」とは言えません。 ファーラー(Faller)「911」 ファーラー(Faller)、911。品番「3475」。 「数は要らない。いいものが少しだけあればいい。」で、「AMS」(Auto Motor Sport/アウト・モートーア・スポルト)シリーズのVW-T1救急車を掲載していますが、AMSシステムが道路から終電する電動カーであったのに対して、こちらは「Hit Car」というシリーズのもので、モーターは入っておらず、通常のスピード・ホイルを付けたミニカーです。 1963年にスタートした電動の「AMS」シリーズより後発で、1969年から1979年に売られました。 余談ですが、「Sport」の発音で、ドイツ語では通常は子音の前の語頭の「s」は「シュ」になるのですが、「Sport」については「スポルト」なのですね。外来語系ということなのでしょうか。 それとドイツ語では名詞のアタマは大文字にし、形容詞だったら小文字です。 カラフルなプラスチック製の道路パーツで走路を組み上げ、その上をスピードホイルで走らせる仕組みでした。ミニカーは「カタパルト」で射出します。直線・曲線のほか、クルリと一回転するループ走路などもありました。ホットホィールと同じ仕組みであり、ホットホィールより後発の商品だったのでしょう。 ボディはAMSと同じようにプラスチック、無塗装でヴィーキングのように金型を磨き上げた仕上げです。 裏板はダイキャストです。シートも付いています。裏板をダイキャストにしてあるのは、走行にあたって一定の重量(=運動エネルギー)が必要だったためでしょう。 屋根上の「POLIZEI」は、シールやデカールではなく、プリントです。裏板に車名の表記はありません。 ポルシェで言うと、「904」、「914」、「914カブレオレ」、「917」など、豊富にモデル化されています。シリーズのコンセプトから言って、ラインアップにスポーツカーが必要だったからでしょう。 モデルは小振りで、まるで「356」のようにコロンとしていますが、モールドは非常にシャープで、Sikuの初期モデルや、シュコーなどと並べておくことのできる佳品です。これも好きなモデルのひとつになりました。 ミニカーのプロポーションには、ファーラーとしてのこだわりは感じられますが、鉄道模型のレイアウトにアソートするというよりも、明らかに玩具のシステムとして企画・販売された商品です。 「Hit Car」のシリレーズはそれなりの数が生産されたと思われ、現在でもドイツのネットオークションには走路セット、ミニカーを含めてかなりの数が出ています。 ダルダ「911」 ドイツの「ダルダ」(Darda Motor)というメーカー。 プラスチック製ボディで、スケール1/60を表示。プルバック・モーターを内蔵しています。 いわばドイツ版「チョロQ」ですが、チョロQとの違いはデフォルメが強くないことと、「ダルダ・バーン」というプラスチック製の走路を走らせるシステムになっていることです。 「バーン」は、「アウトバーン」「ドイチェバーン」のバーンで、線路、軌道、走路のことです。 「モデルカー」というより「Toy」のカテゴリーに入る商品で、したがってネットで検索する時も「Auto- & Verkehrsmodelle」(Car & Traffic Models/ダイキャストを中心としたスケールモデル)のカテゴリーだとあまり出て来ませんが、オールカテゴリーに拡大すると、走路セットなども含めてたくさん出て来ます。 ドイツをはじめ欧米では、HOスケールのモデルは「鉄道模型アクセサリー」に入っていたりすることもあるので、検索にはちょっとした機転が必要な場合があります。 いかにも、ドイツでしか売っていなさそうで、珍しいです。高価なものでなくても、こういうものがいいんですね。 白/緑の911は、オーストリアから交換で送られて来て、喜んだのですが、それがきっかで物色し、他のポルシェも見つけました。 これは銀/青の911・GT3。屋根上灯がバーランプになり、テールウイングを付けています。 物色した結果の、911タルガ。70年代製と説明されていました。 さらに見つけてしまった、911タルガのオランダ警察仕様。 ドイツから買いましたが、「Sondermodell」(ゾンダーモデール)と書いていました。スペシャルモデル、限定品・特注品ですね。 ノレブ「997カレラS」 次にフランスのブランドです。