Nostalgic Patrol Cars Season 2

VWの消防車


Der Volkswagen im Dienst der Feuerwehr








「数は要らない。いいものが少しだけあればいい。」のページで扱っているVWの救急車のモデルを探すにあたって、例えば「Tekno Volkswagen」「GAMA Volkswagen」といった入力をするのですが、そうすると救急車だけでなく、消防もヒットしてしまうのですね。

特にテクノ、ガマの、古いVW-T1の消防車輛…。
はしごやホースリールを積み込んだ姿も魅力的ですが、こういったVW-T1の現役時代に作られたモデルたちは、時期的にも入手できる「最後のチャンス」とも思えました。
「稀少なもの、今を逃すと今後の機会が失われてしまいそうなものから入手する」というのがコレクションの鉄則ですから、対象を絞って入手することにしたのです。

もちろんこれらはただの「口実」であって、やはりモデルそのものに、それだけの魅力があったのだと思います。それがこのページを作ることになったきっかけです。
「救急車館」の表紙のところに、既にテクノの消防車モデルが2台写っていました。

「VWの消防なら何でも」取り上げる、というわけではありません。
そして、VWのトランスポールターたちが、いかに活用されてきたかをご覧いただく機会にもしたいと思います。


LITERATURVERZEICHNIS
-Michael Steinke: Typenkompass VW Bus/Transporter 1949-1979 Band 1,Motorbuch Verlag 2003
-Udo Paulitz: Der Volkswagen im Dienst der Feuerwehr, Beschtermuenz Verlag 1999
-Thorsten Waldmann: Volkswagen Feuerwehrfahrzeuge,Verlag Podzun-Motorbuecher 2007
-Werner Oswald/Manfred Gihl: Kraftfahrzeuge der Feuerwehr und des Sanitaets dienstes,
 Katalog der deutschen Feuerwehr; Sanitaets- und Katastrophenschutz-Kraftfahrzeuge von 1900 bis  
 heute, Motorbuch Verlag Stuttgart 1977

-Classic Miniature Vehicles of Northern Europe, by Dr. Edward Force, Schifer Publishing 2002
-Miniature Emergency Vehicles by Dr. Edward Force, Schifer Publishing 1985
-Classic Miniature Vehicles  Made in Germany with price guide and Variations List  by Dr. Edward Force,  
 Schifer Publishing 1990




テクノ#404 VW-T1 はしご車(VW-T1 Feuerwehr mit Drehleiter)




テクノは、VW-T1のモデルを熱心に作っており、救急車のみならず、カラフルなペイントのコマーシャル・バンのバリエーションをたくさん作りました。
ボディ形状もフロントウインド上の「ひさし」のないT1a、「ひさし」のあるT1bについて、バス、バン、ピックアップなどが作られています。

その中に、この「はしご車」があります。
T1bのピックアップ(プリッチェンヴァーゲン)の上にはしごを架装したもので、品番は「#404」、1959年の発売でした。(T1aの実車の生産は1950〜1955年、T1bは1955年より後になります。)

テクノの品番は年代順に付けられているわけではなく、480番台のトラック〜消防車のシリーズは、1940年代製です。またVW-T1でもより年代の古いT1aのモデルが、409番以降の品番をもらっています。
ドクター・エドワード・フォースが、「Clasic Miniature Vehicles of Northen Europe」という本を出しており、巻末にテクノの品番順リストがあるのですが、一連のT1aのモデルは「1957?」といった調子で、「50年代」としか書かれていないものがほとんどです。古いモデルについては、資料が少ないのですね。ドクター・フォースは、テクノの資料を入手したものの、デンマーク語なので困った、ということも書いています。

コマーシャルバンのバリエーションについては、期間を限定して異なるプリントのものが作られている可能性があるので、1955年に実車がT1bに切り替わった後も、T1aのバリエーションモデルが作られ続けた可能性はあると考えられます。

このT1 はしご車については、ドクター・フォースのリストではバリエーションは「ない」ことになっていますが、側面に大きく「Falck Zonen」の文字と、側面にエンブレムのデカールを貼ったもの、ドア・サイドにエンブレムだけのもの、などがあるようです。附属品類の変化まで含めれば、他にも何かあるかもしれません。



はしごは360度回転可能、仰角を付けてもその位置でとまっているように、ストッパーが付いています。このストッパーは簡単に解除もできます。

はしご部分は、いまならプラスチックを使うところでしょうが、金属板を打ち抜き、折り曲げる方法で作られています。
このはしご部分は、#485の「トリアンゲルはしご消防車」(Triangel Ladder Truck・1940年代製)と同じものが使われています。二連式にはなっておらず、伸縮はしません。部品が失われているわけではないのです。

シートやサスペンションは付いておらず、はしごのアクションに特化させています。
堅牢で、良くできたモデルです。特にはしご部分に酸化などが出ていないことに驚きます。



テクノ#409 はしごトレーラー(Anhaengeleiter)



VW-T1の牽引するはしごトレーラーには、別品番が付けられています。
こちらも1962年の発売。

箱もトレーラー個別のものが用意されていました。
#408のVW-T1と#409をセットにしたパッケージがあるかもしれない、と思いましたが、確認できていません。

VW-T1側に牽引フックがありますが、裏板にビス止めされているだけです。

はしごトレーラーは驚きのアクションを持っており、はしご基部の左側にあるハンドルで仰角(起き梯)を付けられます。
またはしごは二段伸縮で、右側のハンドルでスムーズに伸梯・縮梯します。
また、前部にあるジャッキを降ろすことができます。はしごの中心部には、何と白い糸で「引き綱」が再現されています。
実はこの糸によって伸梯・縮梯するようになっているのですね。

#404が、#485の1940年代製のボンネット型はしご車(Triangel Ladder Truck)とはしご部分を共用しているのに対して、このはしごトレーラーは、#445の「スカニアはしご消防車(「Scania-Vabis Ladder Truck)とはしご部分を共用しています。

コーギーが、「サイモン・シュノーケル消防車」で、屈折はしご車を発売したのが1964年でした。これもハンドルでシュノーケルが延伸するアクションを持っていましたが、それより2年前に、このアクションを実現していたテクノの先見性に驚きます。それも、アクションだけでなく、スケール性や堅牢さが両立しています。

全体にテクノの消防車は、はしごを伸ばし、ホースをつなげ、という子供たちが無中になるアクションを無理なく提供していた、というところに注目するべきでしょう。全体に、デンマーク(「レゴ」を産んだ国)やドイツのミニカーには、この傾向が強いのです。





テクノ#408 VW-T1消防車(VW-T1 Feuerloeschfahrzeug)




やはりVW-T1のピックアップに消防装備を架装したもので、1962年の発売。
ピックアップの上に、ボックスとホースリール2基を一体化させたユニットを載せてあります。
このユニットは、ボディ側に固定されておらず、簡単にとりはずすことができます。

ボディ左側に、3つの放口(放水口)が並んでおり、ホース側には「めす金具」が付いているので、これを放口に接続して遊ぶことができます。
ただしホースそのものは、繊維質の「ひも」のようなものです。ゴムや軟質樹脂などを使っていないために、かえって経年劣化することなく残っています。ホースリールもとりはずし可能です。




ホースリールの付いたユニットは、ホースリール側を前にして載せていますが、テクノの当時の紙箱の横に描かれたイラストレーションでそうなっているので、それに準拠しています。このユニットは簡単に載せ替えることができるので、ホースリールが後部側になっている写真も結構あります。
ユニットそのものが失われていて、単なるピックアップとして売られているものも見ました。



ホースリール後部のボックスに、赤塗装のものと黒塗装のものがあります。
ボディ左側の放口は、私の入手したモデルのように無塗装のものの他に、白いもの、黒いものがあるようです。
前面に「FALCK」のデカール、ドア側面に「FALCK」のエンブレムのデカールを貼ったものもあります。
上のモデルは、前面の「VW」エンブレムが失われているので、リペイントの疑いも残ります。VWエンブレムを省略したバリエーションがあるとは考えにくいためです。

しかし、ドクター・フォースのリストではこのモデルについてもバリエーションは「ない」ことになっています。この時期のモデルをバリエーションまで含めて体系的に集め、リスト化した人がいない、ということでしょう。「バリエーションを追う」という考え方が、ミニカー・コレクションにまだなかったのです。JMACの中島登元会長が、乗用車モデルのボディカラーの色違いを全て押さえている、ということを聞いて大変に驚いたものです。

中島登著『ミニカーコレクション・オール絶版車カタログつき』(二見書房・昭和55年)の211ページのリストによりますと、これら3点は全て日本に輸入されており、発売年次は#404・1959年、#408・409は1962年と、正確に記されています。ただしこれは日本への輸入年次ではなく、本国での発売年次でしょう。

もう50年ほども前に、私はコーギーのジャガーとシボレー・インパラの消防指令車を持っていました。しかしダイキャストの消防車はなく、日野のボンネット車型のはしご車のプラモデルを代用として遊んでいました。(あれはあれで、良くできたモデルでした。)ダイキャスト製の本格的な消防車の入手は、コーギーのサイモン・シュノーケルまで待たなければなりませんでした。

こういったテクノやガマなどの消防車は、輸入量が少なかったものか、高価すぎて買ってもらえなかったものか、当時こんなモデルは作られていないのかと思っていました。






テクノのモデルの原型となった実車を探してみる(はしご車・はしごトレーラー)

さて、これらのテクノのモデルですが、実車のプロトタイプはあるのでしょうか。
それとも自社のVWピックアップの金型を活かして、子供向けのアクション・トイに仕立てた、架空系モデルなのでしょうか。

まずはしご車から見てみましょう。
下の画像は、1955年から1963年に生産された、VW-T1bの特殊架装車(Sonderausfuerungen・ゾンダーアウスフュールンゲン)で、「26 Pritchenwagen SO11, mit Drehleiter DL10」という形式名です。

Typ26のピックアップ(プリッチェンヴァーゲン)に、マイヤー・ハーゲン(Meyer-Hagen)社製の回転式はしごを搭載したものです。「Drehleiter(ドレーライター)」は「回転式のはしご」ということで、「DL 10」は延伸時に10メ−トルになることを意味します。

マイヤー・ハーゲンは、1886年にハインリヒ・マイヤーによって創業された会社で、現在でもホーエン・リムブルクに本拠を置く消火機器・消防技術の会社(Brandschutztechnik Meyer Hagen GmbH)です。「GROLIA」というブランドを持っており、この「GROLIA」ロゴは、ドイツの消防車両の写真の中にしばしば登場します。


Typenkompass VW Bus/Transporter 1949-1979Band 1, Michael Steinke,
Motorbuch Verlag Stuttgart 2003,  p55


この車両の用途は、消防車だけとは限りません。高所作業車として、鉄道・電力・通信・道路・建設などでも使われるわけです。同種の車両は1953年から作られています。

下は、1953年のT1aに、同じマイヤー・ハーゲンの10メートル級はしごを架装したものです。
「Auto-Drehleiter Aufbau Meyer-Hagen」となっており、また「10メートルへの伸梯は、簡便に、かつ速やかに達成することができた」(Arbeitshoehen von bis zu zehn Metern konnten damit wendig und schnell bewaltigt werden)とあるので、当初はしごの回転・起倒・伸縮は、車輛のエンジンから動力を採っているのだろうと思いました。

ところが、はしごの基部の構造をしみじみ見ていると、ハンドルやギア、ワイヤーなどが見えており、どうも動力で動くような気がしません。それで調べていくと、ヘルゴラントというところ(シュレスヴィヒ・ホルシュタイン州の離島のようです)の志願消防隊(Freiwillige Feuerwehr Helgoland)の歴史的装備の説明の中に、「メッツ製・10メートル・手動回転はしご」(10m Metz Drehleiter mit Handantrieb)という説明がありました。回転式はしごは、車両の上に載っているだけで、操作は手動なのです!