ノレブの3インチシリーズ、「997カレラS」。 ベルギー警察仕様で、ベルギーの小売大手の「コルルイ」社(Colruyt Group)が展開する、「ドリームランド」というトイ・ショップ・チェーンで売られた緊急車3点セットに入れられたもの。 3点の組み合わせには、ヘリ、救急、消防など、色々なものがあるようです。 オーストリアの交換相手が送ってくれて、当サイトに掲載していた別のセットをオランダの消防士が発見し、「こんなのがあるんだ…」ということでベルギーまで買いに行ったそうで、余分に買ってきてくれたそのうちの1セットを入手したものです。トミカの消防ギフトセットで、彼が持っていないというものと交換しました。 こうして書いていると、それぞれに入手した時の記憶が蘇ります。その意味でも、テーマは絞っていた方が、ひとつひとつに思い出ができます。 全長で79mmほどあり、Sikuやマジョレットより少し大きい感じです。これはポルシェに限らず、ノレブの3インチ・シリーズ全体に言えることです。ただしSikuのパナメーラは、これよりさらに大きいですが。 全くの主観ですが、ノレブの方が、マジョレットよりも「フランス」の空気感が残っているような気がします。ギフトセットの車種選択や、パッケージなどでそれを強く感じます。「マジョレット」にはもはや「フランス」を感じず、多国籍=無国籍化しつつあるように思います。古いマジョレットのプジョーやシトロエンには、もっと「空気感」がありました。 同じノレブの「997カレラS」ですが、これはシルバーにグリーンのドイツ警察仕様。 ドイツのネット上で出ていたのをたまたま見つけました。 ルースの単品、この1台しか見かけなかったので、これもセットに入っていたものかもしれません。 裏板もダイキャストでシルバーに塗られており、やはりプラ裏板のモデルより重厚感があります。なかなか、いいモデルです。 エフシ「911S」 ここで、独・仏を離れて、ヨーロッパの他の国で作られたモデルに行きます。 まずオランダの「エフシ」(efsi)、「911S」、品番「402A」 全長60mmの小さなモデルで、シュコーよりさらに小さいものです。 車体前・後に、オランダ語「POLITIE」と書いた、蛍光オレンジの紙シールを貼っていて、これは少し遊ばれたら剥がれてしまう運命にありそうです(右のモデル)。 品番「402」でシビリアンのスポーツカー(赤とメタブルーの2種)、「402B」でラリーカー(金と黄色の2種)がありました。ポリスは白ボディだけですが、左のモデルのように、前後にデカールを貼ったものもあります。シール違いもあるかもしれません。 特に左のモデルでは少々チップがありますが、このクラスのバリエーションになると、キズがあるとか、箱がないとか、そんなことは気にしてはいられません。デカールが残っていれば上等というものです。 現在市場で見かける確率としては、紙シールのものよりデカール貼りの方が少ないような感じで、かつデカールが剥げているものも多いようです。 先日、オランダ語の映画を見ていたのですが、警察(POLITIE)は、カタカナにうつすと「ポリティ」でいいようですが、実際の発音ではポリティでもポリツィでもなく「ポリチ」と聞こえました。 コーギージュニア・「911カレラ」 裏板は「ポルシェ・カレラ」のみの表記で、1976年から1980年の生産。 左は品番「37-B1a」でシートの赤いもの、右は「37-B2」でシートの黄色いものです。 最近でこそ、英国ポリスでもポルシェの導入の動きはあるようですが、1970〜1980年代に英国でポルシェがポリスカーに使われている実車写真というのは出て来ません。おそらくは、「80-A」として1974〜75年に生産された、民間スポーツカーのポルシェに「POLICE」シールを貼りつけたものと考えるのが妥当でしょう。 メットトイ・コーギーとしては末期のもので、紙シールがぞんざいに貼りつけられています。 シュコーなどが小さくても「モデルカー」の佇まいを持っているのに対して、「トイ・カー」に徹した商品と言えます。 後、1982年10月から1983年に「139-A」の「Porsche Carrera Turbo」となり、「Shell」「TURBO」ロゴを付けたものなども作られました。また金型はマテルの手に渡り、ホットホィールブランドでも銀メタなどの塗装で生産されています。 