「Auto-Drehleiter」の「Auto」は、「Automatisch」(自動制御の)ではなく、「はしご車」というほどの意味のようです。(「Auto」(アウト)は、シンプルに「クルマ」のことです。)



Typenkompass VW Bus/Transporter 1949-1979 Band 1, Michael Steinke,
Motorbuch Verlag Stuttgart 2003,  p29


下の写真は、1962年・同じマイヤー・ハーゲンのDL10を架装した車輛で、ノルトライン・ヴェストファーレン州のペータースハーゲンという街の志願消防隊(フライヴィリーゲ・フォイエルヴェーア)のものです。


Der Volkswagen im Dienst der Feuerwehr, Udo Paulitz
Beschtermuenz Verlag 1999, p25


次に、はしごトレーラーですが、これを「Anhaengeleiter」(アンヘンゲ・ライター)と言います。
ライター(leiter)ははしご(英語のladder)、anhaenger(アンヘンガー)はトレーラーということです。
「ae」はアー・ウムラウト、ドイツ語の変母音のひとつでaの上に点2つ、「アの口をしてエーと言う」音です。日本語環境のホームページ編集ソフト上で表示できないので、「ae」と書きます。「a"」と書いたこともあるのですが、国際的に見ると、なんかみっともないので、今後は「ae」に統一したいと思います。

テクノのモデルそのままではありませんが、下はメッツの製作による「Anhaengeleiter AL18」です。
「シェンケンツェル」という、バーデン・ヴュルテンベルク州の自治体の消防隊のサイトの装備一覧の中にありました。



Feuerwehr Schenkenzell
http://www.feuerwehr-schenkenzell.de/SZ-Fahrzeuge/AL.html


「メッツ」は、カール・メッツが創業した会社で、「メッツ・アエリアルス」(Metz Aerials GmbH & Co. KG)で、はしご車の艤装を手掛ける代表的メーカーでしたが、現在では「ローゼンバウアー・カールスルーエ」(Rosenbauer Karlsruhe GmbH & Co. KG)に社名を変更しています。
「GmbH & Co. KG」はドイツでの会社制度のひとつで、「有限責任合資会社」(Gesellschaft mit beschraenkter Haftung & Compagnie Kommanditgesellschaft)です。


1958年製なので、年代的にはテクノのモデルと概ね合っています。「AL」はアンヘンゲ・ライターの略、「18」は、延伸時に18メートルの長さ(Leiterlaenge・ライターレンゲ)になる、ということです。ドイツでは、はしご車の型式には必ずこのライターレンゲの数字が付いています。
AL18は手動伸縮式で、重量1.5トンでした。VWの車体の上に載っているはしごが手動なのですから、、トレーラーは当然手動です。

同じトレーラー式で「AL12」などもありました。
テクノのモデルは2段伸縮で、伸梯すると355mmほどあるので、1/42〜1/43のスケールと考えると15メートル級ということになります。
消防車本体に「三連はしご」等が積載できない場合に、トレーラーとして引いて行く、という使い方になると考えられます。



ここで、ドイツでの消防隊の3つに区分についてお話ししておくことにします。

-Berufs Feuerwehr(ベルーフス・フォイエルヴェーア・常備消防隊)
職業消防官によって構成される、自治体に帰属する常備消防隊。「ベルーフ」というのは「招命」と言って、その使命に神から召し出される、という意味を起源とします。

-Freiwillige Feuerwehr(フライヴィリーゲ・フォイエルヴェーア・志願消防隊)
普段は違う職業を持っている人たちが、緊急時に集まって出場する消防隊。
「Freiwellige」(女性ならFreiwelliger)は「志願兵」「義勇兵」がもとの意味で、隊員は無報酬のようですが、日本語化されている「ボランティア」よりも、もう少し強い意志を感じる言葉です。
「FF」と略され、「FF Norderstedt」とあれば、「ノルダーシュテット志願消防隊」ということです。

-Betriebsfeuerwehr(ベトリープス・フォイエルヴェーア・事業所消防隊)
-Werkfeuerwehr(ヴェルク・フォイエルヴェーア・工場消防隊)
工場などが、火災・災害に備えて設置・組織した、企業内・工場内の消防隊。
「Werk」は工場、生産設備、プラント、「Betrieb」はもう少し広く、企業、会社、事業所、です。語尾の「b」は、濁らずに半濁音の「プ」になります。

この他に、
-Bundeswehr-Feuerwehr(ブンデスヴェーア・フォイエルヴェーア・ドイツ連邦軍消防隊)
があります。ドイツ連邦軍内の消防隊です。ドイツ連邦軍の装備・施設・生命・財産に対する消防を担当します。
通常の施設では、この業務は地域の消防隊に委任されますが、軍事上の重要性、機密の保持、危険物の状況等によって独自の消防隊が編成・維持されます。
航空基地、海軍基地、訓練施設、地下施設、弾薬庫、技術センター等です。これらは海外派遣部隊であっても同様です。

ドイツは、冷戦下でワルシャワ条約機構軍と対峙していましたので、敵対的な意図のある部隊が侵攻して来た場合には、連邦軍は戦闘に専念し、消防、救命救急、患者搬送、避難誘導、戦場整理などは自治体と民間の組織で分担する、という考え方がされて来たのです。この点での大きな危機感が、ドイツの災害対策や救命救急の体制を進化させて来たとも言えるでしょう。


これで大体お察しと思いますが、VW-T1にはしごやポンプを架装した車輛は、大規模な都市の常備消防隊の装備ではなく、志願消防隊や、事業所消防隊の装備であることが多いのですね。
VW-T1の救急車は、小さな自治体など通津浦々に救急車が普及することに貢献したわけですが、消防車でも同じことが言えるのです。低い価格で、簡便に、はしご車やポンプ車が装備できる、そういうことにVWのトランスポールターは貢献したわけです。小型の車両であれば、大きな消防車が入れない路地などにも進入できる、というメリットもあります。
国民車たる「フォルクス・ヴァーゲン」は、戦後になって本当の意味で国民に貢献したと言えるでしょう。

州によって基準が違うようですが、おおむね人口10万以上の都市では常備消防隊の設置義務がありますが、それ以外の地方都市では志願消防隊が消防業務を担っていて、そのような小さな自治体であれば、こうした簡便な車輛が装備されたのです。また、常備消防隊と志願消防隊の両方が置かれている都市でも、両社の管轄地域は重複しておらず、両社の役割に違いがない、つまり常備消防隊が「正」で、志願消防隊が「副」ではない、この点が日本の「消防団」制度とは異なる点のようです。
救急医療でも、常備消防の救助隊と、民間の救助団体や会社が併存している状況と通じるものがあると言えるでしょう。

VWはドイツの車両だということで、ドイツの話をして来ていますが、テクノはデンマークのメーカーであり、デンマークでは「Falck」という組織が救急・消防業務に従事して来ました。
デンマークでも、こういったVW-T1ベースのはしご車やポンプ車が地方の小都市などで使われているようです。
(いずれ「テクノの消防車」というページを作ることを考えており、テクノ社の歴史、デンマークの消防・救急制度などは、そちらで扱いたいと考えています。)




これは、シュコーの新しいモデル。
VW-T2に回転式はしごを架装したものです。
60年近く前にテクノが作ったモデルの「精密版」というところで、実車の姿をイメージできます。
シュコーは、T2のダブルキャビン(ドッペルカビーネ)型のものもモデル化しています。


模型性の強い精密モデルでははしごは動かないかと思っていましたが、仮止めされていた細いワイヤーをはずすと、起倒・回転・伸縮ができ、これには感心しました。さすがに「ハンドルを回すと動く」というギミックはありませんが。

アルビッヒ(Albig)という街の志願消防隊(FF)のデカールを貼っています。
ナンバープレートの「AZ」は、ラインラント・プファルツ州のアルツェイ・ヴォルムス(Alzey-Worms)という地方(郡・Landkreis)のものです。おそらく保存されている実車を取材しているのでしょう。




撮影のためにクリアケースのベースからはずした途端に、左側のミラーが折れました。さらに悪いことに、折れたミラーはピョンとどこかに飛んで行ってしまい、仕方なく、HOモデル用のミラー部品の余りの中から大き目のものを選び、真鍮線を差して左右とも修復しました。結局、この作業中に反対側も折れてしまったためです。

撮影のために筆でプラの削りクズを払っていたら、今度はワイパーが取れました…。
これはもう結局、最近の中国製ミニカーは、「プラケースから出してはいけない」ということなんですね。
はしご後部には、細いゴムバンドが使われているので、これはきっとある期間が経てば、手で触れていなくても劣化して切れてしまうでしょう。「プラケースから出さなくても」このままの状態の維持はなかなかむずかしいと思います。

特にテクノや、GAMAのモデルをいじった後にこういうモデルを見ると、全く途方に暮れます。
コレクションというものは、一定の年月をかけて収集されて行くもので、かつお金をかけて購入するわけですから、20年・30年というスパンで状態が維持されることへの予想が立ちませんと、本当は成立しないわけです。

低価格の「玩具」が長期間保存されることを前提にしないのは当然なのですが、「コレクション・アイテム」をうたっているものが、「遊ばれる」ということへの強度が考慮されないために、かえって脆弱である、長期保存に耐えない、ということは極めて問題だと思います。プラ用の接着剤はプラを溶かして接着するため、接着部が脆くなることもわかっています。ですから、細かいプラ部品をチョンチョンと点接着してあればいい、というものではないんですね。

こういったモデルを作っている中国の工場は、そもそも自社製品が20年・30年という期間を経過した経験を持っていないと思われます。出荷時・購買時にカタチになっていればいい、ということではなく、「後に残って行くモデル」ということを考える余裕を持ってもらいたいものだと思います。








テクノのモデルの原型となった実車を探してみる(ポンプ車)


さて、「ポンプ」車です。VW-T1やT2にポンプを搭載した車輛があったでしょうか。

まず下の画像は、「Typ21F Feuerloeschfahrzeug(フォイエル・レーシュ・ファーレツォイク) TSF-T」です。ベースはT1b、1959年〜1963年の生産です。


Typenkompass VW Bus/Transporter 1949-1979 Band 1, Michael Steinke,
Motorbuch Verlag Stuttgart 2003,  p45


「loesch(レーシュ)」というのは、「loeschen」(レーシェン)という動詞から来ていて、火が消えるということ、「Loeschfahrzeug(レーシュ・ファールツォイク)」は火を消す装備を持っている車輛ということで、はしご車などに対して標準車・ポンプ車を意味します。「oe」はオー・ウムラウト、これも変母音のひとつでoの上に点2つ、「オの口をしてエーと言う」音です。

「Fahrzeug」(ファールツォイク)は「車輛」ですが、ドイツ軍車両モデルの洗礼を受けている方は、「Sonderkraftfahrzeug」(ゾンダークラフトファールツォイク・Sd.Kfz.)という略号をご記憶でしょう。ヒトラー政権が再軍備をするにあたり、戦闘車両を「特殊自動車」と呼んで偽装したのです。
頭の「Feuer」は「Feuerwehr」(消防隊)を略したものです。
「TSF-T」については、このあとお話しします。

上の写真の車両の特長は、ポンプが車体の外に露出することなく、車内にすっぽり収まっていることです。車体右側のスライドドアを開けて(ドイツは右側通行なので)放口にホースを接続します。
ポンプは移動可能のもので、そのまま車外に持ち出すこともできます。つまり「可搬消防ポンプ」をカステンヴァーゲン(バン型車体)に載せているわけです。

下は、同じT1bですが、年式が少し古く、1955〜58年の「Typ21F Feuerloeschfahrzeug TSF-T」です。可搬ポンプをせり出している状態がよくわかります。


Typenkompass VW Bus/Transporter 1949-1979 Band 1, Michael Steinke,
Motorbuch Verlag Stuttgart 2003,  p31


ここでドイツの消防車両の型式分類にも少しふれておきましょう。
とりあえず、いまVWの消防車に関係のありそうなものに限定します。またこれらは、時代によって区分や基準は変化しています。

-Drehleiter(DL・ドレーライター)
「はしご車」です。「dreh」は「drehen」(ドレーエン・回す・回転させる)という動詞から来ているので、回転・伸縮式はしごを搭載しているものです。単に二連・三連式はしごを積んでいるだけでは、ドレーライターとは言いません。「DL」のうしろに数字を付け、「DL18」であれば18m級、「DL23」であれば23m級のはしごを持っています。ドイツはメートル法なので、我々にとっては便利です。

-Feuerwehranhaenger (FwA・フォイエルヴェーア・アンヘンガー)
消防用途の各種トレーラーです。ホース、ポンプ、水タンク、粉末消火剤、水難救助用ボート、はしご、隊員に給食するためのフィールドキッチンなど、様々なものがあります。

この2つについては、既にお話ししました。問題は、以下の「ポンプ車」です。


-Loeschgruppenfahrzeug(LF・レーシュグルッペンファールツォイク)
直訳すれば「消火隊用車両」、消火用の基本的な装備を全て持っている車両で、つまり標準車、ポンプ車、です。