1984年フランクフルトモーターショー以降、「カレラ」はノンターボモデルの名称となりますが、この時点で「カレラ・ターボ」ということはあり得るのでしょうか。ただしホットホィールでは「カレラ・ターボ」は名乗っていないようです。 これは同じシールのホイル違い。この方が、出て来る数は少ないようです。 側面のラベルを蛍光オレンジの別デザインにしたもので、品番は「37-B4」。 このタイプのシールを貼ったものは、あまり出て来ません。 オレンジのシールは、オランダ仕様を意識したエフシのものと似ていますが、必ずしもオランダ向けということではないようです。 ドイツ向け「POLIZEI」仕様としたもの。品番「37-B5」。 ボンネットのグリーンは塗装ですが、ドア・サイドはグリーンで印刷した紙シールを貼り付けてあります。(左のモデル) コーギー・ジュニアは、メットトイの末期には、ドイツ仕様にしたものが増えて来ます。 他ブランドとの熾烈な競争の活路をドイツ市場に求めたのでしょうか。と言うより、販路を少しでも拡げたかった、という気持ちが伝わって来ます。 右はメットトイ・コーギー終焉後のモデルで、「Corgi Toys Ltd.」によるもの。 品番は「J-69」で、1988年1月の発売。 コーギージュニアでは、メットイ終焉後のものは品番の頭に「J」を付けて区別します。 パッケージの著作権表示は1984年ですが、これは著作権が「Corgi Toys Ltd.」に移った年、ということでしょう。 屋根上灯が廃止され、裏板がプラスチックから、黒塗装されたダイキャスト製のものに変わります。 ドア・サイドも紙シールではなくプリントになり、ボンネットにも「POLIZEI」の文字が再現されるようになり、落ち着いた黒シートと透明クリアのウインドを付けています。パッケージには「911」が明記されるようになっています。 仕上げとしてはメットトイ末期のものから見れば向上しました。 製品のクォリティをキープするには、やはり経営が安定していることが大事のようです。 コーギージュニア・「911 SC タルガ」 メットトイ終焉後の「Corgi Toys Ltd.」時代の製品。品番は「J99/02」。 1989年頃のもので、「911カレラ」とは別金型の「911 SC タルガ」を、オランダ警察仕様としたもの。 オランダ警察は「356」の時代からポルシェを導入しており、「911タルガ」も実際にを運用していました。「16」番を付けた車両の写真も残っています。 ボンネットおよびドア・サイドのマーキングは、シールではなくプリント。 裏板はプラスチックですが、なかなか良いデキです。 オランダ警察の911タルガ、「ダルダ」(左)と「コーギージュニア」(右)のツーショット。 コーギージュニアと同じ「16」番を付けている実車の写真を引用させてもらうとにします。 ドイツ警察の356もそうですが、こういう場合、3インチサイズでは、横に付けられた警光灯が再現できないのですね。 ところで、フロントに書いてある文字ですが、ずっと実車写真を見て「RUKSPOLITIE」と読んでいたのですが、2つ目の文字は2つに分かれていて「IJ」だということに気が付きました。「RIJKSPOLITIE」です。アムステルダムの国立美術館を「RIJKSMUSEUM」と言っているので、「RIJKSPOLITIE」は「National Police」の意味です。「地方警察」に対する「国家警察」ですね。オランダ語は発音できないですが、たぶん「ライクス・ポリティ」、ドイツ語だと「Reichs Polizei」ということかと思います。 ドイツでは、「Reichs Polizei」(ライヒス・ポリツァイ)は、第2次世界大戦終結までの名称なので、戦後は連邦警察局を「Bundespolizei」(ブンデスポリツァイ)と言い、「国家警察」(Reichs Polizei/Stadtpolizei・シュタットポリツァイ)という言葉は存在しません。 ダルダ、コーギージュニア、ともにボンネット上のプリントはちゃんと「RIJKSPOLITIE」になっています。(2017/3/4)