-Tankloeschfahlzeug(TLF・タンクレーシュファールツォイク)
ポンプ車に、より大容量のタンク(水槽)を搭載したもの。水利確保できない現場であっても、放水ができます。「TLF4000」であれば、4000リッターの水槽を持っています。

-Mittleres Loeschfahrzeug(MLF・ミットレーレス・レーシュファールツォイク)
「LF」より、小型の、中型のポンプ車。

-Kleinloeschfahrzeuge(KLF・クラインレーシュファールツォイク)
「MLF」より、さらに小さい、小型のポンプ車。

-Tragkraftspritzenfahrzeug (TSF・トラーククラフト・シュプリッツェンファールツォイク)
「trag」は「tragen」という動詞から来ていて、運ぶ、担う、運んで持っていく、ということ、「Kraft」は「能力がある」という名詞、「Spritze」は消防ポンプ、消化ホース(Spritzenは複数)。
「Tragkraftspritze」で「運搬可能な消防ポンプ」、つまり「可搬消防ポンプ」ということになります。それに「Fahrzeug」が付いて、移動可能なポンプを運搬する車輛、ということであり、小型最少の消防車で、主として志願消防隊の装備になります。

-Trockenloeschfahlzeug(TroLF・トロッケンレーシュファールツォイク)
「trocken」は「乾いた」という形容詞で、粉末消火剤など、水以外の乾燥した消火剤で消化する車輛です。VW-T1でも、乾燥消火剤のタンク(ボンベ)を積んだものが見られます。

-Ruestwagen(RW・リューストヴァーゲン)
日本で言うレスキュー車輛、救助車です。ウインチ、エンジンカッターなどの技術支援のための装備を持ち、それらを部隊に提供します。「ruesten」(リューステン)は備える、準備する、という動詞なので、rescueと同じ「R」ではじまりますが、「救助する」という意味はありません。「ue」(ウーウムラウト)は3つ目の(最後の)変母音で、「ウの口をしてイー」と言う音です。
これに対してRettungswagen(RTW・レットゥングス・ヴァーゲンは、「救急隊用車両」で、この場合は患者搬送車、救急救命士同乗患者搬送車になります。

-Einsatzleitwagen(ELW・アインザッツ・ライトヴァーゲン)
「Einsatz」は出動、「leit」は「leiten」という、指導する、指揮する、という動詞から来ていて、指令車です。

「Fahlzeuge」(ファールツォイゲ)は複数形です。型式分類のタイトルなどでは複数形で表記されます。ただしドイツ語では、語尾にeをつければ複数形になるとは限らず、例えば「Drehleiter」の場合は「Drehleitern」(ドレーライテルン)が複数形です。


さて、それで下の写真をご覧ください。




Der Volkswagen im Dienst der Feuerwehr, Udo Paulitz
Beschtermuenz Verlag 1999, p9


1951年、つまり年代的にはT1aですが、型式を「Kleinloeschfahrzeug(クライン・レーシュ・ファールツォイク) KLF800」としています。
車内にマギルースのシンボルマークのついたポンプを積み、屋根上および車内に吸管を載せています。吸管というのは、消防水利から水を汲み上げるためのものです。


次に下の写真です。
こちらは、1955-58年のT1b、型式を「TSF-T」(Tragkraftspritzenfahrzeug-Trupp/トラーククラフト・シュプリッツェン・ファールツォイク・トルップ)、「Trupp」は小部隊という意味です。「mit Loeschtrupp(1+2Mann)」と書いている資料もあって、機関員(運転士)+2名の消火隊で運用する、ということがわかります。

ポンプは「マギルース」ではなく、「メッツ」で、ポンプ型式を「TS8/8 mit VW-Motor」としています。可搬ポンプにVWエンジンが付いているということで、車両の動力を使うということではありません。ドイツ語の「Motor」(モートーア)は、内燃機関も、電動機も両方の意味があります。



Der Volkswagen im Dienst der Feuerwehr, Udo Paulitz
Beschtermuenz Verlag 1999, p20


年式が違うとは言え、同じT1ベースの車両が、何故1951年では「KLF」、1955-58年では「TSF-T」なのか、ということになります。

現在の型式区分基準、これは「DIN」(ドイツ工業規格・Deutsche Industrie Normen・ドイチェ・インドゥストリー・ノールメン)によるものですが、
「TSF」は、全備重量4.0トン以下、
「KL」は全備重量4.75トン以下、500リッターの水槽を装備
ポンプは、ともに「PFPN 10-1000」としています。
「PFPN」は、「Portable Feuerloeschpumpe Normaldruck」(ポールターベル・レーシュプンペ・ノルマールドルック)、「10-1000」は、10バールの圧力で1000リッターの放水能力、ということです。

「バール」は圧力の単位で、「ヘクトパスカル」以前に使われていた「ミリバール」の1000倍、
1バールが0.1メガパスカルです。
1000リッターは1キロリットルですから、1.0立方メートル/毎分ということになります。
したがって「10-1000」は、現在日本で使われている単位に置き換えると、「1.0MPa-1.0m3/min」です。

1951年の「KLF800」は、800リッター/分、
1955-58年の「TS8-8」は、8バール(0.8Mpa)・800リッター/分
であると推測できます。

現在の規格では「KL」の方が「TSF」よりも全備重量で若干重く、500リッターの水槽の装備義務がありますが、1951年の「KLF800」がその条件を満たしているとは考えにくいので、1951年当時には、「TSF」という最小の規格がまだ確立されていなかったからではないか、と考えています。

戦前・戦中から戦後の1940年代ぐらいまで、「LF」(Loeschgruppenfahrzeug・消火隊車輛)がひとつの基準であり、戦前〜戦中では、より軽量のものを「Leichtes Loeschgruppenfahrzeug」(LLG・ライヒテス・レーシュグルッペン・ファールツォイク)としている分類が見られます。直訳では「軽消火隊車輛」というところです。「KS」(Kraftfahrspritze・クラフトファール・シュプリッツェ)という型式もありますが、「自動車化(自走)消火ポンプ」といったところで、「TSF」とは意味が違いますし、車両もヘンシェルの、小型とは言えないものです。。
1950年代に入って、VW-T1のような、簡便な車輛が普及し、「TSF」という概念が生まれたのだと思います。「KL」は、その過渡期の表現ではないでしょうか。

1959年では、フォードFK1000の後部(リアゲート内)に可搬ポンプを積んだ「TSF」の写真も確認でき、こちらは機関員+5名で運用するとしています。1965年のメルセデス Typ L407では、車体前面のバンパー前にポンプを置き、LF 8(Loeschgruppenfarhzeug)としている資料もあります。ただしいずれもポンプの能力は「8-8」クラスのようです。
こうして見ると、やはりVW-T1は最少の「TSF」であると考えられます。


下の写真では、車内に積載されているポンプ、ホースなどの状況が良くわかります。ポンプはメッツ製です。
ナンバープレートの「WOB」は、ヴォルフスブルク(Wolfsburg)、つまりVWの本社所在地です。




Der Volkswagen im Dienst der Feuerwehr, Udo Paulitz
Beschtermuenz Verlag 1999  p39


上の図と写真は、標準的な装備の「TSF-T」で、このプランでは、中心に「TS 8」の可搬ポンプを置き、後部にホース(B-Schlaeuche・ベ-・シュロイヒェ/C-Schlaeuche・ツェ-・シュロイヒェ)、吸管(A-Saugsschlaeuche・アー・ザウグスシュロイヒェ)も収容しています。その他、器具箱、照明灯などを積んでいます。

ベルリン消防の専門チームが様々なプランを作成、積載の方法や内容には様々なものがあり、これはそのひとつにすぎない、と説明されています。



Historische Geraete und Fahrzeuge der Freiwilligen Feuerwehr Hauzenstein
http://www.feuerwehr-hauzenstein.de/index.php/ausruestung/ehemalige-fahrzeuge


上は、メッツ製可搬消防ポンプTS8/8(Tragkraftspritze 8/8)の単体のクローズアップです。
バイエルン州のハウツェンシュタインというところの志願消防隊の、歴史的装備の展示として保存されているもので、1962年から使用したということなので、VW-T1が積んでいた時期のものとほぼ同じと考えられます。
35年間使用した結果、磁気スイッチ(Magnetschalter)の動作不良でエンジンが起動しなくなり、1997年(!)に退役したということです。ドイツ人は機械が好きですし、機械を大事にします。

これもVWエンジンを動力としているということで、それでハタと気が付いたのですが、VWトランスポールターに載せているからVWエンジンを動力としているわけではなく、メッツやマギルースにVWが、消防ポンプのためのエンジン供給をしていた、ということなのですね。丁度Hondaの汎用製品のような感じです。おそらくは空冷エンジンであり、信頼性が高かったのでしょう。




これはテクノの製品で、#487の消防ポンプトレーラーです。全長わずか62mmの小さなモデルです。
1940年代製で、VW-T1よりは一世代古く、#486のボンネット型の消防車に引かせるべきで、VW-T1の牽引フックには合わないのですが、敢えて引かせてみました。残念ながらゴム製のホースが劣化してなくなってしまっていますが、こういう製品を見ると、「テクノは消防がわかっている」(製品企画をする人の中に、消防の好きな人がいた)という感をより強くします。


赤い消防塗装をしたVW-T1やT2を見ると、単なる資器材搬送用のバン(カステン・ヴァーゲン)だと思いがちなのですが、実は中にポンプを積んだ、立派な「消防車」たちなのです。
明らかなマイクロバス(Kleinbus・クラインブース)は、人員輸送車ですが、中には「コンビ」車型で、可搬ポンプを積んだものもあります。

志願消防隊では、せっかく導入したVW-T1やT2を、ただの「資器材搬送車」にしたとは考えにくく、ポンプを載せた「消防車」として活用したであろうと考えられます。



Typenkompass VW Bus/Transporter 1949-1979 Band 1, Michael Steinke,
Motorbuch Verlag Stuttgart 2003,  cover


屋根上にはしごや吸管を載せていない、ただの「バン」に見えても、実際はポンプ車だ、ということです。

このあたりのことを、ミニチュアのメーカーが理解して作っているものか、怪しいものもあります。
また国内のショップの商品情報などでは、トランスポールター車型と見るや何でも「タイプ2 バス」にされてしまうので、正確な記述を期待するのは可哀相、というものでしょうか。
ネットショップの販売商品を見てみると、案の定「VW タイプ2 ワーゲンバス消防」といったものがありました。それも明らかに側面窓のないバンで、まさに可搬消防ポンプ積載車輛です。

「バス」というのは、人を乗せるための座席の並んでいるもののことを言うので、これはドイツ語でも、英語でも、日本語でもかわりません。バスではないものを「バスだ」と言うと間違いになってしまうので、よくわからない場合は、「バス」とか「指令車」とか、思い込みによる余分な説明は付加せずに、「VW消防」「消防車」「消防隊」ぐらいでとどめておけば、少なくとも誤りにはならないと思います。同じ商品の表記が複数の店舗で同様になっているので、輸入代理店や問屋から回って来る入荷リストの表記が、翻訳なども含めて間違っている場合があるようです。もっともこの商品を「バス」と誤認して購入する、という不都合は生じないのかもしれませんが。

車内の装備を再現したモデルは1/43クラスでは無いですが、サンスター製の1/12モデル(1956年式T1)は、側面ドアを開けると可搬式ポンプを取り出すことができ、リアゲートを開けるとホースと消火器が装備されています。1/12というスケールであれば、もっと突っ込みを期待したいところではあります。

最近の1/43モデルでは、側面ドアやリアゲートを開閉できるギミックを持っていませんから、こういうことは、そもそも期待できないことになります。側面ドアが開閉できるモデルに、可搬ポンプを自作して積んだり、トレーラーをけん引させてみたいような気持ちになります。



話の「ついで」に、「タイプ2」という表現について少し見てみましょう。
まず「Der Volkswagen im Dienst der Feuerwehr」という本ですが、最初に「VW Transporter」という章で、T1、T2、T3を扱っています。「Transporter(トランスポールター)」の中には、「バス」も含まれています。
そして巻末に各車種のスペック表があり、ここで「VW Transporter Typ 2, 1.Generation」(トランスポールター・ティープ・ツヴァイ、エールステ・ゲネラーツィオン)という表現が出て来ます。つまり「T1」ですね。T2は、「VW Transporter Typ 2, 2.Generation」(ツヴァイテ・ゲネラーツィオン)です。

次に「Volkswagen Feuerwehrfahrzeuge」という本ですが、大戦期(キューベルヴァーゲン/シュヴィムヴァーゲン)、「1945年以降のケーファー(ビートル)」、「Typ 3(VW1500/1600)」、「Typ 4(VW411/412)」、「K70」、「パサート」、「ゴルフ(ニュービートルを含む)」、「ジェッタ/ヴェント/ボーラ」、「ポロ」、「ルポ/フォックス」、「シャラン/トゥラン」、「181/イルティス」「トゥアレク」と来て、「トランスポールター」の章があり、T1からT5までを収めています。この中にはやはり「バス」も含めています。つまり「Typ 3」「Typ 4」という表現は、VW1500/1600、VW411/412のところにだけ使われていて、ビートルを「Typ1」、トランスポールターを「Typ2」とは言っていないわけです。
上記2冊はVWの消防車両だけを扱った本です。

最後に「Typenkompass VW Bus/Transporter」という本ですが、タイトルを見てわかるように、「バス」と「トランスポールター」を分けて書いています。消防車両に限定せず、バスとトランスポールターの各世代・各型式を解説した本です。トランスポールターだけを扱っていますから、「Typ 2」という表現は出て来ません。
例えばT1のバンは「Transporter T1  Typ 21 Kastenenwagen(カステンヴァーゲン)」、コンビは「Transporter T1  Typ 23 Kombiwagen(コンビヴァーゲン)」ピックアップは、「Transporter T1  Typ 26 Pritshenwagen(プリッチェンヴァーゲン)」であり、「Typ」(独音ではティープ)は各型式名ですから、これらの総称としての「Typ 2」には意味がないだけでなく、用途別型式が整理されていく以前の、1949年のトランスポールターのプロトタイプのの名称として出て来ます。

いずれにしても「タイプ2」は、ビートルが「タイプ1」、トランスポールターが「タイプ2」、VW1500/1600が「タイプ3」、VW411/412が「タイプ4」としてシンプルに整理できた時代のカテゴリーであって、ビートル自体の生産が終わった現在となっては、ニュービートルは「タイプ1」ではないわけですし、T4やT5は「タイプ2」ではないと思うわけですね。

したがってT1、T2について、敢えて「タイプ2」という表現を持ち出す必要はなく、T1、T2、T3、T4、T5、LT、そしてれぞれの各型式と見ていった方がシンプルであろう、というのが私の考えです。






Der Volkswagen im Dienst der Feuerwehr, Udo Paulitz
Beschtermuenz Verlag 1999, p22


上の写真は、「TroLF」(Trockenloeschfahlzeug・トロッケンレーシュファールツォイク)、乾燥(粉末)消火剤車輛です。

中央に「PLA250」という粉末消火器を積んでいます。「PLA」は「Pulverloeschanlage」(プールファー・レーシュ・アンラーゲ)の略で、「Pulver」は粉末・粉薬・散薬、「Anlage」は設備・装置です。「250」は、粉末消火剤タンクの容量が250kgであることを示します。中央の赤塗装されている大きなタンクが250kgの粉末消火剤タンク、その左の白ぽっく写っているのは、加圧するための圧縮ガスボンベです。

その他にエンジンルームの上に小型の可搬式粉末消火器、さらに手持ち消火器6本を積んでいます。
代表的な消火器メーカーである「Tyco」社(ブランドは「TOTAL」)が艤装したもので、車体後部下に「TOTAL」のロゴが写っています。

上記資料では粉末消火剤の種類は書いていませんが、例えば金属粉の火災は、消火に水を用いると、より燃焼が促進されるために消火が困難で延焼拡大の危険があるとされます。

「trocken」(乾いた)という限定が付いているので、水などの浸潤剤や泡系のものは除外されるはずで、したがって、第一リン酸アンモニウム(ABC粉末)、炭酸水素ナトリウム(NA粉末)、炭酸水素カリウム(K粉末)、リン酸塩類、バーライトなどと考えられます。工場消防隊では重要な装備であり、当該工場で扱う材料や薬品の種類によって、消火剤の内容・組成も変えられるものと思います。





Der Volkswagen im Dienst der Feuerwehr, Udo Paulitz
Beschtermuenz Verlag 1999  p23


さらに上の画像では、ピックアップ・ベースの車体に、ポンプ、はしご、ホース、ホースリールなどを載せています。テクノのモデルとレイアウトは違いますが、かなり近いものと言えるでしょう。
こういう車輛を参考に、「ホースをつなげて遊べる」というアクションを盛り込むためにアレンジしたのがテクノのモデルではないでしょうか。あるいは、もっとテクノ製モデルに近い実車もあるかもしれません。

この車両は、エーデルヴァイス牛乳工場の、工場消防隊(Betriebsfeuerwehr der Edelweiss-Milch-werke)(ベトリープス・フォイエルヴェーア・デア・エーデルヴァイス・ミルヒ・ヴェルケ)のものです。

シュコーなどには、こういう面白い車輛のモデル化を期待したいですが、どこのメーカーも作るのは色替えだけで作れるバスとバンが多いのは残念です。




GAMA #9572・VW-T1消防車(VW-T1 Feuerloeschfahrzeug)




これも「Gama Volkswagen」で検索していて「見つけてしまった」モデル。
1968年〜1973年の生産。

テクノの#408と非常に良く似たコンセプトのモデルで、ピックアップの荷台にユニットを載せ、ホースリールやはしごを積んでいます。このT1ベースのモデルでは、後部ユニットははずれません。

テクノとの一番大きな違いは、ゴム製のボールを積み、ホースをゴム・パイプにつないで、実際に「水が出る」アクションを実現したことでしょう。車体後部に突き出したパイプを吸口とし、ゴム球の中に水を吸い込んだ上で、今度はパイプにホースを接続して「放水」するのです。

子どもにとって「消防車から水が出る」というのは、夢の実現でもあったと思われます。
テクノのモデルが実現していた「はしごが伸び」「ホースをつなぎ」に加えて、ついに水まで出たわけです。このアクションが、両親たちに好評であったかどうかは定かではありません…。

コレクターの立場からは、ホースや「水タンク」のゴムが経年で劣化して、固くなったり、もろくなったりするという問題を起こしています。それが恐ろしくて、水が出るかどうか、試す気にはなれませんでした。メッキされたプラスチックも、今後安泰とは言えないでしょう。

テクノの方が、そこまで意図したものではなかったでしょうが、時間の経過に強いツクリになっています。またテクノに比べると、さらに「トイ」の要素が強くなっていることは明らかです。
とは言え、いまとなっては希少なモデルではあります。ホースリールやはしごなど、とりはずして遊ぶ要素が多いため、材質的な劣化の問題と合わさって、部品が欠落している固体が多いようです。



GAMA #9575・VW-T2消防車(VW-T2 Feuerloeschfahrzeug)




1973年から1981年の生産。#9572をVW-T2車台に置き換えたもので、#9572の生産を終了して差し換えたものでしょう。
このT2では、後部ユニットはとりはずしできるようになっています。

屋根上灯は、どういうわけか黄色のものを付けています。
ドアに「GAMA」というシールを貼っていますが、これは消防車のモデルとしては余計なお世話というものです。

ということは、1968年から1981年まで、T1・T2の両方をベースにして長年にわたって生産されたことになり、「売れた」商品だったということになるでしょう。



GAMA #9487・VW-T2消防(VW-T2 Kombi Feuerwehr Mehrzweckfahrzeug )




同じくGAMAのT2。1970年から1981年の生産。
ガマは、側面窓の無いバン(カステンヴァーゲン)の金型を持っていますが、敢えて側面窓のあるコンビの車型で、屋根上にはしごを載せた消防車を作っています。
側面スライドドア、リアゲートともに開閉できるアクションを持っています。これも堅牢なモデルです。

先に書いたように、T1では、側面に窓の並んだコンビ車型(ただしマイクロバスより、窓が片側でひとつ少ない)でもポンプを積んだ「TSF-T」がありますが、T2になると「TSF-T」は側面窓のないカステンヴァーゲンを使っており、コンビ車型での「TSF-T」は資料本に載っていませんでした。
T2になると1968年以降ですから、消防隊の装備の環境も少し変わって来たのかもしれません。





GAMAのパッケージでは、商品名を「フォイエルヴェーア・ゲレーテヴァーゲン」(Feuerwehr Geraetewagen)としています。「ゲレーテ」は「ゲレート」(Geraet)の複数で、器具、用具、道具、装置、器械、の意味です。ですから「可搬消火ポンプ輸送車」よりもう少し広く、「資器材搬送車」というところです。

下の写真では、車種(用途)分類を「Mehrzweckfahrzeug」(メーアツヴェック・ファールツォイク・MZW)としています。
「Multi-purpose vehicle」つまり、多目的車ですね。
志願消防隊ではなく、ボンの常備消防隊のものです。T2b(1973〜1979年)で、この頃ボンは連邦共和国(西ドイツ)の首都ですから、ポンプ車としては中〜大型のものを装備しており、VW-T2を「多目的車」として使う、装備の余裕があるわけです。


Der Volkswagen im Dienst der Feuerwehr, Udo Paulitz
Beschtermuenz Verlag 1999. p44




GAMAのモデルは、側面ドアを開けるとフラット荷台になっており、運転席以外の座席はありません。
したがって、商品名に「バス」とか「コンビ」とかの言葉は使われず、「ゲレーテヴァーゲン」(資器材搬送車)と書いているわけです。

これは正しい選択および正確な表現だと思います。座席があれば、人員輸送車(Mannscafts-Transportfahrzeug(マンシャフツ・トランスポールト・ファールツォイク)・MTF)ということになり、ポンプなどを積む余地はなくなります。その場合ポンプを運びたければ、トレーラーで牽引することになります。

下の写真は、カステンヴァーゲン(バン)車型でないにもかかわらず、側面のスライドドアを開けると、驚きの粉末消火剤タンクを積んでいます。「TroLF250」とされているので、250kgタンク装備で、ボン・ハンゲラールの飛行場の車両です。
ボン・ハンゲラール飛行場(Flugplatz Bonn-Hangelar)は、連邦警察の航空隊などが使用している飛行場で、ケルン・ボン国際空港とは違います。したがって250kgの消火剤タンク容量の準備で足りているわけです。まさにVWトランスポールターが重宝される場面です。国際線の大型旅客機の火災に備えるには、250kgでは足りないでしょう。

GAMAのモデルに、粉末消火剤タンクを入れてもいいことになります。
窓が並んでいるのを見るや「バス」だと決めつけるわけにはいかない事情がご理解いただけるものと思います。



Volkswagen Feuerwehrfahrzeuge,Thorsten Waldmann
Verlag Podzun-Motorbuecher 2007, p87


T1に戻りますが、下もカステンヴァーゲンではなく、窓の並んだ「コンビ」ですが、車内には可搬ポンプ、ホース、消火器を積んでいます。ただしこの場合は、屋根上ラックに吸管を載せているのがヒントでしょうか。
ニーダーザクセン州のヨルク(Jork)の志願消防隊の「TSF-T」です。

GAMAは、#948で、T1のコンビ車型にはしごを載せたモデル(1964年から1969年の生産)も作っていますが、これがなかなか出て来ず、入手に至っていません。(2017/1/3)



Der Volkswagen im Dienst der Feuerwehr, Udo Paulitz
Beschtermuenz Verlag 1999, p75



GAMA #916 VW 1300 消防指令車(VW-Kaefer Kommandowagen)




GAMA製T1・T2からの流れで、同じGAMAのビートルに行くことにします。
これは品番#916で、1964年頃〜1971年の生産。
ただし初期モデルはシートが入っていないようなので、写真のモデルは後期生産分です。

もともとは品番#900、1958年から1965年生産の「VW 1300」の金型です。
全長87mmの小振りなモデルで、デカールなどは何も貼られていませんが、赤塗装に青灯を載せているので、消防仕様と解釈できます。
裏板はダイキャストではなく、ティンプレートです。中期のモデルペット、パブリカあたりのツクリを思い出します。
アクションも何もありませんが、いいモデルです。




GAMA #816 VW 1302 消防指令車(VW-Kaefer Kommandowagen)




同じガマのビートルですが、全く別の金型で、1972年〜1981年の生産。
裏板にスケール1/43を明示しており、全長は97mmあります。やはりマーキングは何もありません。

品番#898で1972年から1982年まで生産されたVW 1302の金型です。裏板のモールドは「1302」になっています。
なお民間型「#898」は、1982年に「#1104」に品番が変わりました。