マジョレット・「パナメーラ」(スウェーデン警察) 今回の「本題」は、「ヨーロッパ以外のブランド」のポルシェ・ポリスなのですが、その前にマジョレットの追加入手分を1台アップさせてください。 「パナメーラ」のスウェーデン版で、MAN-TGS「かご」付はしご車、ルノー・マスターの黄色の救急車とセットになっていたものです。パナメーラの単品ブリスターも出ているかもしれませんが、スウェーデンからの入手なので、この際そんなことは言っていられず、押さえておくことにしました。 オーストラリア版のパナメーラも出ているはずですが、結局時期を失してしまったようで、現在オーストラリア版の3台セットに入れられているポリスは、パナメーラではなく、マスタングになってしまいました。 「eBay」オーストラリアも見に行ったのですが、パナメーラは出ていませんでした。これでは仕方がありませんね。 ウェリー(Welly)・「911-930」 ホンコン・ベースのブランドであるウェリー。 裏板には車名の表記は何もありませんが、テール・ウィングを付けており、ターボ・モデルである「930」としておきましょうか。 1/18や1/24モデルを作っている現在のウェリーのクォリティとは比べるべくもないような、古い時期のものですが、プリントでドイツ警察仕様になっているところがミソです。ドイツのネットオークションで複数見ることのできるモデルで、ドイツから入手しました。 高価なミニカーではないが、他の地域では売っていない、という、こういう佇まいも良いものです。 ウェリーが、早い時期からドイツのマーケットを重視していたことをうかがわせます。 ヤトミン(Yat Ming Road Signature 1/72)・「911」ターボ ヤトミンの911ターボ。 1/72スケールを標榜する小さなモデルですが、各国マーキングのものが作られました。 1/87・プラスチック製のモデルはコレクション対象からはずしていますが、このモデルはダイキャストですし、後からでは揃えるのがむずかしくなりそうなので、戦列に加えました。黒プラスチックの展示台にビスどめされて売られました。 裏板のマークは「RS」になっており、つまり「Road Signature(ロード・シグネチュア)」のイニシァルです。 上の画像の左、チェッカーのストライプを付けるのは、オーストラリア警察。 右の、赤・黄・青の3本ストライプは、カナダの騎馬警官隊(RCMP/Royal Canadian Mounted Police)。 「GRC」のプリントもありますが、これはフランス語表記で「Gendarmerie royale du Canada」、英直訳は「Royal Gendarmerie of Canada」となります。 左の、「POLICE」を「警・察」の文字ではさんでいるのは香港警察。 右の、スカイブルーと白の塗り分けは韓国警察。これはこれで珍しいモデルではあります。 左の、赤と青の斜線の警戒塗装はオランダ。 右の、ブルー1色はフランスの国家憲兵(ジャンダルムリー)です。 白・緑の塗り分けはドイツ。 セットで入手したわけではなく、また同じシリーズにBMWやアウディのポリスもあるのですが、ポルシェに関しては、これで全種なのではないでしょうか。 ヤトミンは、香港の会社で、創業は古く1970年。 創業者の名前がウェイ・ミン・ラン(Wai Ming Lam)と言い、「Yat」は中国語で「最高」または「No.1」の意味で、これを組み合わせて社名にした、ということです。 しかしこの説明は英文で見ており、かつ香港で話されているのは広東語なので、「Yat」というのが果たして漢字で書くと何のことなのか、わかりません…。 漢字1文字で「Yat」という音は出て来ないように思うので、「圧倒」(Yadao・ヤー・タオ)、「他を圧倒して打ち勝つ」あたりが近いかもしれません。ただしこれは北京語の発音ですが。 リアルトイ「911カレラS」 やはり香港拠点の「リアルトイ」。 既に30年以上の歴史を持つようです。 「アクション・シティ」は、リアルトイの独自ブランドであり、「ファスト・レーン」は「トイザらス」向けのブランドのようです。アメリカの「ウォルマート」には「キッド・コネクション」というブランドでの商品を提供しているようです。 このモデルは、ルース状態で入手したため、パッケージのブランドがどうなっていたかはわからず、裏板は単に「REALTOY MADE IN CHINA」になっています。 珍しいイタリア警察仕様で、こういうものを作って欧州で売ってきたのか、と思わせるモデル。 何と、ブルガリアの出品者から入手しました。 リアルトイは、「911カレラS」のほかにも、「911 GT3」「ボクスターS」「パナメーラ」「カイエン」といった金型を持っているようで、きっと他にも、各国市場向けのポリス仕様が作られていることでしょう。 ホットホィール・「930」 珍しい、ホットホィールの作ったポルシェ・ポリス。 1989年初出の「930」の金型です。 「サイボーグシティ」と名づけられたファイブ・パック(5台入り紙箱ギフトセット)の中に入れられたもの。 何故珍しいかと言うと、アメリカでは彼らのプライドとして、ハイウェイ・パトロールではマスタングやカマロが使われますから、「ポルシェ」の出る幕はなく、したがって子供たちにもポルシェのパトカーは必要とされないからと思われます。 マイスト・「911 GT2」 マイスト製の「2008年・911 GT2」。 英文「Highway Patrol」をプリントした堂々した「アメリカ」仕様なので、これも上記の理由から言うと珍しいモデルのひとつです。 「Design Authority」というシリーズのもの。 このシリーズでは、55年のビュィック・センチュリー、65年のポンティアックGTO、68年のカマロ、70年のシェビー・ノヴァ、71年のカマロ、2014年コーベット・スティングレイ、2015年マスタングなどが作られていて、めでたくポルシェもその仲間入りをしたわけです。シリーズにはなんと、グリーンのVW-T1バスも入っています。 Sikuやマジョレットなどとは作風が違いますが、良くデキています。 「マイスト」(Maisto International、Inc.)は、本社をカリフォルニア州・フォンタナに置いており、「アメリカの会社」とも言えるのですが、出自と、帰属するグループは香港にあります。 マイストのホームページを開けると、「May Cheong Group(美昌集団)」の表示があり、「マイスト」と「b-burago」のロゴがあります。 80年代・香港の「MC-Toy」(May Cheong Toy)を起源とし、様々なブランドでダイキャスト・モデルを生産しました。 「美昌」は北京語では「メイ・チャン」(mei3 chang1)なので、「May Cheong」もとりあえず「メイ・チャン」と読んでおきましょう。 トミカ・「356」 さて、「トミカ」に入ります。 「AOKI(アオキ特注)」とされており、箱には「Miniature Porsche Museum」の印刷がありました。 ドイツでは、356A、356Bなどが、1956年〜1962年ぐらいに実際に運用されています。 ロールバーも何もない、カブリオの状態で、横転事故などに対しては乗員は無防備だったことでしょう。 青灯については、フロントウインドのフレームの運転席側に支持架を作ってその上に載せているようで、さすがにボンネット上に載せている写真はありません。 空冷リア・エンジンですから、ボンネットの下にはエンジンは無いわけですが、これではボンネットが開きませんね。これは912、914のタルガ系のモデルでも同じです。 ミニカーでは、屋根が無くで行き場のなくなった青灯を、パトカーらしさをキープするために付けておいてくれたものでしょう。サービス精神の表れと解しておきましょう。このサイズで356・カブリオのパトカー・モデルは無いですから、貴重な存在です。 ちなみに、Siku製のクーペ・モデルと、ツーショット写真を撮ってみました。 トミカ・「911S」 トミカは、1976年の4月という、大変に早い時期に、ポルシェのポリスカーを作りました。 それも白ボディに「POLIZEI」という、シュコーやSiku、ファーラーなどがモデル化したものと同じ姿です。 ポリスカーでない乗用車の911Sの発売も1976年4月で、同時期の発売でした。 Fシリーズ(青箱)のスタートがそもそも1976年4月であり、バリエーションモデルを作って商品ラインを増やす必要があったのです。 F16-1-1がボンネット/サイドともにシール、F16-1-2は、ボンネットのみタンポ印刷になるようです。 右はF16-1-6で、マーキングは全てプリントになり、サイドに「379」の番号が加わりました。 ボンネット上にプリントはありません。 ボンネット先端をオレンジに塗っているのは、コーギージュニアやダルダもモデル化した、オランダ警察の仕様。 