実車は1971年に前輪サスペンションが変更になり、ボンネットが膨らみました。その姿を表現しています。同じビートルのミニカーでも、ずいぶんと印象が違うのはこのためです。そもそも実車の顔つきが変わっているのです。

アクション全盛期のもので、サスペンション、ドア開閉、シートのリクライニングを盛り込んでいます。
とは言え、質実剛健なツクリで、こちらはディンキーのビートルを思い出します。
ディンキーも、ピラーごとドアが開くアクションが新鮮なモデルでした。



ドイツではビートルのことを「ケーファー」(Kaefer)と言います。「甲虫」の意味で、「カブトムシ」には限りません。それで転じて「ケーファー」と言えばVWビートルそのものを指します。
英語の「beetle」も、辞書を見る限りでは、「カブトムシ」には限定されず、「コガネムシ」などを含む「甲虫」のことのようです。「ビートル」はほぼこのクルマの固有名詞ですから、日本でわざわざ「ケーファー」というコトバを使う必要はないでしょう。


VW-T1・T2に、消防ポンプや、粉末消火剤を積んだ消防車が多い、というお話をして来たわけですが、さすがにビートルにポンプは積めないので、消防隊のビートル、イコール「指令車」と思われると思いますが、実車写真の説明を見ていくと、これもまた、それほど単純ではないようです。


まず、
KdoW(Kommandowagen/コマンドヴァーゲン)
日本語に置き換えると「指令車」(指揮官車・指揮官搭乗車)で、これは、素直に「消防指令車」と置き換えて良いと思います。英語の「ファイアチーフ・カー」です。(英語の「ファイアチーフ」はクルマではなくて人(指揮官)なので、車は「指揮官車」、「ファイアチーフ・カー」です。)

現在の基準では、DIN(ドイツ工業規格)14 507 Teil 5に規定されており、通信設備などの装備義務の規定があります。

エルマー・ピュッティング(Elmar Puetting)という、艤装会社による製作事例として(ただし最近のものですが)、屋根上警光灯、波長2m無線(144MHz帯)、波長4m無線(80MHz帯)、デジタル無線、電話、ファックス(Rundum-Ton-Kombinationen, Funk 2m, 4m, digital, Telefon, Fax)を装備しており、DIN 14 507 Teil 5 による全ての装備義務を満たしている、としています。
「Rundum-Ton-Kombinationen」(ルンドゥム・トン・コンビナツィオーネン/RTK)というのは、ヘラ(Hella KGaA Hueck & Co.)という、警光灯・サイレンのメーカーの商標で、同社の製品の名称です。

少し古く1999年、レーゲンスブルクの国立消防学校が作成したKdoWの装備リスト(Staatliche Feuerwehrschule Regensburg, Beladeliste fuer Kommandowagen KdoW Feuerwehr: nach DIN 14 507, Teil 5, Ausgabe 07.1999)では、通信装備としては波長2m無線だけを挙げています。ただしこれは携帯可能なもので(2-m-Handfunkgeraet)、行政機関・自治体および団体の業務の安全性を確保するための技術指針(TR BOS/Technische Richtlinie der Behoerden und Organisation mit Sicherheitsaufgaben)に準拠した、予備バッテリー、急速充電器を含む、としています。
その他、手持ち式スポットライト、消火剤6KgのABC粉末消火器、温度モニター、ファーストエイドキットB、患者搬送用毛布(1900x1400 mm)、呼吸器接続用の200バールまたは300バール圧縮酸素ボンベ、フルフェイス呼吸用マスク、などを挙げています。

他の消防署の部隊・指揮所、上級の指揮所や他の組織との通信の必要性に応じて、通信の帯域や手段が違って来るわけです。4メーター・バンドについては、連邦軍インフラおよび環境防衛業務センター(Bundeswehr-Dienstleistungszentren/(BwDLZ) )、連邦軍衛生隊(Sanitaetern)、連邦軍消防隊(Bundeswehrfeuerwehr)が使用するようです。大規模な災害や、想定された戦時下では、消防部隊と連邦軍との通信・連携の必要も生じるわけです。ただし連邦軍での4メーター・バンドの使用は、ドイツ国内での非戦闘部隊に限定されます。これは軍事行動の機密保持上の理由です。

また、志願消防隊(フライヴィリーゲ・フォイエルヴェーア/FF)については、単一の消防署を拠点とするイメージを持ちがちですが、地域別に複数の消防署を持つFFもあります。


上記のような基準は時代的に満たしていないかもしれませんが、1960年代のビートルで「KdoW」と説明されている写真があります。下は「KdoW 2」としているもので、ミュールハイム・ルール(Muelheim an der Ruhr/ノルトライン・ヴェストファーレン州の中西部の都市)の常備消防隊のもの、1961年としています。
「KdoW 2」という表現は、コマンドヴァーゲンが装備基準によってさらに細分化されていたことを示唆します。

追加されたバンパー・プロテクションは、もともとアメリカ向けの輸出車輛用に開発されたもので、これが「M107」という名称でドイツ国内の車両にも装着可能だった、と書かれています。


Volkswagen Feuerwehrfahrzeuge,Verlag Podzun-Motorbuecher 2007, p14



ELW 1(Einsatzleitwagen 1/アインザッツ・ライトヴァーゲン・アインス)
「出動指揮車」といった直訳になります。
現在の基準では、コマンド・ヴァーゲンより大型の車両で、コマンド・ヴァーゲンが指揮官の搭乗車として現場に先行することを任務としているのに対して、指揮所としての充実した機能を持っている車両、ということのようです。

現在のDIN(ドイツ工業規格)14 507 Teil 2・3・4の規定では、「ELW 1」「ELW 2」「ELW 3」に区分されており、「ELW 1」は単一の消防署の部隊の指揮、「ELW 2」は複数の消防署の部隊の指揮、「ELW 3」では市民保護などを含む、中〜大規模(広域)の消防業務の指揮になります。

おおまかに「ELW 1」では乗用車〜中型のバン・クラス、「ELW 2」で中型のバン〜トラック・クラス、「ELW 3」ではトラック〜トレーラートラック・ベースのコマンドセンターの規模になります。
ビートルに限って言えば、広域指揮のための設備を持てませんから、当然「ELW 1」です。ただし「ELW」が「1」「2」「3」に区分されたのは、ビートルが現役だった時代よりも後かもしれません。

現在の基準ではでは、概してELWは求められる機能の拡大によって大型化しており、ELW1が総重量4トンまで、ELW2で16トンまで、となっています。これに対して、コマンド・ヴァーゲンは3.5トンまで、としています。

下は、「アインザッツ・ライトヴァーゲン」と説明されている写真。
エッセンの常備消防隊、1964年式なので、GAMAの古い方のモデルと同じ頃のクルマです。
屋根はサンルーフになっており、開口部をよける形で「FEUERWEHR」のサインと青色警光灯が付いています。
屋根の後半部にホイップアンテナが見えます。
この時代では、コマンド・ヴァーゲンと差別化できるような特別な指揮機能を持っているとは思えません。


Volkswagen Feuerwehrfahrzeuge,Verlag Podzun-Motorbuecher 2007, p14


Vorfahrwagen(フォアファール・ウァーゲン)
略号を持って標準化されている分類ではないようですが、資料によってはこの言葉が出て来ます。
「vorfarren」(フォアファーレン)は「前へ進む」「先へ行く」ということで、直訳すれば「消防先導車」ということになります。つまり「KdoW」または「ELW 1」と同じと考えていいようです。

下の写真は、デュッセルドルフの中心地域をカバーする常備消防隊のもので、Vorfahrwagen(ELW 1)と表現しています。車体は「エクスポート・リムジン」、1950年代の終わり、としています。


Der Volkswagen im Dienst der Feuerwehr, Udo Paulitz
Beschtermuenz Verlag 1999. p83



PKW(Personenkraftwagen/ペアゾーネン・クラフトヴァーゲン)
「PKW」は、ただの「乗用車」です。「Person」(ペアゾーン)というのは人・人間・個人、それの乗るクルマ、ということです。消防車輛の分類としてではなく、普通に乗用車のことを「PKW」(ペーカーヴェー)と言います。特に指揮者を乗せて火災現場に出場するという目的でなく、連絡、現場検証、出張、送迎などの日常の業務に使われるということでしょうか。この場合、古い時代では無線さえ持っていない場合もあったかもしれません。

下は「ノイス」(Neuss/ノルトライン・ヴェストファーレン州 のライン川左岸の都市)の志願消防隊、1971年式VW1200で「PKW」と説明されています。
1968年以降の全てのビートルで、ヘッドライトが進行方向に対して垂直になった、と書かれています。


Volkswagen Feuerwehrfahrzeuge,Verlag Podzun-Motorbuecher 2007, p19


FDW(Feuerdienst-wagen/フォイエル・ディーンスト・ヴァーゲン)
1969年、VW1200、ミュンヘンの常備消防隊のもので、FDW(Feuerdienst-wagen)と説明しされています。何ら特別な機能を言っているわけではなく、「消防業務用車両」という意味です。わざわざ「FDW」としている意図がわかりませんが、「PKW」に準じた多目的車輛、というぐらいに解釈しておきたいと思います。
前バンパー上にサイレンを2つ付けていますから、当然火災現場に出場する車輛です。


Der Volkswagen im Dienst der Feuerwehr, Udo Paulitz
Beschtermuenz Verlag 1999. p85

T1・T2のポンプ車と同様に、消防隊のビートルの外観を見て、これら「ELW 1」「KdoW」「PKW」を見分けるのはむずかしいと思われます。車型ではなく、単に用途の違いだからです。車外に露出しているアンテナの形状などから、車載無線機を識別することもできないでしょう。

使用している当人たちの説明がなかったら、わからなくなると思われるので、モデルの上で全て「消防指令車」と呼ばれても、これは仕方がないと思われます。当時使っていた組織・部隊が、「このクルマはELW 1として使っていた」という情報があれば、「ELW 1」になる、ということです。



ヴィーキング VW-T1 可搬消防ポンプ搬送車(VW-T1 TSF-T)



ヴィーキング、1/40サイズ、プラスチック製の「TSF-T」です。
数は要らない。いいものが少しだけあればいい。」で白い救急車を掲載していますが、それの消防版です。
救急車が車体上部を取り外すことのできる形式だったのに対して、この消防車では上部ははずれません。
車内を覗くと、荷台部分のシートはなく、カステンヴァーゲン車型になっています。

このシリーズは、VWの特注によるプロモーショナル・モデルで、ディーラーでの展示、イベントでの記念品、セールスマンが携帯しての実車構造の説明などに使われました。

消防は大型化された楕円形のテールランプを付けており、T1bの1964年以降、ということになります。





中島登著『ミニカーコレクション・オール絶版車カタログつき』(二見書房・昭和55年)の220ページのリストでは、「ヴィキング・ファイアーバン'58」の掲載があります。119ページの写真の「35」番です。
1958年式というのは、1964年以降の楕円形テールランプと一致しませんが、ヴィキングのこのシリーズは、VWのディーラー・モデルですから、マイナーチェンジ以前の「58年式」というものも存在するかもしれません。

注目すべきは、パッケージの「VW-Feuerloeschdahrzeug TSF(T)」という表記です。
まさに、「トラーククラフト・シュプリッツェンファールツォイク・トルップ」、「消火隊員同乗・可搬消防ポンプ搭載車」です。単なる「バン」でも、「バス」でもありません。パッケージ横には、「VW」マークを付けたヘルメットをかぶって放水する消火隊員のイラストレーションも描かれています。

50年以上前に、このモデルとパッケージを作ったチームは、もちろんVW社の人も、ヴィーキング社の人も、このクルマのことを「わかって」仕事をしていることに感動します。単なる「赤の消防バン」ではありません。





Wiking VW-T1消防隊患者搬送車(VW-T1 Feuerwehr Krankenwagen)




ヴィーキングは、近年になって1/40のシリーズを復刻しており、消防分野でもベルリン消防の救急車と、ハンブルク消防のプリッチェンヴァーゲン(ピックアップ)を作りました。
消防仕様に限って言えば、赤の救急車とプリッチェンヴァーゲンは、1950〜60年代には作られていないように思います。

救急車は、「コンビ」車型で、窓を車内から遮蔽したタイプ、Typ27のクランケン・ヴァーゲン(患者搬送車)ということになろうかと思います。消防隊の所属車輛であり、ベルリンの常備消防隊のプリントを付けます。
運転席および助手席に、フィギュア2体が乗っています。