トミカは、早い時点でF16-1-7としてバリエーションに加えています。 ボンネット上のマーキングはシールですが、「RIJKSPOLITIE」の文字を正確に再現しています。 右のF16-1-9は、文字はドイツ語「POLIZEI」ですが、オレンジのラインを入れており、ドイツ警察ではありません。ドア・サイドにチューリヒ市の市章を入れており、スイスの警察車輌です。 ダンディ・カドーで、1979年に1/43ビートルのチュリーヒ市消防が作られていますが、このモデルと同じ市章がプリントされています。 実車画像は確認していませんが、ボンネットには「ZH」で始まる、チューリヒの車輌登録番号が入っています。当時これがスイスの車両だとは、誰にもわからなかったかもしれないですね。 左はF16-1-8で、Sikuのモデルのように、ボンネット上にアルファベット2文字のコールサイン(地域コード)を入れた、ドイツ警察仕様。「世界のポリスカーセットA」に入れられたもの。これもボンネット上のマーキングはシールです。 地域コード「DT」は、「Detmold & Lippe」(デトモルト・ウント・リッペ)、ノルトライン・ヴェストファーレン州(Nordrhein-Westfalen)の「リッペ」という地域、およびその中の「デトモルト」という都市のものです。 チューリヒ市警察もそうですが、この頃、トミカの企画スタッフの中にはポリスカー好きの人がいたことがわかります。大事なことです。 「世界のポリスカーセットB」に入れられたものも「DT-3643」のマーキングですが、シート色が「赤」(R)ではなく「朱赤」(CR)のようです。 右はF16-1-8で、ボンネット上には地域コードはなく、「POLIZEI」の文字のみです。グリーンの色調も深いものになっています。 F16-1が絶版になった後、かなにりの期間を経て「イベントモデル」として再生産されたもの。 70年代のモデルは、フロントのバンパー下の「アゴ」の部分がボディ側ではなく、裏板側に付いていたため、ボディと同色にならず、正面から見た印象で損をしていたのですが、再生産品ではこれがボディ側と一体となって、ボディと同色で再現されるようになりました。 屋根上灯も中心に1灯になりました。 塗装も近年のドイツ警察の銀/緑のものになっています。単なる色替え復刻にとどまらない、こういうアップデートは嬉しいものです。 トミカで作られた日本警察仕様については、このつぎ、掲載することにいたします。(2017/6/3) 3インチ・サイズのポルシェのポリスカーも、今回で手持ちの分は全てご紹介することになります。 最後に、トミカの日本警察のモデルを掲載することにしましょう。 トミカ・「911S」 F16-1-3(左)が、小田急特注「神奈川県警」。 F16-1-4(右)が、横浜高島屋特注「神奈川県警」。こちらは小田急と塗り分けが違い、テールランプ部分まで黒塗装が回らずに、塗り残してあります。白/黒塗装の境界位置が、小田急よりも低くなっていることがわかります。 神奈川県警では、1968年に「三和自動車」からの寄贈を受け、実際にポルシェを導入しました。 1968年4月に、東名高速の東京IC─厚木IC間が開通したためです。 ただしこの車両は、911ではなく、912だったことはご存知の通りです。 トミカの911の発売は1976年ですが、神奈川県警は1974年まで「912」を運用し、退役後も神奈川県警察学校のロビーにこの車両を展示していたので、記憶に新しいこのクルマが、県内の2百貨店の特注品として再現されたというわけです。小田急百貨店は本店は新宿ですが、小田急電鉄自体は神奈川県に路線を持つ鉄道です。 ほぼ同時期に導入された912はあと3台あります。 -京都府警 (1967年・損害保険協会から寄贈) -愛知県警 (1967年・損害保険協会から寄贈) -神奈川県警(1968年・三和自動車から寄贈) -静岡県警 (1969年・交通事故リハビリセンター韮山温泉病院から寄贈) このうち、神奈川県警・愛知県警の2台は、近年になって「トミカ・リミテッド・ヴィンテージ」から、「912」のモデルとして再現されました。 トミカ・リミテッド・ヴィンテージ「912」 神奈川県警のものは前面に赤色の警光灯が2灯あり、添付の部品を取り付けるようになっています。