60年代製の、同じ1/40の救急車と比較してみます。
60年代製は消防隊車輛ではなく、アイボリーのDRK(ドイツ赤十字)所属車です。一番大きな違いは、60年代製は車体上半分をとりはずして車内が見られるようになっているのに対して、赤の復刻版の方は、はずせません。
部品分割としては同じなのですが、車体上下を接着してしまってあるようてす。



復刻版の方の車内を覗くと、ストレッチャーは入っていますが、救助隊員席やエンジンなどは入っていないようです。一方60年代版は、私の入手したものではストレッチャーが失われているようです。

車体後部を見ると、60年代版は小さいテールランプに、リアゲートに窓なしで、T1bのTyp23患者搬送車(1959年〜1963年)の標準的な姿です。一方復刻版の方は、大きいテールランプに、リアゲートに窓のあるタイプになっています。




ヴィーキング VW-T1 消防隊資器材搬送車(VW-T1Feuerwehr Pritschenwagen)




プリッチェン・ヴァーゲン(ピックアップ)の方は、グレーの幌をかけた姿で、左側は幌を巻き上げた状態になっています。ハンブルクの常備消防隊のプリントになっています。フィギュアは機関員1名のみです。

こうして写真に撮ってみますと、カチッとしたモールドとともに、素晴らしいプロポーションをしていて、ヴィーキングの面目躍如たるものがあります。
プラスチック製か、ダイキャストかというようなことを全く忘れさせる良さを持っています。
入手先のドイツ人が、「ヴィーキングは1/40スケールのモデルをあまり作らない」と言っていましたが、まさにその通りで、残念なことです。

60年代版に比べて、バンパーやホイルを黒のパーツとし、精度の高いプリントをしていることで、全体の印象が引き締まりました。




裏板の動力系のモールドについては、60年代製消防と、復刻の救急/ピックアップは3台とも同一、60年代製の白の救急車だけが、T1bの初期ということで、違うレイアウトになっています。車内にエンジンを再現していることとも関係があるでしょうか。



ヴィーキング復刻版のパッケージ。
救急車の方は、「消防隊患者搬送車(VW-コンビ)」、ピックアップの方は「VW・プリッチェン・ヴァーゲンT1(消防隊)」としています。何ら誤解を受けることのない、正確な表現と言えるでしょう。

60年代版は紙箱に入れて供給されましたが、復刻版では1/87シリーズと同じような、軟質プラのケースに入れて売られました。このケースが紫外線などに当たると劣化するようで、簡単に割れたりする現象が起きています。

復刻版が作られたことで、ネットオークション上などでは60年代のオリジナルと混在するようになってしまい、60年代版を入手しようとする時には、注意が必要です。
まず、ヴィーキングは60年代版と復刻版では意識的に仕上げを変えて作っているので、復刻版として作られたモデルの仕様をいったん把握してしまえば、間違えることはありません。

また先述のように、60年代版は紙箱、復刻版は軟質プラケース入りです。それと、まず価格が違っていて、復刻版の価格では、60年代版は入手することは困難です。
パッケージが失われていたり、稀には復刻版を60年代のヴィンテージだと思って売るような人も出るかもしれないので、一応は注意するようにしていただきたいと思います。



ミニチャンプス VW-T1消防車(VW-T1 TSF8 Berufs Feuerwehr Solingen)



50年前のヴィキングとの比較で、ひとつ「意地悪」をします。
「ミニチャンプス」の1/43モデルです。
1536台の限定、年式を「1966年」とし、パッケージ横のラベルでは「VW Kastenwagen red 1966 Feuerwehr Solingen」としています。

「ゾーリンゲン消防」であるにもかかわらず、「赤のバン」だと書いているのですね。
ミニチャンプスでは、T1でバスと、バンの金型があり、バンでは濃い赤の「ポルシェ」や、ブルーの「コンチネンタル」などがあるので、これは「赤の消防」だ、と言っているわけです。




モデルのドアを見ると、細かいプリントがあり、「Berufs-Feuerwehr Solingen TSF6」とあるのですね。
ちゃんと「TSF」(トラーククラフト・シュプリッツェンファールツォイク・可搬消防ポンプ搭載車)と書いてあるのです。しかし、商品に名前を付けて、リスト化する人にとってみれば、この車両は単に「赤の消防」だったのでしょう。「TSF」の意味もわからなかったのだろうと思います。車輛番号か何かだと思ったのでしょう。

「TSF6」は、おそらく誤記・誤植で、「TSF8」の誤りだと思います。
「TSF8」は、1955-58年頃に実現されていたポンプ性能として、8バール(0.8Mpa)・800リッター/毎分の意味ですから、「TSF6」だと、6バール(0.6Mpa)・600リッター/毎分に落ちてしまいますね。1966年式だとすると、ここから8年も経っており、また志願消防隊ではなく、ゾーリンゲンの常備消防隊の装備ですから、6バール・600リッターに落ちることは、まずあり得ないでしょう。また資料を見ていても、メッツやマギルースの消防ポンプで「TSF6」というのは見たことがありません。

「ゾーリンゲン消防」と特定しているのですから、少なくとも実車の写真ぐらいは見て企画しているのだと思いますが、きっと細かな文字の「8」が「6」に見えたのだと思います。

「Kastenwagen」は車型としては間違いではありませんが、商品名を「Kastenwagen red」(赤のバン)ではなく、「TSF8」(可搬消防ポンプ搭載車)としておいてくれれば、モデルメーカーとしての面目躍如(50年前のヴィキングのように)、というところなのですが、そうはなっていないことが残念です。つまり、これぐらいのノリで、色替えモデルとして作られている、という姿勢が何となく感じられてしまうのですね。「赤の消防」「白の救急」「黄色の郵便」ぐらいの感覚です。ミニチャンプス(Paul´s Model Art)が、アーヘンを拠点とするドイツの会社であるだけに残念です。別に現役のメーカーを、必要以上に批判する意図はないので、単に私の感想として書いておくことにします。最近は1/43で、消防車や救急車を結構モデル化しているようなので、現在では考証力はアップしているのかもしれません。

シュコー製ののVW-T2のはしご車で、プラ製のベースからはずしたばかりにミラーを折ったことに懲りて、このモデルはベースに付けたまま撮影しました。このまま、プラケースをかぶせて、恐る恐る箱に戻します。手にとって、愛でてもらえないミニカーというのは、寂しいものです。



ダンディ・カドー KT-13 VW 1200LE 消防指令車(VW-Kaefer Kommandowagen)



さて、「ダンディ」です。当サイトでは、「ダンディ」を取り上げるのは初めてと思います。

といっても、トミー・オリジナルの製品ではなく、可堂玩具(カドー・ミニチュアカー/コレクショントイセンター)の特注によるモデルです。この特注シリーズでは、ビートルで3回にわたり全15種、VW-T1の「ポリスバン」で6種、VWの緊急車が作られました。

まず、ビートルです。1978年発売のDF11-1の「VW 1200LE」(通常品ポリスカーの品番はDF21-1)の金型を使って、世界各国のポリスカーに仕上げたシリーズのうちの1台です。
最も早い、1979年発売の第1シリーズ6点の中に、「スイス消防」(品番KT-13)がありました。

ピラーも含めてドア開閉、ボンネットが開き、スペアタイヤが入っています。
裏板もダイキャスト、タイヤがゴムでなく、硬質プラであることを除けば、60〜70年代のヨーロッパ製モデルに遜色のない品質であると言えるでしょう。これもディンキーの129-Hのモデル(1965〜1976年)を思い出します。ディンキーのモデルも、ボンネットが開きました。

屋根上灯が屋根の曲面の上に付けられているため、前のめりになってしまっている点が少々気になりますが、1978年という、トミー通常品の発売年次を考えれば、往年のヨーロッパ製モデルの雰囲気を継承し、絶版モデルより安い価格で提供した、ということが言えると思います。




パッージの商品名は単に「SWITZERLAND」になっており、「ポリスカー」のシリーズであることから、スイスの警察車輛と思った方が多かったかもしれませんが、チューリヒ市の常備消防隊(BF)のコマンド・ヴァーゲン(KdoW)です。

下は実車の写真で、ミニカーのマーキングはシールですが、、ほぼ忠実に実車を再現しているように見えます。
1972年に就役後、永年BFチューリヒでコマンドヴァーゲンの任務を果たしました。
2002年に全面的なレストアを受けた後、「記念車輛」(Jubilaeumsfahrzeug)になっており、この写真は歴史的な消防車輛の集まるフェスティバルに出て来たところです。
再設計されたVW 1302Sで、幅広のボディ、長いフロントエンド、新しいフロント・アクスルを持つこのタイプは、この種のフェスティバルではあまり出て来ないクルマだ、と書かれています。記念車になっている車両のナンバーは、「ZH26112」です。

ダンディ・カドーによるモデル化は1979年ですから、当然現役時代だったことになりますが、もしプロトタイプが同一の車両だったとしたら、誠に興味深いことです。


Volkswagen Feuerwehrfahrzeuge,Verlag Podzun-Motorbuecher 2007, p19


可堂玩具(カドー)特注シリーズのうち、「トミカダンディ フォルクスワーゲンポリスカー」の発売年次と仕様を整理すると、以下のようになります。前述のように、3シリーズ・全15種あります。
DF21-1の「VWポリスカー」(トミーによる通常品)の発売は1979年なので、カドー・オリジナルの企画も並行、または先行して進んでいたものと考えられます。

1979年
-スイス(KT-13)白/赤(チューリヒ消防)
-ベルギー(KT-14)白  
-シンガポール(KT-15)黒/白フェンダー POLICE
-西ドイツ(KT-16)白 POLIZEI
-ポルトガル(KT-17)青/グレー
-オランダ(KT-18) 白に青線 POLITIE

1980年
-西ドイツ(KT-19)緑/白 POLIZEI
-西ドイツ 消防(KT-20)白/赤
-ADAC(KT-21)黄

1982年
-スウェーデン(KT-37)黒/白 POLIS
-フィンランド(KT-38)黒 POLIISI
-デンマーク(KT-42)黒/白 POLITI
-日本(KT-43)白/黒 POLICE
-ポルトガル(KT-45)ダークグレー GNR BRIGADA TRANSITO
-スイス(KT-46)白 POLIZEI

ネービーブルーに白フェンダー、屋根上にスピーカーをはさんで2灯のもの、また黄色ボディに「メトロポリス」のプリントをしたものは、可堂特注品ではなく、トミー通常品の「DF21-1」です。

可堂玩具は問屋であり、当時「ミニチュアカー」誌の発行元にもなっていました。
これらの「特注」モデルは、トミカ〜ダンディを売っている全ての店舗で販売されたわけではなく、ダイキャストミニカーに力を入れている専門店、玩具店、百貨店の玩具売り場などに置かれました。



ダンディ・カドー KT-20 VW 1200LE 消防指令車(VW-Kaefer Kommandowagen)



1980年の「ビートル(VW 1200LE)・ポリスカー」第2弾の中に、「西ドイツ消防」がありました。

ただしパッケージは「KT-16 WEST GERMANY」になっています。KT-16と同じ「西ドイツ」ということで、パッケージ用のラベルが共用されたものか、たまたま私の入手した固体で、どこかで箱が取り違ったものか、わかりません。
国内外でのネットオークション出品を見ていると、箱が取り違ったものが結構あるようです。箱から出してケースに展示していたような場合に、発生しやすい現象です。箱に戻す際に、違う箱に入ってしまうのです。
また、パッケージの調達の都合によるものか、正面右下に、品番・国名とも印刷されたものと、ラベルを貼りつけたものの両方があるようです。


画像の「西ドイツ消防」のモデルですが、どんな用途の車輛がプロトタイプになっているでしょうか。
「Helft Mencshen retten」(ヘルフト・メンシェンレッテン)というプリントがドア上にあります。残念ながら、この標語で検索しても、そのものズバリの標語を持つ組織や車輛は見つかりませんでした。

「helft」は「helfen」という、「助ける・援助する・支援する」という動詞の命令形、「Menshen」は「人びと」、「retten」は「救助する・助ける・保護する」という動詞です。

「Mencshen retten」は、「人命救助」というよりもう少し広く、人間としての生活の保護、人権の保護というところまで含むように思います。なので、「Serve for protecting people」(人々の保護の助けとなれ!)というような感じ、ロス市警の「To protect and Serve」に近い感じの標語のように思います。(企画にあたっては、実車の写真を参考にしている、という前提です。)