またリアのナンバープレート右に、後ろ向きにラウンドスピーカーがあります。 愛知県警は、前面警光灯なし、リアのラウンドスピーカーはエンジンフード上にあります。 これらは、就役していた実車の状態をほぼ正確に再現しているようです。 愛知県警の車両は、名神高速道路に配備された車輛です。 神奈川県警のモデルと同様に、前面警光灯のパーツが付属していますが、箱のイラストレーションのように、実車はこれを付けていないようなので、取り付けていません。 前面警光灯は微小なパーツで、ランナーから切り離して接着せよ、という指示ですが、ピンセットで強くつまみ過ぎてピョンと飛ばしてしまったらアウトです。瞬間接着剤の先にノズルを付け、ボディ側の穴に微量をたらして接着しましたが、「トミカリミテッドヴィンテージ」は完成品モデルのシリーズのはずですから、こんなことをユーザーにさせる、というのはちょっとどうかと思います。「精密モデル」おおいに結構ですが、モノとしての強度等を含めて、お金を払うユーザー本位のものであってほしいと思います。 トミカ・「911S」 トミカの「911S」に戻りますが、もうひとつF16-1-10で、新潟県警シールのものが作られました。 新潟県警・高速隊は、1978年(昭和53年)に、911SCを導入しています。1978年9月21日に、北陸自動車道・新潟黒埼IC(当時)─長岡ICが供用開始されたためです。。 トミカのF-16-1の発売は1976年4月ですから、生産継続中に、新潟県警での導入を迎えたのでしょう。実車も911であることから言うと、「新潟県警」版が一番「正確」な姿をしていることになります。 私はてっきり「トミー新潟営業所特注」かと思っていましたが、森山リストにはそういう注記はないのですね。「神奈川県警」のシールが添付されたものは小田急・高島屋特注品ですから、トミーによる日本警察仕様は、この「新潟県警」仕様のみ、ということになるでしょうか。 一方F16-1-12で、トミー「パトカーフェア」用に、「47都道府県シール」を付けたものが売られました。 ただし全国47都道府県警察でポルシェが使われたわけではありませんから、「911」「912」の違いを無視するとすれば、「京都」「静岡」あたりがふさわしいことになるでしょうか。 もちろんこのシールは、自分の住んでいる地域のパトカーを作れる、ということに眼目があったわけですから、架空の仕様にするのが正しい楽しみ方であると言えます。 ウインドと屋根上灯が、妙な黄色になっています。 添付されていたフェア用のシールは、「静岡」「県警察」という分割になっており、またリアに貼る分は用意されません。 上の画像では、ドアの開閉位置に合わせるため、パソコンで似たフォントのものを出力し、「静岡県」「警察」の分割にして貼ってあります。 トミカ「959」 「959」は四輪駆動システムを採用しており、そのためにパリ・ダカールやル・マンに出走しましたが、これを贅沢にもポリスカーとして採用した国がある、という話は聞いたことがありません。もちろん「警視庁」をはじめとする日本警察での採用もありません。 品番106-2、1988年7月の発売。マーキングはシールではなく印刷ですが、フロントの警察マークはありません。生産数がそれほど多くなかったのか、子どもたちが遊んでしまったのか、あまり出て来ないモデルになっています。 これは、中国製・ノーブランドの911系、「警視庁」仕様。 「ユージン」の商品で、パトカー2台と警察官フィギュア、コーン、標識などとセットになっていたもの。リアのフェンターのふくらみ方からすると、「993」ぐらいなのでしょうか。なかなか端正な姿をしています。 全国に流通させる品物としては、「神奈川県警察」などというマーキングにすることは色々と問題があり、「警視庁」が全国代表として選ばれる、という事情があるようです。 このほか、トミカ117-6の「911カレラ」を、白とグリーンの「ドバイ警察」仕様にしたものが、「LIMITED RARE」(限定・稀少)とうたって海外のネットオークションに出ているのを見たことがありますが、1万円以上(90ドル)の即決価格になっており、飛びつく気がせず、購入していません。誰が特注したものか、素性がよくわからないからです。(2017/7/16) |
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