「helfen」や「retten」を「救助」と訳すと、消防隊のドクターカーかと思いますが、資料を見ても、ビートルのドクターカーというのは出て来ないので、これは単に志願消防隊、または常備消防隊の標語で、用途は指令車(ELW)または指揮官車(KdoW)と考えていいように思います。
このモデルの出品者だったオランダ人は「Hilfswagen」(ヒルフスヴァーゲン)だと書いていましたが、ドイツ語でヒルフスヴァーゲンというと、鉄道で故障車輛を牽引に来る救助車・救援車のようなもののことで、救命車輛をヒルフスヴァーゲンとは言わないように思います。(ただし志願消防隊を含めて、消防組織がドクターカーを運用することはあります。)



ダンディ・カドー KT-36 VW-T1消防車(VW-T1 Feuerloeschfahrzeug)



次に同じく可堂玩具(カドー)特注、VW-T1の「トミカダンディ フォルクスワーゲンポリスバン」6点の中に、「西ドイツ消防」があります。DF23-1の「VW デリバリーバン」の金型をベースに、1983年に作られたものです。

DF23-1(トミー通常品)の発売は1980年だったため、ビートルのポリスカーより後発のシリーズになっています。1980年に、同じカドー特注品でVW-T1でのコマーシャルバン6点が作られ、その後のシリーズになります。6点の内容は以下のようになっています。

-西ドイツ THW(KT-31)青 Technishes Hilfswerk(テヒニシェス・ヒルフスヴェルク/ドイツ技術救助団)
-西ドイツ (KT-32)緑/白 POLIZEI
-ポルトガル(KT-33)青 POLICIA
-スウェーデン(KT-34)黒 POLIS
-オランダ(KT-35)POLITIE
-西ドイツ 消防(KT-36)赤/白 FEUERWEHR NOTRUF112

ビートルのシリーズから比べて見ると品番の数字が一部飛んでいますが、これら以外にもVW-T1のコマーシャルバン、シトロエンHトラックのコマーシャルバンなどがあるためです。




1980年という時代ながら、プラスチック部品は屋根上灯、インテリア、ヘッドライト、ホイルなど最小限に押さえられており、ボディ、裏板ともにダイキャストという、「質実剛健」なツクリです。
左右のスライドドアと、リアゲート開閉というアクションを持っています。
重量感や、サイドドア〜リアゲートのアクションの盛り込み方などから言って、GAMAのモデルに近いような印象があります。

荷室の中はシートはなく、フラット床になっています。商品名を「デリバリーバン」としているのですから当然と言えば当然ですが、「バス」との混同は起きないツクリと言えるでしょう。

T1は、1950年のT1a以来、ボディ右側の「観音開き」が基本ですが、1964〜1967年のT1cで、ダンディのモデルのような、スライドドアのものが登場しています。

ダンディのモデルは、ボディ左側、右側の両方にスライドドアがあります。

下の写真は、1962〜67年の、粉末消火剤消防車(Typ 215 Kastenwagen mit Trockenloeschanlage PLA250)で、スライドドアを左側・右側ともに開放している状態に見えます。
つまりTroLF(粉末消火剤搭載車)であれば、左右どちらからでも消火器が使える方が好都合だということになります。
まさにダンディのモデルは、消防仕様にピッタリだった、ということでしょうか。


Typenkompass VW Bus/Transporter 1949-1979 Band 1, Michael Steinke,
Motorbuch Verlag Stuttgart 2003,  p81



ダンディシリーズは1972年にスタートしましたが、当初は国産乗用車で1/45程度、クラウンだと1/49程度の「箱スケール」でした。
1978年にスケールを1/43に統一、ロールスロイス(ファンタムY)、ミニクーパー、ロンドンバスなどを統一スケールで作り、かつての「スポットオン」のような路線を採るのか、という意欲を感じさせました。「イギリスフェア」といったキャンペーンが行われていて、ダンディは「コーギーを目指しているのか」と思ったこともあります。「本格的ミニカーメーカーになるには、1/64サイズのトミカだけでなく、1/43の商品ラインを充実させる」という方向感があったのですね。ビートルとT1も、こうした時期のものです。

しかしやがて、ダンディ・シリーズの新製品は、既存の金型にサーフボードや自転車を載せたり、移動販売車に仕立てたりしたバリエーション・モデルが目立つようになり、1993〜1994年版のカタログを最後としてシリーズを閉じました。

「GAMA」は1971年に「TRIX」に統合されて「トリックス-マンゴールト(TRIX-MANGOLD(GAMA))」になりましたし、シュコーは1976年に、ディンキーは1979年に、メットトイ・コーギーは1983年に破綻しています。ダンディが1/43に統一した1978年という時点では、国際的に見て、既に1/43クラスのダイキャスト・ミニカーの市場は角を曲がった後だったのです。
スポットオンのような、1/43統一スケールの商品ラインを目指すには、少々遅かった、と言えるでしょう。ホットホィールの登場が、ディンキー/コーギー/マッチボックスが中心だったマーケットを変えてしまい、トミカはその後の登場になるわけですから、スポットオンやコーギーを目指すには、もともと市場の潮流の上では時期的な無理があったと言わざるを得ません。

このビートルやVW-T1に代表されるようなダンディのモデルが現在供給されたとしたら、独自性の高さとしての価値はあると思いますが、コレクション・トイとしての主流が1/64サイズになり、1/43サイズは総じて「模型化」している現在のマーケットでは、やはり主流になるとは言えないものでしょう。

これら可堂玩具特注のシリーズは、現在では、日本国内のネットオークションや絶版品サイトなどに出て来る数はあまり多くなく、今回は、ビートル消防をオランダから、VW-T1消防をドイツから入手しています。
つまり、一定量が海外に出ていた、ということをうかがわせます。あるいは日本のコレクター経由で入手されたものが、35年という年月の間、大切にされて来たということであり、これらのモデルに対する海外コレクターの評価は高いと言えると思います。

ただしこれらは、トミーによる通常品ではなく、可堂玩具の企画によるものだ、ということには注意しなければなりません。車種(金型)選定、各国仕様のカラーやプリントの選定などが、それまでの各メーカーのモデルなども踏まえた、それだけ「マニアック」なものだったことが、現在での評価につながっているのだと思います。
いずれにしても34年前に日本で企画されたモデルに、「FEUERWEHR NOTRUF112」のプリントがされていることには、あらためて感動を覚えます。



ソリド #4535 VW-T1消防車(VW-T1 Feuerloeschfahrzeug)




ソリドは、多くの消防車輛をモデル化していて、それだけでもひとつのコレクションを形成でききると思われるほどですが、その中にこのVW-T1があります。
フランクフルト・アム・マインの常備消防隊のプリントを付けています。

1990年頃の製品のようで、ソリドは1980年にマジョレットに買収されているので、その後のモデルということになります。ドクター・エドワード・フォースによる「Solido Toys」の中には見出すことができません。

裏板の車名は「VW COMBI」になっていますが、ドイツ的理解では、これはバン(カステン・ヴァーゲン)で、コンビ(荷物の搬送と乗用の兼用のもの)ではないので、また悩みます…。
ただしドイツ語「KOMBI」ではなく、「COMBI」になっているので、フランスではVW-トランスポールター全体のことを「コンビ」と言うのかもしれない、とも思っています。ブラジルがそうであるようにです。いずれにしても、これも可搬ポンプ搭載車輛でしょう。

前後に圧縮されてデフォルメされており、ホイルが大きすぎ、車体前面のVWエンブレムやヘッドランブ、ウインカーなどを別パーツにしたために目立ち過ぎてしまい、わざわざ「ソリド」がモデル化する必要もなかったかな、と思わせるデキになっています。60年代のクルマへの回帰ブームの中で車種選択されたのでしょうが、標準スケールサイズのダイキャス製量産モデルの転機を感じさせます。

ミラー部品を追加し、オフターディンゲンの志願消防隊(Freiwillige Feuerwehr Ofterdingen)のプリントとし、屋根上を青灯ひとつにしたモデルもあるようです。(2017/2/18)


KOVAP #0631 VW-T2 Mannscafts-Transportfahrzeug



「ニュルンベルクのブリキ救急車」で、CKO・ゲオルク・ケラーマンのレプリカとして救急車に登場してもらった「KOVAP」です。

コヴァップ・ナーホト( KOVAP Nachod)社の歴史は古く、1946年の創業、2016年に70周年を迎えました。「Nachod」の「a」は、「チャールカ」という長母音です。フランス語のアクサンテギュと同じようなアクセント記号が「a」の上に付きます。
「ナーホト」は地名のようで、プラハから西北西100kmほどに位置する都市の名前で、その近くの「Novy Hradek」、少し離れた「Semily」の2箇所に事業所があるようです。

設立当初の社名は「Kovodruzstvo Nachod」、(Zには「ハーチェク」という谷型のアクセント記号が付きます。)
設立の目的は、産業用の部品製造だったようですが、1960年代には、つまり社会主義時代からですが、既にクルマの玩具の製造をしていたようです。

1991年の社会主義体制の崩壊後、「Kovap Nachod」に社名を変更。
ここのところの経緯がわからないのですが、CKO・ゲオルク・ケラーマンのプレス用金型を入手しています。
ただし全ての金型が引き継がれたわけではなく、フォードカプリと一部のヘリコプターの金型は、KOVAPの手には渡らなかった、とされます。
CKO・ゲオルク・ケラーマンが生産を終えているのは1979年であり、Kovapによる復刻生産までは12年のブランクがありますが、この間の経緯が不明なのですね。ゲオルク・ケラーマンの拠点はニュルンベルクでしたので、金型が旧東独エリアに渡っていた、ということもないと思われます。

これは単なる推測ですが、Kovapが、社会主義体制が終わった後で、国外へも販売できる製品の生産を本格的に考えた時、西ドイツで事業を終えていたゲオルク・ケラーマンの金型に着目し、何らかのルートで入手した、ということかと思われます。
現在のKOVAP社のサイトにある「会社紹介」では、「ブリキ製品のできるまで」といった事業・技術紹介がされていて、沿革については全くふれられていませんでした。



これは、VW-T2の消防ですが、車内には3列の座席が並んでおり、「人員輸送車」(Mannscafts-Transportfahrzeug)です。後部にトレーラー牽引用のフックを付けています。

CKO・ゲオルク・ケラーマンの時代に、VW-T1・T2の消防が作られているか、という点ですが、「Metal Toys from Nuremberg」(The Unique Mechanical Toys of the Firm of Georg Kellerman & Co. of Nuremberg, Gerhald G.Walter, Shiffer Publishing 1992)という本の品番順リストによると、民間型および救急車はありますが、消防は発見できません。

CKOの救急車は、側面窓を白いブリキのシートで車内から覆っている形になっているので、KOVAPの消防は、このカーテンを省略し、赤塗装して作ったKOVAPオリジナル、ということになるでしょうか。



KOVAP #0641 VW-Kaefer Kommandowagen



同じくKOVAP製、CKOレプリカの消防ビートルです。
CKO・ゲオルク・ケラーマンには、ビートルのモデル(金型)が3つあり、1957〜1960年の#394、1965〜1968の#394S(VW 1300)、1968〜1979年の#394(VW 1300)で、リア・ウインドがだんだん大きくなります。

KOVAPが復刻しているのは、一番最後の#394です。1979年まで作られているということは、CKO・ゲオルク・ケラーマンの事業の最後まで生産されていたことになります。
既に絶版になっていた旧年式の金型は、当然ながらKOVAPの手には渡らなかった、ということでしょう。

CKOオリジナルでは、乗用車でブルー/メタリックブルー/メタリックライトブルーの3色、黄色のADAC(シュトラーセン・ヴァハト)、黄色のドイツ郵便(ブンデスポスト)、グリーンのポリツァイがあります。
ドイツ郵便とポリスについては、1965〜1968金型と1968〜1979年金型の両方があるようです。
しかし、いずれも消防は作られていないようです。



VW-T2、ビートル、いずれもティンプレートですが、スケール・モデルと言って良い風格を持っていますし、ニュルンベルクのブリキ自動車の空気感をいまに伝えている、と言ったら言い過ぎでしょうか。
ドイツのネットオークションに出ているもので、10〜14ユーロぐらいと廉価な製品ですし、これらの復刻モデルを生産し続けているKOVAP社の見識を賞賛したいと思います。

ネットショップやオークションでは、KOVAP製品は「KOVAP・レプリカ」であることが基本的には明記されていますが、CKO・ゲオルク・ケラーマンのオリジナルを入手しようという方は、KOVAP製品と混同・誤認しないように注意してください。



Schuco Micro Racer #1039F VW-Kaefer Kommandowagen



シュコーのマイクロ・レーサーのVW-ビートル、ただしこれは近年になっての復刻品です。

「マイクロ・レーサー」はシュコーが1954年に立ち上げたシリーズで、それまでのゼンマイ走行と自動ステアリング機構を踏襲していましたが、それ以前のモデルがティンプレート製だったのに対して、初めてダイキャストを使っていました。
その後ほぼ毎年、新製品を追加。1967年にはボディがダイキャストからプラスチックに変更され、1969年に生産を終了しています。

全長はほぼ80mmに統一されていた、と資料に書かれていますが、このビートルはバンパーtoバンパーで102mmあります。ちょうど1/40スケールというところです。

品番は1000番台が与えられていて、シリーズ全体で24種ほどあります。
ノーマルの乗用車ビートルは1046番、ポリスが1039番、この消防が1039Fになります。もちろん「F」は「Feuerwehr(フォイエル・ヴェーア/火と戦う=消防)」の頭文字です。




雰囲気、プロポーション、重量感、メタル製のサイレン、黒でなくグレーのゴムタイヤなど、どれをとっても実にいいモデルです。

ヘッドライト、ウィンカー、モールなどには銀の色差しがありますが、これはオリジナルにも施されているようです。
先端にはゴムの小さな「バンパー」が付いていますが、これはクルマを守るためのものではなく、「両親が大切にしている家具を守るためのもの」だそうです。



1950年代のオリジナルと復刻品の見分け方ですが、復刻品は復刻箱のさらに外側にサック箱が付いており、それにバーコードが印刷されています。50年代にバーコードはありませんね。

そもそもドイツのネットオークションを見ても、50年代のオリジナルというのは滅多に出ているものではなく、ほとんど全てが復刻品です。
1点だけ165ユーロでジャガーEタイプが出ていました。箱が残っている場合、当然ながらかなり傷んでいます。また即決56ユーロで、モールドの凸部にかなりのチップのあるビートル・ポリスも見ましたが、これもオリジナルでしょう。
本体、箱ともにピカピカの状態でオリジナル、ということは考えにくいですから、オリジナルを入手したいという方は注意して見極めていただきたいと思います。



Welly VW-Kaefer Kommandowagen



「ウェリー」(Welly)というメーカー。香港を拠点とするブランドで、1979年の創業。
1/18、1/24、1/32、1/38、1/43、1/60、1/87、という多種におよぶスケールのモデルを作っています。

1980年代のはじめに「スーパー・ホィールズ」というブランドで、シングル・カードの廉価品をアメリカで売っていたのもウェリーです。当初は1/64サイズの、安価なモデルを作っていましたが、近年1/18、1/24といった大スケールのモデルで、クォリティを著しく上げて来ているようです。

このビートルは、全長で120mm、ビートル全長の4140mmから算出すると、1/34.5という数字になります。
後輪にプルバック・モーターを入れているので、モデルカーというより、トイに近い、ファミリーレストランのレジ前で売っているオモチャ、という感じのモデルです。



しかし、これが、「質実剛健」、ピラーを含めて両ドア開閉、細部まで良く出来ていますし、塗装もキレイなので、私としては大変好きなモデルです。何よりも、手に持っていて、小部品がポロポロと取れて行くようなことがないので、安心して愛でていられます。



KOVAPのCKO復刻モデルと比べてみますと、KOVAPには外付けの前後バンパーが無いので、このバンパー部を除いて、ほぼ同じ大きさです。
CKOに代表されていたような、ニュルンベルクのブリキ自動車の伝統が、在ドイツのシュコーやミニチャンプスにではなく、KOVAPやWellyに受け継がれている、という気がしてなりません。

Wellyには「1/34〜1/39」というカテゴリーがあって、この中にVW-T1のダブル・キャビンのピックアップ、同幌付き、T1の7〜8席バス、T2のバス、1/32でT1のバスがあります。



Welly VW-T1 Mannscafts-Transportfahrzeug



同じく「ウェリー」、VW-T1の消防です。以前に「数は要らない。いいものが少しだけあればいい。」で、ウェリー製VW-T1の救急車(グレー/クリーム、クリーム1色のドイツ赤十字、クリーム1色のピックアップ)を掲載していますが、その「グレー/クリーム」タイプの消防車版です。

ブリキ製のCKO-ゲオルク・ケラーマンとほぼ同サイズ、CKOはVW-T1では消防を作っていませんから、なかなか貴重な佇まいを見せることになります。屋根上灯がちょっと背が高くなってしまっていますが、表現としては、なかなか良いですね。




ウェリーのVW-T1の良いところは、左側の観音開きドアが開閉アクションを持っていることです。
ただしドアのパーツ分割と干渉するためか、ボディ右側には「FEUERWEHR」のプリントがありません。
残念ながら、リアゲートは開きません。

インテリアは3列シートになっています。
リアゲートが大型化しているので、1964年〜1967年のT1c、Typ22 Neunsitzer(ノイン・ズィッツァー/9人乗り)、Typ28 Siebensitzer(ズィーベン・ズィッツァー/7人乗り)のいずれかでしょうか。

車型は「コンビ」と同じで、裏板はビス止めなので簡単にはずせますし、シートはプラスチックですから、シートをカットとして床をフラットにし、可搬ポンプを自作して載せる、などという野望を持ちます。



「KOVAP」ののT2とのツーショット。CKOなきあと、こんなモデルが並べられるのは、楽しいものです。
今回掲載したモデルは、高価なものはひとつもありませんが、どれも、それぞれの独自の味わいと存在感を持っていて、私としての満足感は、なかなか高いです。



VW-T2 Feuerwehr



マジョレットのポルシェ・パナメーラのチェコ語版を買ったのが縁で、チェコのコレクターと何回かの交流がありました。
その中で入手したのが、このVW-T2です。
裏板は中国製の表記で、残念ながらメーカーの表示がありません。

チェコ語のタグが付いており、「HM Studio Hracky」(cはハーチェク)のロゴがありますが、メーカーではなく、チェコの大手トイ・ショップ・チェーンのようです。1994年創業、チェコで24店舗を展開するとしています。
http://www.hmstudio.cz/?plugin=Gallery&action=home

オンラインショップを見ると、12台入り展示パッケージなどが並んでおり、ホールセール(卸)も兼ねているようです。



ハイルーフにしているのは、救急車とボディを共用しているためでしょう。
屋根上の青灯が点灯するようになっています。青灯が異常に大きいのは、豆球が入っているためです。
ボディはダイキャスト、ルーフ部と裏板はプラスチックという構成です。運転席部分はインテリアが入っています。

「ファイア・エンジン」(何故か複数形)と「コマンドカー」の両方のプリントがありますが、消火隊の車両だけでなく、救助車、指揮車なども「fire engine」と言うので、間違いではありません。
しかし緊急時電話番号が「119」になっていますが、チェコでは消防「150」、救急「155」です。これはご愛嬌です。
「119」番は、日本、台湾、韓国、インドネシアしかありません。

プリントがチェコ語でないのが残念ですが、余所で見かけたことがないので、珍重しています。
案外、日本国内で売っているかも。


VW-T2 Feuerwehr



プラスチック製、ボデイは蛍光オレンジ、裏板は薄い紫色という、あまりにも怪しいたたずまいのVW-T2。プロポーションやフロント・マスクもかろうじて「T2」と言える程度のものです。

みんなに無視されても仕方のないようなモデルですが、裏板には「MADE IN ITALY scala 1:52」のモールドがあります。ひし形の中にタテに「CC」、ヨコに「GG」を組み合わせたマークは、どういう順番で読んだらいいのか判読に難儀しました。

実はイタリアの「CGGC Grisoni」というメーカー、1970〜80年代にプラスチック製ミニカーとプラキットだけを作っていたようです。



フィアット、アルファロメオ、VW、ミニ、シトロエン、メルセデス、フォードGTなどのプラ製完成品、スケールは1/48クラス、1/72クラス、1/120クラスのトラックなどがあるようです。1/85のビートル、1/90のジープなど、変則的なスケールのものもあります。

デキのほどはこのVW-T2とあまり大差がありません。ただプラの成型色に鮮やかな色が選ばれています。1/32のバイクなどはキット形式でも売られたようです。

70〜80年代にしては、あまりデキがよろしくなく、年少者向けに価格を抑えたものだったのでしょうか。
日本でも昭和30年代のプラキットの創世記に、30円とか、そういう値段で文房具屋さんなどで売られていたラフな乗用車モデルを思い出します。金型一発ヌキなので、抜け勾配が付けられず、ボディのスソがみな垂直に立ちあがっていました。屋根部分を白に塗ろう、などと思い立っても、白塗料をムラなく塗る技術がこちらになく、ヒドいことになったものでした。

このT2、シートは運転席だけなので「バス」ではありません。
屋根上に付けられた青灯が、消防車輛であることを高らかに宣言しています。
おそらくはメーカーの技術が伴っていないだけなのでしょうが、遊び心満点のモデルではあります。



Siku 1343 VW-T3 feuerwehr Geraetewagen



このページの発端は、もともとテクノ製のVW-T1消防車、私の「T1好き」が昂じたものですから、T2どまりぐらいにしておくのがスジなのですが、1台だけ、SikuのT3を掲載しておきましょう。

ミニカーは1982年から1993年の生産。
ただし1982〜1986年はプリントなし、1987〜1991年は「FEUERWEHR」のプリント、1989〜1991年はこれに「NOTRUF 112」が加わり、1992〜1993年は「112」に電話マーク、という変遷がありました。
画像のモデルは、1987〜1991年タイプです。

これらのバリエーションを追うことにやぶさかではないのですが、このモデル、あまり出て来ません。
それも、屋根上の2つのはしごが失われているものが多く、ブリスターに入っているものは、はしごはそろ揃っているかわりに、そこそこの価格になる! という問題があります。

ホイルは「R11」と「B4」があるようですが、どうやら中心のホイル部分の径が若干小さいのが「B4」のようです。画像のモデルはたぶん「R11」でしょう。いずれにしても、あまり良いホイルとは言えず、モデルの品格を損ねてしまっています。



T3のカステンヴァーゲン(窓のないバン・タイプ)で、屋根上のはしごを載せた実車があるだろうか、と思ったところ、ちゃんとありました。

Sikuの商品名になっている「Geraetewagen(ゲレーテヴァーゲン)」は「装備運搬車」の意味ですが、下の写真の車両も「Umweltschutz-Geratewagen (GW)」(ウムヴェルトシュッツ・ゲレーテヴァーゲン)となっています。時期は1982年、場所はデュッセルドルフです。ドアのマーキングも単に「Feuerwehr Duesseldorf」なっているので、常備消防隊でしょう。
Sikuのモデルの発売年とピッタリ一致していますから、Sikuのモデルのプロトタイプかもしれません。

「ウムヴェルトシュッツ」の意味が何か、ということになりますが、直接の意味は「環境保護」「環境保全」です。
しかしドイツ消防での「ウムヴェルトシュッツ」(Umweltschutz bei der Feuerwehr)を調べてみると、明確に生物・化学・放射性物質による汚染対策を意味しているようです。(der Komponenten fuer Einsaetze mit chemischen,biologischen, nuklearen oder radioaktiven Stoffen bei der Feuerwehr Duesseldorf

したがってその搬送車輛が持っているのは、有害物質の検出・計量器材、除染器材、専門の人員、ということになるようです。つまりこれは、「可搬ポンプ搬送車」ではありませんでした。

下の写真にはそこまでの説明はなく、大型のルーフラックを付け、アルミ製のスライド式二連はしごを持っている、とだけ書いてあります。ボディには「ウムヴェルトシュッツ」と大書きしてありますから、ドイツではその意味するところはわかるのでしょう。これも以前にお話しした、冷戦下での消防隊の役割分担、ということと関係していますし、化学工場の火災や災害、テロ対策などにも対応することになるでしょう。このT3は1982年ですが、現在でもドイツの消防隊は、志願消防隊を含めて、「環境保全」のための器材・人員を保持しています。(2017/4/16)


Der Volkswagen im Dienst der Feuerwehr, Udo Paulitz
Beschtermuenz Verlag 1999. p60




     




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